小売のマーケティングにおいてデータ活用が進んだ背景には、ネットの普及に伴う消費者行動の変容が欠かせません。具体的には、ひとつは店舗で購入していたものをネットで購入するようになったこと。そして「消費者=マス広告の受信者」だった時代から、消費者が能動的に情報を取得し、自らも口コミ投稿などを通じて発信側になれる時代に変わったことがあります。消費者の選択権の増大ともいえるこうした流れをいち早く察知した小売事業者が、メーカーとともにマーケティング手法を見直す中で、様々なデータの活用がここ数年で大きく進展しました。
データを集める目的を明確に
「自社が持つデータには価値があるらしい」と感じるマーケティング担当者が増える一方で、活用方法が分からずに困っている方も多くいます。私は日々小売やメーカーのパートナーとしてデータ活用の基盤づくりやコンサルティングに携わっていますが、「データを集めたが、そこから先の活用方法が分からない」という相談を頻繁に受けます。
ひとつ確実にいえるのは、データ活用を行う際は、最初にデータ活用の目的をしっかりと定義し、そこから逆算してデータ基盤の構築や具体活用方法の設計に落とし込んでいくことです。また売上を伸ばすことをゴールと設定しても、具体的に顧客数を増やしたいのか、単価を上げたいのか、使用頻度を伸ばしたいのか、それによってデータ分析のアプローチも変わります。分析スキルも必要ですが、明確な目的設定の上でデータを精査してこそ「何が使えて、何が使えないか」を判別する力もついてきます。
そして、「デジタル」というものを特定の人だけが関わるものだと捉えないこと、担当領域に縛られないことも大切です。分析結果を施策に落とし込む段階では特にいえることですが、営業やマーケティング、IT部門など様々な部門が連携しないと成果が表れない場合もよくあります。部門にかかわらず、デジタルに多少なりとも可能性を感じている人から率先して自分の仕事の領域を広げていくと、第二のスキルを伸ばすことにもつながります。
広告の投資配分に影響
マーケティングを取り巻く環境はさらに大きく変わっていくと考えられます。ID-POSのデータはおそらく今後も基軸であり続けるでしょうが、他のデータと掛け合わせたりメディア接続を行ったりなど、できることは格段に広がっていくでしょう。またデータ活用の大きなメリットの一つである「広告効果の可視化」は、マーケティング投資の判断にも影響を及ぼすと思われます。
広告を見た人と見ていない人の購買率の差、見た人の何%が来店したか、購買推定値はいくらか、買ったのは広告を見てから何日後か、新規顧客と既存顧客のどちらが多かったのか。ユーザー行動の解像度が上がれば上がるほど、本当に効果のある施策を絞り込むことができます。効果測定の精度が高まれば、売場そのもののメディア価値が見直されることもあるでしょう。売場とメディアの線引きがより曖昧なものになり、例えば従来の宣伝部と販売促進部の業務領域の境目がなくなっていくようなことも起きるのではないでしょうか。
フェズ
社長室室長 兼 事業開発部 部長
安藤 尚人 氏
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