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松坂桃李さんが考える「広報」とは? NHKの土曜ドラマ『今ここにある危機とぼくの好感度について』インタビュー

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なぜ危機管理広報に焦点をあてたのか

本作は大学を舞台とする、広報視点から現代社会を鋭く切り取ったブラックコメディ。「大学を社会の縮図として描きたかった」と本作のプロデューサーは語る。しかし、なぜ大学の、特に「危機管理広報」をテーマにしたのか?

本誌の取材に応じてくれたのは、本作『今ここにある危機とぼくの好感度について』の制作統括者であるNHKエンタープライズのエグゼクティブ・プロデューサー・勝田夏子氏と危機管理分野でドラマ監修を務めた社会情報大学院大学教授の白井邦芳氏だ。「プロデューサー」と「監修者」両者の視点から、ドラマの裏側や見どころについて聞いた。

 

言葉が破壊されていく危機感

「今、世の中全体で言葉が軽くなっている印象が起点にはありました」。そう語る勝田氏。「例えば、国や行政、企業にしても“軽い言葉”、聞いた人が『どうせ嘘でしょ』と思ってしまう言葉が流布してしまっている。また、それを変だと思いつつスルーしてしまっている。その“言葉が破壊されていく危機感”が本作の起点となりました」。

そうした危機感を描くのになぜ大学広報だったのか。「大学が世の中からかけ離れたところにある、そう感じている人もいると思いますが、全くそんなことはなくて、例えば企業など他の組織と同様、財政難などにあえいでいたりします。そこで、今回は大学を社会の縮図として描く。さらに、不祥事が発覚した際にまず矢面に立つのが広報担当者であり、言葉を尽くして対応しながら四苦八苦する姿を描くと面白いものになる、と思いました」。

リアリティの追求が肝に

本作、作風はブラックコメディだが、起きる不祥事や会見などにはリアリティを追求した。それを担保した監修者の1人が白井氏だった。「例えば、最終話に記者会見で大学の総長が発言するシーンがありますが、その具体的な台詞内容は私が監修しました。また、会見中にカメラが回っていないところでも実際の会見なら登壇者はこういう答弁をしているはずだ、と指摘し、台本を書き足したりしました」。

ときには、謝罪や記者会見のシーンを入れた方がいい、など抜本的な指摘も。「ひとつの不祥事が偶発的なものなのか、誰かが故意に起こしたものなのかで事後対応は大きく異なります。そこで、『この状況下で記者会見を開かないのはリアリティに欠けるのでは』などと、伝えました」。

 

せめぎ合いが見どころに

両者に本作の見どころを聞いた。勝田氏は、「制作過程で、実際に大学に取材に行ったりもしました。そこで分かったのが、多くの大学が広報を重視し始めている一方で、現場の教員にまではその重要性が浸透していない、ということです」。そうした考察が本作に深みを与えている。

「その状況は、ガバナンスがなっていない、とも取れますが、一方で、一般企業よりも自由や多様性が重んじられている、とも言えます」(勝田氏)。ドラマでは、“ガバナンスが弱い、しかし自由や多様性が尊重されている”という特異な空間で、せめぎ合い、腐心する存在として広報担当者を描いている。

白井氏は、ドラマのクライマックスであり、同氏が監修した最終話の記者会見シーンを挙げる。「ここで総長がとある発言をします。それは今後、主人公が所属する大学が上層部の隠ぺい体質などを改善させられるか否か、明暗が分かれるシーンです。大学というのは、人材の規模感からいって、大手企業というよりはむしろ中小企業に近い。不祥事が起きた後には組織改善をする必要があるが、大企業と異なり、優秀な人材を呼んできてその人に旗振り役を担ってもらう、などができない。限られた人材、限られた設備下で、どう組織改善ができるかが本作の見どころですね」。

ガバナンスを強化しつつ、自由や多様性も尊重し合える……。そんな組織づくりも広報担当者に期待される役回りだ。好感度ばかりを意識し、事なかれ主義の真が、広報という現場でどう変わっていくのか。一視聴者としても気になるところだ。


 

『今ここにある危機とぼくの好感度について』 (全5回)
STORY テレビ局のアナウンサーから名門大学の 広報担当者に転身した神崎真(松坂桃李)。しかし、 赴任直後、続々と不祥事や問題が持ち上がる。有名 教授の研究不正疑惑、学内シンポジウムへの「テロ」 予告、研究施設からの外来生物の流出……。
真は大学執行部の意向を受け、学内外の批判をかわすため に奔走する。

【番組情報】
土曜ドラマ「今ここにある危機とぼくの好感度について」
NHK総合にて放送中
毎週土曜 後9:00~9:49
※5月15日は休止

 

広報会議2021年6月号

 

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