市場浸透とロイヤルティは対立しない? 顧客を開拓しながらロイヤルティを維持する方法

高利益を実現するECの北の達人コーポレーションにみる「市場浸透」の戦略

ECビジネスの中で非常に高い利益率を誇る企業、北の達人コーポレーションの代表でもありマーケティング責任者でもある木下勝寿氏は、このような問いに対してまったく迷いがないように見えます。木下氏の視点は、まず経営者として、徹底的に利益を確保することに集約されます。その意味で木下氏のマーケティングは、第一に継続的に購入してくれる顧客を作り出すための努力に向いていることも確かです。そのために商品の品質の高さと品質の維持、商品が顧客に正しく使用されるためのカスタマーサービスに心血を注いでいます。

どんな商品も作り手が意図したとおりの使い方がされるとは限りません。特にこれまで北の達人コーポレーションが扱ってきた北海道の物産の食材は、「美味しく食べられる料理の仕方」をしてもらわないとその品質の良さが台無しになってしまう。氏は実際に間違った調理で「カニがまずかった」というクレームがきたことに対して、たとえECにおいてもそれを伝えることが大事であることを理解してもらうためのメモを同封し、「売り込まずに伝えることを目的にした」カスタマーサービスで丁寧に伝えることを実施していま。(『売上最小化 利益最大化の法則』より)。

「なんだ、それはロイヤリルティプログラムそのものじゃないか!」と思うかもしれません。しかし木下氏の慧眼はそのような視点にとどまりません。木下氏はマーケティングで市場浸透の視点も忘れてはいないからです。しかもそこに“上限を設ける”という新しい視点を提供します。それは「利益が最大化されるための顧客の規模」つまり市場の大きさに敏感であるということです。売り上げは大事ですが、売り上げだけを追求せず、顧客の拡大、つまりはその規模にある基準を設けているのです。

次ページ 「収穫逓減の法則とロジャースの普及理論をベースにした市場浸透の上限」へ続く

前のページ 次のページ
1 2 3 4 5
鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)
鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

このコラムを読んだ方におススメのコラム

    タイアップ