「クリエイターの顧客理解」街で見つけた“稀な人”から未来の顧客の物語を創造

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これまでリアルな場を使って実施できていた消費者調査。しかし、コロナ禍のいま、消費者に直接アプローチすることは難しくなっています。消費者の気持ちや行動にも、大きな変化が生まれている現在、このような環境下でいかにして、顧客理解を深めていけばいいのか。企業の新たな試みや、各分野におけるトップランナーの考えを聞きながら、現代の環境における顧客理解の基本から応用までを考えていきます。

月刊『宣伝会議』9月号(7月30日発売)では、「コロナとDX 顧客は大きく変わった!現代における『顧客理解』方法と実践」と題し特集を組みました。ここでは、本誌に掲載した記事を一部公開します。

ソニーデザインコンサルティング
シニアデザイナー
細田育英氏

トヨタ自動車でLEXUSなどの自動車デザインを経験後イギリスに留学。コベントリー大学でマスターを取得し、2004年ソニーに入社。新規ビジネス開発の領域を含め様々な社外のプロジェクトを担当する。宣伝会議のコピーライター養成講座2017春期を修了し「金の鉛筆」9本を受賞。

デザイナーとしてキャリアをスタートした細田育英氏は、2004年にソニーに入社し、ウェアラブルや先端デバイス、人工知能チャットアプリ開発などの新規案件を担当。現在は、ソニーのインハウスデザインで培ってきた能力を外部にも解放すべくスタートした企業、ソニーデザインコンサルティングでソニーグループ外のパートナーや企業のプロダクトのデザインからブランド構築、新規ビジネス開発など幅広い領域でクリエイティブディレクションを行っている。

翌年に発売が決まっているプロダクトから、5年先、10年先に誕生する新規案件まで、様々なスパンのプロジェクトに携わる細田氏は、「顧客理解」には、“ストーリー”を描き、その気分に共感してもらうことが重要だと考える。

しかし、その“ストーリー”を描く方法は、「プロジェクトの時間軸により異なる」と話す。プロジェクトの時間軸が異なるということは、届けたい顧客の時間軸も異なる。現在のお客さまに届けるのか、少し未来のお客さまに届けるのか。それにより、顧客理解の手法を使い分けているという。

細田氏が考える「顧客理解」に迫る。

「顧客理解」の基本は顧客と目線を合わせること

「コロナ禍前は、表参道や渋谷で、『少しお話うかがえますか?』といった調査もよくしていました。会議室であれこれ考えるよりも、外に出れば目の前にお客さまとなりうる人たちがたくさんいる。この考えで、街に出かけていました」と細田氏は話す。

街行く人から細田氏の顧客理解がはじまる。

インタビューを行う際、大切なのは「相手の目線に合わせること」だという。企業がインタビューを実施すると、「こちらの喜ぶ回答をしなくては」との意識からか、本心を聞くことは難しい。そのため相手の目線に合わせた、構えなくてよい環境をつくることがポイントだと話す。

「会社にユーザーを招いてインタビューをすることもありますが、皆さん声のトーンが上がりがち。これは、かしこまってしまっている証拠。面白いのがインタビューの合間に『10分間休憩にします』とお菓子と飲み物を置いたりすると、声のトーンが2段階くらい下がるんです(笑)。その時に話している雑談内容こそ本心で、顧客を知ることにつながると考えています」と細田氏。

新型コロナにより対面のインタビューが行えない状況が続く中、オンライン調査を実施する機会もあったという。その際も同様に、「相手の目線に合わせたコミュニケーション」は意識的に行っていた。

「集計しやすいよう、フォーマット化した調査も行うことはできますが、あえてLINEやメールなど、普段お客さまが使い慣れているものを使用し、文面も堅苦しくないトーンを心がけます」と話す。本心と違う言葉で顧客を理解し、それをもとに企画をすると根本からズレが生じる。このズレを防ぐためにも、目線を合わせることは重要だという。

顧客と共にUXをつくる、短期プロジェクトでの試み

細田氏が携わったプロダクトのひとつに、耳をふさがずに音を楽しめる新感覚のイヤホン「ambie(アンビー)」がある。

8月下旬に発売が予定されている「sound earcuffs(サウンド イヤカフ)TW-01」は、プロダクトのデザインからコピー、Webコミュニケーションまで細田氏が担当した集大成のようなプロジェクトだ。このプロジェクトにおいて細田氏が実施したのが、「顧客と共にUXをつくる」ことであったという。

2021年8月下旬に発売が予定されているambie の新モデル「sound earcuffs TW-01」。

新しいambieのストーリーをつくるため、細田氏が行ったのがアンバサダーとなるような存在を探すことであった。まずは、ambieの使用シーンとして「都会」と「都会から逃げ出した時」を設定。この設定に合うユーザーを職業などから厳選し、漁師、ヨガのインストラクター、製麵所の職人など多種多様な10人を知り合いの伝手も使って探し出し、実際にambieをプレゼントして、思い思いに使用してもらった。

そして、1週間後にインタビューを実施したという。各々の使用エピソードの中には、開発側が想像していなかった使い方も多く、とても新鮮に思えたと細田氏。

細田氏はここで得たユーザーの声を、そのままコピーとして採用しWebサイトなどに活用した。

「製麺所の方の『製麺機の調子を音で感じながら音楽も聴ける』、漁師の方の『音楽を聴きながら遠くの船から話しかけてくる他の漁師にも返事ができる』、ヨガインストラクターの方の『ambieをつけたとき、耳をふさがないから五感が心地いいと感じる』など、本当に多くの声をいただきました。いまを生きる顧客がターゲットであれば、顧客を知るに留まらず、一緒にUXをつくっていくことができる。そう感じた好例でした」と、自身の初めての試みについて述べた。

5年先、10年先の顧客を描く「非接触の脳内接触」

—5年先、10年先のための新規事業の「顧客理解」において細田氏が考えることとは?本記事の続きは月刊『宣伝会議』9月号(7月30日発売)に掲載しています。

月刊『宣伝会議』9月号(7月30日発売)

特集1 「コロナとDX 顧客は大きく変わった!
現代における『顧客理解』方法と実践」

〇確かに便利!
消費者のインサイトを捉えた商品8事例
〇顧客に寄り添いイノベーションを巻き起こす組織
花王 「ファンテック Lab&Biz」
カルビー 「Calbee Future Labo」
ユニリーバ・ジャパン・サービス 「ラボリカ研究所」

〇トップランナーに聞く 私の「顧客理解」アプローチ
ソニーデザインコンサルティング 細田育英
光文社 小松伸司
 

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