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策定よりも浸透が重要。これからの経営のあり方の指標となる「パーパス」とは 佐々木康裕×永井一史×齊藤三希子

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近年、SDGsの採択や気候変動などのさまざまな要因から、社会貢献や地球環境への配慮をしながらビジネスを成長させる新しい経済のあり方が求められている。そんな中、メディアや書籍でたびたび取り上げられているのが「パーパス」だ。

パーパスとは、企業や組織の「社会的存在意義」のこと。なぜ今、パーパスが注目されているか。パーパスを軸とした経営がどのようなものなのか。

パーパスに関する書籍を出版された3人……『パーパス「意義化」する経済とその先』の著者で、Takramのディレクターである佐々木康裕氏、『これからのデザイン経営』の著者で、HAKUHODO DESIGN代表取締役社長の永井一史氏、そして『パーパス・ブランディング ~「何をやるか?」ではなく、「なぜやるか?」から考える』の著者で、エスエムオー代表取締役の齊藤三希子氏が、「パーパス」から始まる新しい経営のあり方について鼎談を行った。

左から佐々木氏、永井氏、齊藤氏。

企業やブランドの土台で、行動の軸となる「パーパス」とは

―まずは、みなさんの「パーパス」との出会いを教えてください

齊藤 私は元々電通にいて、電通総研を経て独立しました。電通総研でも独立してからも、企業から「強いブランドを作るにはどうしたらいいか」とご相談されていろいろお手伝いをするのですが、コンサル期間が終わって手が離れてしまうと崩れてしまって強いブランド、世界で戦えるブランドが作れない。どうしたらいいかを考えていたときに、アメリカにいるメンバーから「それってパーパスがある・なしで大きく変わっているのでは? アメリカの強いブランドは、パーパスがあるよね」と言われたんです。

その時の私は、「“パーパス”って目的って意味だよね?」といったレベル感でしたが、そのメンバーが博識な人で、「彼が言うなら」とみんなで調べてみることになって。そこから私たちのパーパスブランディングの旅が始まりました。

佐々木 僕がパーパスに興味を持ったのは、ここ3年半ほど。僕は世界中のメディアを読み、その中から「これは未来の変化の種なんじゃないか」と感じたものを、「Lobsterr(ロブスター)」というWebサイトでキュレーションして無料で発信しています。それを続ける中で「なんか企業がお金にならないことに、頑張って取り組んでいるぞ」ということに気がついたんです。

例えば「BLACK LIVES MATTER」や「Me Too」、最近だと気候変動などですね。そういったものに莫大な投資とブランディングリソースを注ぎながら、「自分たちの会社は何者か」を社会と接続しながら定義づけしようとしている姿がとても印象的で。それが2019年ごろだと思うのですが、そういった気候変動や人種、ジェンダーなどバラバラに見えたものを横糸でつなぐと、「企業活動がパーパスに駆動されている」とまとめられるのではないかと思ったんです。そこから、パーパスの存在が上がってきました。

永井 僕とパーパスとの出会いを話すと長くなるから飛ばしまして(笑)、パーパスをどのように捉えているかをお話しますね。僕は、2018年に経産省と特許庁から出された「デザイン経営宣言」を策定する「産業競争力とデザインを考える研究会」に、メンバーの一人として参加しまして。そこで、いろいろな方とディープなディスカッションをして、「デザイン経営宣言」を「ブランド構築とイノベーション」と定義しました。これは、ブランド力向上とイノベーション力の向上が、結果的には競争力の向上につながる。それが『デザイン経営』である」という考えです。

―その後、『これからのデザイン経営』という本にまとめられたんですね。

永井 はい、僕なりにもっと深めたいと思って本を書きました。その中で、「デザイン経営」を「企業の社会的存在意義(パーパス)を見定めて、組織文化を構築し、新たな価値を創造し続ける経営手法」と定義しました。まん中にパーパスがあって、その左右に「組織文化」と「価値創造」の輪ができるイメージです。片方の輪は「組織文化」で、これは組織や仕組み、人材などから成っています。そこから創出されるもう一つの輪が「価値創造」。イノベーションや事業、ブランディングなどがここに相当します。そして、この全体がデザイン経営であり、これら全ての土台となる存在価値がパーパスだと考えています。

―齊藤さんと佐々木さんは、パーパスをどのように捉えていますか?
 
齊藤 私たちは、ブランドパーパス……ブランドに限らず組織でも企業でもいいんですが、「パーパス一つで社内の人々を結束させて、競合との差別化を図るもの」としています。内部に向けたブランディングでも外部に向けたものでも、パーパス一つでブランディングできる。そう考えています。

そもそもブランディングとは、「企業価値を高めること」に他ならないと思っています。今、いろんな「もの」や「こと」がある中で、ステークホルダーやお客様はさまざまな選択肢の中から意思決定して選んでいる。その中で、企業やブランドがステークホルダーとつながって、生涯かけがえのない関係を築いていくための一つの大切な手法がブランディングだと考えていて。

ただ、現在はブランディングの手法も変わってきています。理由は、時代の変化が非常に早くなって近い将来の予測が困難だったり、コロナなどにより価値観が変化したり、経営手法が大きく変化したりと市場環境が大きく変わってきているからです。こういったことが、「パーパスブランディング」が注目されるようになった理由でもあると考えています。

佐々木 僕は、企業がパーパスに取り組むのは必然だと思っています。もちろん「自分たちでイノベーションを起こさないと」という内発的な動機もありますが、他に大きな3つのドライバーがあると考えています。

一つは金融の変化。今、基本的にESG経営をしていないと投資を受けられない状況になっているので、「ESG経営をしない」という選択肢がない状況になっています。次に、消費者の価値観が大きく変わってきたこと。これについては子どもからの影響が大きいですね。子どもがSDGs警察化して「お父さんってコートたくさん持っているからSDGsじゃないよね」と言ったりして、親に影響を与え始めているようです。そして、気候変動をはじめとした社会課題。「Allbirds」というアメリカで人気のあるパーパスドリブン企業のCEOは「気候変動への対応をしないと、地球が無くなってしまう。

そうなるとビジネスどころではないからね」と言っていました。このように、この3つのドライバーが企業をパーパス経営に向かわせているのではないかと思っています。

ミッション、ビジョン、バリュー、パーパス。その違いとは

永井 パーパスやミッション、ビジョンなど、定義の仕方は流派によって違うと思うのですが、お二人はどのように考えていますか?

齊藤 私たちは、経営理念には、ミッション、ビジョン、バリュー、パーパスの4つの要素が必要だと思っています。ビジョンは、将来のなりたい姿や成し遂げたい世界など、未来のこと。一方、パーパスは今に注目した「なぜ存在するのか」に対する答えで、存在意義・存在理由。ミッションは、ビジョンとパーパスを実現するために行うべきことで、バリューはそのための行動指針と捉えています。しかし、企業によっては、パーパスとミッションが一緒になっていることもある。会社ごとに馴染むスタイルがあると思うので、表現の仕方はそれぞれ違っていていいのではないかと思っています。

佐々木 僕は大前提として、言葉を定義するのは難しいなと思っています。ただ僕なりの整理でお話しすると、僕は自著の『PURPOSE』の中で、ビジョンを「小さな船」と表現しています。ビジョンは、未来に向けて「こうありたい」という目指す姿や方向性を定めたもので、本の中では、企業やブランドがどうなりたいのかという、「一人称のもの」と定義しました。

一方、パーパスは「大きな船」。社会にどんな良いインパクトを与えられるかを定めたもので、どんな社会を作りたいのかという「第三者視点を包含したもの」と定義しました。どちらもいいところがあると思うんですが、取引先の方や従業員、地域の方、株主も含めたステークホルダー全員と一緒に目標を作っていくようなものを、僕は「パーパス」と呼んでいます。

永井 僕は、関係の束を拡大しているのが「パーパス」だと思うんですよね。三方良し……「売り手良し・買い手良し・世間良し」の「世間」を、ステークホルダーや地球まで広げて考えるというのが「パーパス」で。それが「自分視点」ではなくて「社会視点」だということなのかなと感じています。

プロジェクトや体験などに「パーパス」を宿らせたい

永井 デザインも常に「本質は何か」を問う姿勢だと思っているんですよね。僕自身も常に物事の本質は何かを考えていて、「パーパス」を「デザイン」の枠の中で考えていたりします。佐々木さんもデザインを扱う会社にいらっしゃるので、デザイン視点で「パーパス」をどう捉えているかを聞いてみたいなと思いました。

佐々木 実はデザインとの接続はそこまで考えていなくて。僕の興味・関心の真ん中は、世の中の潮流や消費者の価値観の変化は何で、それに対して企業は何をしなくてはいけないかということ。なので、僕は常に消費者の価値や社会・文化が変わり続ける中で、「今、何をテーマ設定にしたら面白いかな」といったところにパーパスが出てきた感じです。

僕は仕事柄、パーパスをどのように表現するかにとても興味があるんです。今、いろいろな会社が「パーパスを設定しました」とプレスリリースを出してPRしていますが、そのパーパスは“言葉”なんですよね。でも、僕はパーパスが形になったプロダクトやサービスを作りたいと思っています。それはもしかしたら「形のない接客の仕方」や建物かもしれないし、プロダクトに反映されるかもしれません。ただ、言葉だけでなくて体験やプロダクトのディティールにパーパスをどう宿らせるかが僕のテーマになってきています。

齊藤 まさに佐々木さんのおっしゃる通りだなと思っていて、我々も「パーパス」を策定した後は、「象徴的なプロジェクトを一個作ろう」とお伝えしています。プロダクトなのか社内のプロジェクトなのかは分かりませんが、目に見えるってすごく大切なこと。言葉ももちろん重要ですし、こだわってはいますが、やはりシグニチャープロジェクトのような何かが一つあると、そこからの浸透や広がりが違うと思います。

外的要因に左右されやすい日本企業

―なぜ「パーパス」が、今の日本の社会や経営において重要視されているのでしょうか。

佐々木 残念ながら、多くの日本の企業は割と外的影響を受けやすいと思っています。何か大きな変化が起きるときは、「自分たちが」というより外から求められて、または「そのような状況にならざるを得なくなって」というのが現実として多い。冒頭でも触れましたが、社会問題にしても、消費者の価値観と金融側の変化にしても、そういったことに絡めて活動する企業のほうが消費者のシェアが進みやすいということも出てきているのではないかと考えています。

齊藤 まさに外的要因の話はその通りで、弊社では10年ほど前から「パーパス、パーパス」と言っていたんですが、見向きもされませんでした。でも、そんな中で、資産運用会社「ブラック・ロック」の代表であるラリー・フィンク氏が2019年に来日されて、日経新聞にインタビュー記事が大きく掲載されました。それを見て、企業のみなさんが「齊藤さん、そういえばパーパスって言っていたよね。ラリーさんが言っていたんだけど」と……。このようなインパクトのある外的要因がないとなかなか変わるチャンスがないのかなと感じています。

永井 そういった外的要因に加えて、やはり企業も「何か変化しなければ」と思った時に、改めて自分たちの目標や目的などの問い直しが始まっていて、そこが進んでパーパスへの注目が高まっているのではないかと思います。ただ、パーパスに関してはまだまだこれからな気がしています。今すでにパーパスに注目している感度のいい方々は、外部要因だけでなく、新型コロナウイルスの感染拡大などを機に「何のために仕事しているのか」といったことを強烈に感じ、リフレクションの時間もあった。そういった方々から「働く意味をもう一度考えてみようかな」という機運が高まっているのではないかという気がします。


事例から見るパーパス

―パーパスについて注目している企業や事例があれば教えてください。

齊藤 ソニーのパーパス、「クリエイティブとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」ですね。これはやはりソニーにしかできないこと。「感動」で結んでいくのはソニー以外では考えられないかなと思います。このパーパスがすごい点は、ビジョン・ミッション・バリューズ・パーパスの4要素が全部入っているところです。そして、それがパーパスとして成立している。だから、みんな「あのパーパスはよくできている」という評価をするのではないかと思います。

永井 ソニーのパーパスは「コンテンツとテクノロジーの力で価値を創出する」という意味じゃないですか。でも、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」と言い切っていることにワードの強さがある。このように、言葉自体が求心力を持つように定義づけるのも大事ですよね。

印象的だったのは「Snow Peak」の「人生に、野遊びを。」という言葉です。山井梨沙社長に話を伺う機会がありまして、「人生に、野遊びを。」はパーパスではないのですが、社員の方にも浸透しているそうです。今、日本におけるキャンプ人口は7%程度だそうなんですが、「人生に野遊びを」と言った時に、「残りの93%の人たちももしかしたら我々のお客様になるかもしれない」という考え方なんですね。こうした考えのもと、さまざまな事業展開をされているのを見て、なるほどなと思いました。

佐々木 僕が事例として秀逸だなと思うのはNIKEの「Breaking Barriers」というパーパスです。まず、スポーツ選手やアスリートは自分の記録や世界記録をどうブレイクしていくかが大事で、そこに触れている言葉です。

一方で、これはまさに現代における「Breaking Barriers」も象徴しています。いま世の中ではジェンダーや人種差別の問題などによる、さまざまな分断が起きていて、「それをどう解いていこうか」というのがNIKEの最近の活動につながっている。それらがパーパスを起点に行われていたことがわかり、自分の中にスーッと落ちてきてきました。割と抽象的な単語でありながら、NIKEの「ならでは性」が汲み取られているなと思って見ていました。

パーパスは、策定より浸透が難しい

佐々木 パーパスを見つけるためにするべきことは、「自組織の探索」と「社会の探索」、僕はこの2つだと思っています。「社会の探索」はもちろん大事で、今は何が課題なのか、どんなペインに悩まされている人が多いのか、人だけでなく環境も含めて探索することが必要です。ただ、それだけだと「なぜ我々が」というところの紐付けが難しいので、「自分たちがどんな会社でどう生まれたのか」「自分たち従業員がどんな思いを持ってここに就職して働き、どんな未来に何をしようとしているのか」という2つが交差するところこそパーパスなのではないかと思っています。

永井 パーパスは、企業にとってブランディングのコアです。なので、例えば社会性が大事だと言って、抽象化した表現で自分たちのブランドから遠いものになってしまったり、「世界を幸せに」といったような、大きな話だと、機能しなくなってしまう危険もある。その会社「らしさ」を真ん中に置いておかないと、よくわからないものになってしまいます。今までの歴史も踏まえて、現在の「らしさ」に対して捨てるべきことと足すべきことを加えて定義していくのが、パーパスの作り方としては正しいのではないかと考えています。

―パーパスを探す際に、壁にぶつかる企業も多いと思います。

佐々木 パーパスを見つけることはできるけれど、設定するのは大変なことです。設定までのプロセスが大事なので、経営陣がトップダウンで「これがパーパスだから、これで行く」と言ってもだめ。とはいえ、ボトムアップだけもだめで。僕は、じっくり時間をかけて設定しなければならないと思っている派です。数カ月のコンサルティングでできるものではなく、いいもの見つけるまで探し続けるつもりで腰を据えて決めていくものだと考えています。齊藤さんはどうされていますか?

齊藤 私たちは「ディスカバリー」と呼んでいるんですが、自分たちの中を探索していくプロセスになるので、やはり短時間で見つけるのはなかなか難しいと思っています。クライアントの中でリーダーだけでもなく、経営陣と次世代のリーダーを巻き込んでみんなでじっくりと時間をかけて考えていくことが重要です。そうしないと、浸透させようとなった時になかなかうまくいかないですよね。

永井 まさしくおっしゃっている通りで、浸透させるプロセスの方が実は大事なんですよね。浸透させるためには、トップダウンとボトムアップの両方からそうしたプロセスを踏んだ方がいいと思います。ただ、実際の仕事ではかなりいろんなパターンがあって。半年や1年かけて行うプロセスもあれば、エグゼクティブのインタビューだけからパーパスを設定して浸透させていくこともある。ケースバイケースなので、「これをやっておけばいい」とはなかなか言いづらいですね。

佐々木 僕も、いろんなスタイルがあるという意見には大賛成です。「べき論」で言うと、じっくり時間をかける方法もあるとは思います。僕自身が5000人規模の大企業に所属していたことがあるので、会社の方針の浸透の難しさも、社長が交代しただけでこんなに会社って変わるんだということも知っています。だから、これと決めつけずに、その会社に合うスタイルを選ぶことには賛成ですね。

パーパスの浸透に重要なものとは何か

―パーパスを浸透させていく上で重要だと思うことを教えてください

齊藤 浸透には理解と信頼が重要だと思っています。まずは、そのパーパスを文字通り理解することが大事です。その後、信頼する。そのパーパスが正しいと思えるかどうかがすごく重要です。そして、信頼にはもう一つ「自分の会社はこのパーパスを本当に信じているのか」ということもポイントになります。

例えば、上司や社長が「うちのパーパスはこれです!」と見せているのに、陰では「とりあえずきれい事を言っておこうぜ」と言っているのを見ると信頼できませんよね。ですから、弊社ではパーパスを策定させていただいた会社では必ずワークショップを開催します。経営層の方々に年に1〜2回集まって、パーパスの理解と浸透、自分たちの担当するものではどのようにパーパスを使っていくのか、どう判断して行動していくのかを考えていただくようにしているんです。

永井 僕も齊藤さんと同じく理解と信頼と、最後は「自分事化」なのかなと思いました。最終的にパーパスを定義する意味って、自分自身もコミットして、その方向に向かって自分はどのように進むかを具体的にアクションすることだと思うので、そこまできちんとできるかが大事なのかなと。そういったモチベーションを設計するのは、人事評価に入れ込んだり、ミーティングやワークショップで促したり、上司にコーチングしてもらったりといろいろな方法があると思っています。

佐々木 お二人の話に少しだけ付け加えると、僕は「パーパスは行動に宿らせなくてはいけない」と思っているんですよね。よく人に例えるんですが、自分のことを「優しい人です」と言う人を、「あなたは優しいんですね」と思わないじゃないですか。そう思ってもらうには、困っている人を助けるなどの行動で示すしかない。パーパスも同じだと思っています。「経営者が従業員一人ひとりに見せる」のもそうだし、「従業員一人ひとりが社外の方に対してアクションを通じて見せていく」という方法もある。いずれにしても言葉の理解・浸透はとても大事だけど、それを一人ひとりの行動に落とし込んでいくことがとても大事だなと思います。

―これからの経営に求められることはなんだと思いますか?

佐々木 僕は、これからの経営はどんどんエモくなってくるのではないかと思っているんですよね。文化やデザイン的な話も含めて「これは美しいね」「ワクワクするよね」といったことになっていくのではないかと。もちろん、経済的な価値を生み続けるのも大事だと思うんですが、そこの重要性が相対的に減っていって、ヒューマニティ溢れる事業やヒューマニティ溢れる会社と従業員の関係、会社と取引先の関係、会社と株主の関係が生まれてくる経営になるといいなと思っています。

永井 僕自身は「デザイン経営」を推奨しているので、その視点で言わせていただくと、「デザイン経営」とは、経営に創造性と美意識を持ち、一人ひとりが主体的に仕事に関わって「こうしたい」ということをアクションにしてそれが仕事になっていくことだと思うんです。それがもっともっと世の中に浸透していくといいなと願っています。

齊藤 SMOのパーパスは「本物を未来に伝えていく」です。そういった意味で、本物を生み出す企業が増えていくといいなと思っています。「本物ってなんだろう」と思った時に、嘘がなく、信頼できて、自分たちが出している商品やサービスが本当にいいと思って世の中に出している企業が増えていくといいなと思っています。

 

永井一史氏(HAKUHODO DESIGN代表取締役社長)

多摩美術大学美術学部卒業後、博報堂に入社。2003年、デザインによるブランディングの会社HAKUHODO DESIGNを設立。様々な企業・行政の経営改革支援や、事業、商品・サービスのブランディング、VIデザイン、プロジェクトデザインを手掛けている。2015年から東京都「東京ブランド」クリエイティブディレクター、2015年から2017年までグッドデザイン賞審査委員長。経済産業省・特許庁「産業競争力とデザインを考える研究会」委員も務めた。国内外受賞歴多数。著書・共著書に『経営はデザインそのものである』、『博報堂デザインのブランディング』『これからのデザイン経営』など。

佐々木康裕氏(Takramディレクター/ビジネスデザイナー )

ビジネスデザイナー。Takramではデザインとビジネスの知見を組み合わせた領域横断的なアプローチでエクスペリエンス起点のクリエイティブ戦略、事業コンセプト立案を展開。2019年3月、スローメディア「Lobsterr」を共同創業。”ビジョナリーブランディング”を行う。PARADEの取締役、ベンチャーキャピタルMiraiseの投資家メンター、グロービス経営大学院の客員講師(デザイン経営)も務める。著書/共著『パーパス 「意義化」する経済とその先』(NewsPicksパブリッシング)、『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略 』(同)、『いくつもの月曜日』(Lobsterr Publishing)等。

齊藤三希子(エスエムオー 代表取締役)

電通に入社後、電通総研への出向を経て、2005年に齊藤三希子事務所(後にエスエムオー株式会社に社名変更)を設立。「本物を未来に伝えていく。」をパーパスとして掲げ、ものの本質的な価値を見据えたパーパス・ブランディングを日本でいち早く取り入れる。フューチャー・インサイトとクリエイティブを融合させた、強く美しいブランドをつくるためのコンサルティングを行なっている。慶應義塾大学経済学部卒業。著書に『パーパス・ブランディング〜「何をやるか?」ではなく、「なぜやるか」から考える〜』(宣伝会議)。

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明光ネットワークジャパン 山下一仁社長

『パーパス・ブランディング ~
「何をやるか?」ではなく「なぜやるか?」から考える』