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「ブランド・トランスフォーメーション」 新しいブランドの考え方が、DX成功のカギを握る

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博報堂は2020年10月、企業の事業変革をブランド発想で支援する統合コンサルティングサービス「HAKUHODO X COSULTING」(博報堂クロスコンサルティング)をローンチした。同サービスの推進リーダーでもある宮澤正憲氏(博報堂ブランド・イノベーションデザイン代表)に、背景や目指すことを聞いた。
宮澤正憲(みやざわ・まさのり)
博報堂 ブランド・イノベーションデザイン局 局長
博報堂入社後、多様な業種の企画立案業務に従事。米国ノースウエスタン大学(MBA)卒業後、次世代型コンサルティング組織である「博報堂ブランド・イノベーションデザイン」を立上げ、多彩なビジネス領域において実務コンサルテーションを行う。東京大学教養学部特任教授。

いま「ブランド」が大きく変化している

──これまでにも、ブランドのコンサルティングを多数手がけてこられた宮澤さん。今回、「HAKUHODO X CONSULTING」を立ち上げた背景には、近年の「ブランディング」の概念の変化があるそうですね。

これまでブランディングは製品や商品などの「モノ」ありきでしたが、現在は無形のサービスや事業活動そのものがブランドの核になってきています。その要因は大きく二つ。ひとつは生活者の購買行動の変化、もうひとつがデジタル化です。

近年の調査では、生活者の8割は現状の製品や商品に「不満がない」と答えています。また、新商品が出るとワクワクする、欲しくなるという人の比率も下がっています。それよりも、生活者自身が好きだと感じ、長く使え、使い続けたいと思えるものを求める傾向が強くなっています。特に2011年の東日本大震災以降は「応援消費」などと呼ばれる、被災地支援に貢献したい、被災地の企業を応援したいという思いがブランド選択に影響を与えるようになりました。

つまり、競争の焦点がモノの「機能」からそれ以外のものへと変化したわけです。こうした環境では、これまで通りの新製品で需要を喚起し、広告で購買意欲を刺激する王道のマーケティング手法は通用しにくくなります。さらに今では、世の中にどう貢献しているのかという「社会価値」がより問われる時代になっています。ブランドの世界で「パーパス」に注目が集まっていることや、企業がSDGsへの取り組みを表明しはじめているのも、こうした流れを受けたものです。

もうひとつがデジタル化です。これまでのモノづくりを中心とした製造業では、工場などに代表されるような初期の設備費用が高かった。そのため、製品を大きくつくり直そうとすると、コストのかかる製造ラインを変更しなくてはならなくなります。結果、大量生産をベースに効率よく売るための手段として、コストのかかる製造ラインへの影響を最低限にしながら、モノ以外で付加価値を高める従来型のブランディングがありました。

ところが、デジタル化によってモノ中心のビジネスからサービス中心のビジネスへの転換が進んでいます。多くの企業でDXが注目を浴びている理由のひとつでもあります。サービス業においては、大量生産は必ずしも前提となりません。またデジタルサービスであれば、初期コストも工場ほどはかからず、しかも柔軟に変更が可能です。それにより、ブランドをつくるためには、付加価値をあげるよりも、むしろ本質的なサービスや事業そのものを考え直すことが重要となってきたのです。結果、ブランドはひとつの製品、あるいは事業部や宣伝部だけの話ではなくなり、広告やコミュニケーションだけでつくれるものでもなくなりました。つまり、今やブランディングは企業全体の課題となっているのです。

我々は、こうした新しいブランド概念を基軸としたデジタル変革を「ブランド・トランスフォーメーション」と定義し、その支援を本格的に行うために「HAKUHODO X CONSULTING」を立ち上げました。

次ページ 「グループ横断で「ブランド・トランスフォーメーション」を実現」へ続く