メール受信設定のご確認をお願いいたします。

AdverTimes.からのメールを受信できていない場合は、
下記から受信設定の確認方法をご覧いただけます。

×
コラム

世界で活躍する日本人マーケターの仕事

世界で活躍する日本人マーケターの仕事(ウォルト・ディズニー・カンパニー 加藤匡嗣さん)後篇

share

【前回コラム】「世界で活躍する日本人マーケターの仕事(ウォルト・ディズニー・カンパニー 加藤匡嗣さん)前篇」はこちら

海外に出て活躍する日本人マーケターにオンラインでインタビューを実施する本コラム。インタビューを通じてコロナ禍の今、さらにAfterコロナの時代に、ブランドはどう行動していくべきか、そのヒントを探っていきます。6回目の“訪問”先は、アメリカ。ディズニーの米国本社で世界のデザイン統括責任者を務める加藤さんに話を聞きます。広告からマーケティング、デジタル、イノベーション開発、そしてプロダクトデザインとキャリアを積まれてき中でも、一貫した哲学とはなにか、そして世界の第一線で活躍される中でこれからの日本に向けた示唆を伺いました。

加藤匡嗣(かとう ただつぐ)氏
ウォルト・ディズニー・カンパニー
米国本社 デザイン担当バイスプレジデント

大阪府生まれ、米ロサンゼルス在住。新卒で博報堂入社後、TBWA\HAKUHODOへ出向し、TBWA Chiat Dayへ。2011年ナイキに入社。日本のブランドコミュニケーション統括部長、米国本社ランニング担当グローバルマーケティングディレクター、グローバルブランドデジタル本部長等を歴任。2017年ウォルト・ディズニー・カンパニーに入社。米スポーツ専門チャンネルESPNのイノベーション本部長兼シニア・クリエイティブ・ディレクターとして新組織をゼロから立ち上げ、デジタルプロダクト開発や地上波におけるイノベーションを担当。その後クロスブランドデザイン本部長を経て、21年にデザイン担当バイスプレジデントに就任。ディズニー、ESPN、FX、ナショナル ジオグラフィック、スター・ウォーズをはじめとする10を超えるブランドの90を超えるアプリやWebサイトおよび数百のエンタープライズプロダクトのデザイン全般を世界的にリードする。広告やデザイン、デジタルプロダクト、データやテクノロジーなど多岐にわたる分野で受賞多数。2020年には米「Advertising Age」誌の「40 under 40」に選出。日本生まれ、日本育ちでありながら、世界を舞台に活躍するクリエイター。

 

日本とは違う、圧倒的な責任と権限のプレッシャー

— アメリカで長らく活躍されてきた中でアメリカと日本の違いは何だと思いますか?

日本はみなで仕事をする文化ですよね。みなで責任を分けて、みなで成果を上げていくという考えだと思います。一方でアメリカでは、一人の責任がとてつもなく大きいです。失敗した時の責任もすごく大きい。その代わりに権限も大きいです。

前職で非常に賛否両論の意見が出てくることが予想されるメッセージ性の強い広告キャンペーンを企画した際も、数千万円規模のキャンペーンをつくって完パケした段階で、社長に説明をしました。日本では数千万円のキャンペーンをつくった後に上のお伺いをたてることはないと思います。現在のウォルト・ディズニー・カンパニーでは、デザイン担当バイスプレジデントとして90以上のウェブサイトとアプリおよび数百のツールのデザインを統括するため、その権限は本当に大きいです。私の直属の上司が、チーフ・テクノロジー・オフィサー(最高テクノロジー責任者)、つまりCTOになるため、デザインに関することは私がすべて判断をすることになります。一つの決断が約100年の歴史のブランド価値に傷付けてしまうことも、そして価値を高めることも可能となります。

これは、日本とアメリカの文化の違いも背景にあるかもしれません。例えば、アメリカでは子供と一緒にレストランに行くと、7歳の子どもに対してでも店員が親ではなく子供に対して、子供の目を見て「何にされますか?」と一人の大人と接するように聞いてきます。子ども扱いしたり、親に聞いたりしないのです。こうした環境ですので、日々判断することに慣れていくのかもしれません。上に上がれば上がるほど、当たり前ですが、責任領域が拡がり一つひとつの案件を判断することが難しくなっていくため、部下にその権限を渡し、判断させていくことが必要となります。その人たちにも相応の権限があるわけです。

一方で、例えば自分の3階層下の人が判断したことで失敗したら、それは自分の責任になります。だから常に頭を働かさなければなりません。任せながらも、しっかりとフォローアップもしなければなりません。正直、今の立場まで来ると、判断する瞬間に震える時もあるし、判断したあと、間違っていないか考えすぎて眠れないことも多々あります。ただ私は日本での若い時代の多くの失敗から学んだことがあるから、ここで戦えていると思います。

加藤さんが仕事をするオフィスルーム

次ページ 「日本の広告会社時代に学んだ等身大でいることの重要さ」へ続く