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ビッグテックを前提としたマーケターと消費者の新しい関係づくり

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「自分ごと化」してみる

さて、このセッションに参加していた私は、政治家が、このようにビッグテックについて会話をしていることは、とても羨ましいと感じました。そして、政治の重要な仕事、役割のひとつを、ビジネスを〈ハーベスト〉——実らせることだと位置づけている点には、大変共感しました。新しく登場したテクノロジーを政治で抑制するのではなく、「テクノロジー産業を育て、健全に競争させるために、何をするのかが重要だ」という考えは、あまり私の周りでは聞かれなかったことだったからです。

このセッションでわかったことは、登壇者はビッグテックという存在に対して、政治や法整備で遅れている部分を議論し、産業を育成することを考えているということです。

一方、私たちマーケターは、デジタルマーケティングを通じて、(ツールとしての)ビッグテックの理解は進んだのかもしれません。しかし、マーケティングにとってのビッグテックがどんな意味をもたらすかについては理解できているでしょうか。政治や法律と同様に、ビッグテックの登場に対して、従来のマーケティングで遅れている部分を整理し、整備する必要はないのでしょうか。こうした点に私は不足があったことに気づかされました。いまこそ私たちはビッグテックの存在を前提としたデジタル・マーケティングについての本質的な議論と、マーケティングの進化を考える時に来たのかもしれません。

たとえば、ビックテックの力を理解し、信じて、マーケティングの手法を大きく変革する。または、ビッグテックを作り出したテクノロジーを活用して、マーケティングのデジタル化を強力に進める。ビッグテックとの付き合い方には、いくつもの道があるはずです。そのことを議論し、取り組む。そして、速度を持って。このような取り組みが、求められているのではないでしょうか。

データは単に効率よく売るために使うものではない

SXSWのセッションは総じて、あまりはっきりとした結論を出さず、現在の状況、今後の課題についての示唆にとどまります。このセッションもそのひとつでした。しかし本当の学びは、まさにそこにあるのだと思います。将来と同様、結論は私たちがつくるものというのがSXSWの根本的な考えです。これからは、「ビッグテックに対する新しい社会契約の構築」というタイトルにあるように、マーケターも、消費者や生活者と、ビッグテック時代にどのような新しいマーケティング活動をすべきなのか? この議論を引きつぐことこそ、私たちの役割なのでしょう。

ビッグデータ時代に私たちマーケターは、消費者や生活者から、どのようなデータを借りて、従来を超えるサービスや商品をいかに提供するか。これが重要なテーマです。おそらく、いままでと変わらない商品やサービスを単に効率よく売るために、お客さまからデータを、特に個人情報を借りるというのは、ここで議論されている「新しいマーケティング」にはならないと考えます。ビッグテックの存在を前提としたマーケティング、つまり、私たちマーケターと消費者の関係をどのように進化させていくか。これがいま求められていることではないでしょうか。

マーケティングサイエンスラボ
代表取締役
本間 充 氏

ほんま・みつる/1992年大手消費財メーカーに入社。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティングを経験。2015年に、アビームコンサルティング入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。ほかにビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員なども勤め、産業・科学の両発展に貢献している。