なぜ音声広告は有望視されるのか 若年層でも利用増、市場広がる兆し

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〈耳〉を巡るメディア、広告市場が熱を帯びはじめている。後押しの一端となったのはいわゆるステイホームやリモートワーク。それを裏付けるように、完全ワイヤレスイヤホンの活況が続いており、BCNの調査では2020年12月時点で、完全ワイヤレスイヤホンの販売台数構成比が、過去最高の約26%になったという。顧客との接点として、これから〈耳〉はどんな存在になっていくのか。

〈耳〉のマーケット

音声メディアの利用率が伸びている。けん引役は10歳代~20歳代だ。

ビデオリサーチの對馬友美子氏によると、音楽配信サービス、ラジオコンテンツ配信サービスいずれも2021年4月~6月時点で利用率が約35%に到達した(速報値)。前者は「Spotify(スポティファイ)」や「YouTube Music」「Apple Music」といった代表的なサービスの利用率、後者は「radiko(ラジコ)」などのラジオコンテンツ配信サービスの利用率を調査したもの。対象者は12~69歳で、約1万1000人。

音楽配信サービスの利用率が最も高いのは20歳代で約46%。次いで10歳代と30歳代で約39%となった。一方、ラジオコンテンツ配信サービスのほうは、50歳代がトップで43%、次に40歳代が約40%前後で続く。

「ポイントとして挙げられるのは、ラジオコンテンツのほうでも、20歳代、30歳代が伸びているということ。断続的に外出がしづらい状況に置かれたこと、また、スマートフォンがあれば聞けるというアクセスのしやすさから、ラジオコンテンツへの接触機会が増え、面白さに目覚めたのではないかと思われる」(對馬氏)

音楽配信サービスは10歳代〜20歳代がけん引役となっている(出典:ビデオリサーチ)

また、利用動機の特徴としては、「若い世代は好きなアイドルや芸人など、いわゆる『推し』(応援している)タレントの出演がきっかけで音声コンテンツに接触することが多い」と對馬氏。

「少し上の社会人では、自分の仕事に関連する情報収集や資格取得のための勉強など、ビジネススキルアップを目的として、ポッドキャストなどを活用しているようだ」(對馬氏)

〈耳〉の可処分時間

「可処分時間」という言葉が登場して久しいが、人はいま、メディアに対して、どれだけの時間を割けるのだろうか。

對馬氏によると、2019年時点で、そもそも1日のうち、メディア利用が不可能な時間が延べ13時間37分。メディアに実際に接触していた時間が4時間54分だという。残りの5時間27分は、いわゆる〈ながら〉、何か別のことをしつつも、メディア接触も可能だった時間だ。データは東京50キロメートル圏内の12歳~69歳4800人を対象とした日記式調査によるもの。

新型コロナウイルス感染症拡大前の数値のため、それ以降は変動している可能性がある(出典:ビデオリサーチ)

「新型コロナウイルス感染症が拡大する以前の生活スタイルでの数字なので、ともすれば現在は、不可能時間の一部に、〈ながらメディア接触可能時間〉が入ってきているのではないかと推測される」(對馬氏)

「ステイホームでながら聞き、自宅で音楽を聞きながらリモートワークという方も増えたのではないか」と指摘するのは、I-ne(アイエヌイー)の今井新・取締役ブランディング本部長だ。

「あるいは職場でも、ヘッドホンなりイヤホンをしている風景は、かつてより珍しいものでなくなった。改めて音楽やラジオコンテンツの面白さに気づいた人も多いのではないか」(今井氏)

テレビやネット動画、マンガなど、「目」を向けて楽しむコンテンツは、分野を問わず魅力的なものが多い分、ライバルも多い。また、当然、一定程度視線を固定することになるので、〈ながら〉には向きづらい。潜在的に接触可能な時間が多いのは、むしろ〈耳〉だと言えそうだ。

〈耳〉のコンテクスト

いかにメディア体験を阻害しないか、は広告効果を大きく左右する要素のひとつだ。今回のウェビナーで、セッションをまたいで、異口同音に語られたのが「コンテクスト(文脈)」の重要性だった。

「音声の分野も文脈が豊か。たとえば音楽、ポッドキャスト、オーディオブック。同じ〈耳〉を対象としたコンテンツかもしれないが、個人的には全く異なる存在としてとらえている実感がある」–こう話すのは、スマートニュースのフェローを務める藤村厚夫氏。

「また、ひとつのコンテンツの中でも思索にふけっているかもしれないし、何か感情が動かされているかもしれない。つまり、音声の分野でも、文脈に沿った広告が入らないと、リスナーとしては違和感を差し込まれることになりかねない」(藤村氏)

前述のI-neの今井氏も、「コンテクスト部分は非常に重要」とし、「より聞いている人に自分ごと化してもらえるようなコンテンツ発信をする必要がある」と話す。

運動中なのか、集中しようとしているのか、あるいはリラックスしているのか。パソコンか、スマホか、ゲーム端末か、という機器によってもユーザーの文脈は想定できるが、いずれにせよ、文脈に沿ったターゲティングが欠かせない。

広告やコンテンツの制作者からは、こんな声も挙がった。「広告はそれ自体を聞くことが目的にはならない、という前提の上で、いかにして聞いていただくか、という勝負」と話すのは、キンチョウ(大日本除虫菊)などのラジオCMを手がけるヒッツコーポレーションの谷道忠プロデューサー。

「(音声コンテンツを)誰でも始められる状況になりつつあり、ライバルが増えているなか、プロフェッショナル性がより問われるようになる」(谷氏)

また、TOKYO FMで音声コンテンツの制作を手がける小西正喜氏は、「リスナーの反応を日々感じる立場からすると、楽しまれるコンテンツは、〈驚き〉がある。ただし、それだけではないのは、『話しているのはどんな人なんだろう』というパーソナリティへの関心を持つこと。何の話を聞きたい、だけではなく、誰の話を聞きたいかもポイント」と話す。

動画広告との違いは?

Spotifyの藤井哲尚氏は音声コンテンツについて、「多くの場合、同時に複数の情報、ともすれば複数の企業の広告が一度に目に入る視覚的コンテンツと対照的に、音声コンテンツは基本的に同時にふたつのコンテンツを流せない。広告が流れているときには、その広告しか流せないというのも特徴的」と説明する。

「結果、動画による広告に比べ、広告メッセージの残存、残響効果があり、ブランドへの親近感を作るという面で強みがある」(藤井氏)

Spotifyの藤井哲尚氏

モンデリーズ・ジャパンの音声広告に接触した人では、その前後でブランドへ好意を抱いた人が32%増、関心を抱いた人が49%増、利用(喫食)意向を持った人が24%増という結果となった。また、10歳代~20歳代の広告接触者の26.5%が、今後、「ガムをこれまで以上に噛む」「今は噛んでいないが、今後は噛む」と回答したという。

『Spotify』におけるほかの事例も含めて、接触者中での商品・サービスの利用行動が誘発された割合は平均21%。平均値よりも高い結果となった。

「感情(エモーション)をコンテキストとしたマーケティングでは、音声分野は重要かつ未開拓な領域で有望と見ている」とは、スマートニュース フェローの藤村氏の弁。

「また、今後の調査研究を待たなければならない面もあるが、テレビCMなどとの相互補完関係において(音声メディアは)重要」(藤村氏)

いかに早く自社ならではの活用データを手にするかも、音声広告から大きな成果を得るためには必要だろう。

(この記事は、2021年6月16日開催のウェビナー「デジタル音声広告クリエイティブスクール vol.01 –音声広告の可能性を探る–」の内容をもとに再構成したものです)


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