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全製品でゼロカーボン達成 台湾発ブランド「O’right」日本でも本格展開

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「O’right(オーライト)」は2002年に創業した台湾発のエシカルコスメのメーカーだ。日本でもグッドデザイン賞で金賞を受賞し、2021年にはヘアケアメーカー b-exと提携。日本市場での本格展開を推進する。創業者のスティーブン・コー氏は「原材料の調達、製造、物流販売、消費者の使用、リサイクルと循環させる経済の仕組みづくりこそクリエイティブな活動である」と話す(本記事は月刊ブレーン4月号の特集「脱炭素社会へ 企業価値を提示するクリエイターの役割」に掲載されたものです)。

ブランドが守るべきは「海」「水」

「グリーン」「サステナブル」「イノベーション」という3つのコアバリューを軸に、165種のヘアケア・ホームケア製品を扱うO’right(オーライト)。2021年12月には全製品でゼロカーボンを達成するなど、自然由来の原材料や環境に配慮した素材を使ったパッケージの製品で知られてきた。台湾では7000軒の美容室やサロンで利用されている。

再利用したPCR(Post Consumer Recycle)プラスチックを用いたO’rightの製品。
(左から)「グリーンティ シャンプー」「バンブー モイスチャライジング シャンプー」「ティーツリー スキャルプ シャンプー」「ゴールデンローズ カラーケア シャンプー」。

CEOのスティーブン・コー(葛望平)氏。

42の国・地域で販売しており、グローバルでの注目度も高い。創業者でCEOのスティーブン・コー(葛望平)氏はCOP25(2019年)とCOP26(2021年)で講演したほか、米国農務省のバイオベース認証を60商品、3原料で取得するなど国際的な認証・評価も多数取得している。

日本では2020年から百貨店やECでの販売を開始した。近年は製品開発やサプライチェーン変革の取り組みが新しいデザインのあり方として評価され、グッドデザイン賞の金賞を2年連続で受賞している。

2020年度グッドデザイン賞で金賞を受賞した歯磨き粉「O’right Toothpaste No. Zero」。石油化学成分を一切含まず、生産から販売に至るまで「ゼロカーボン・環境影響ゼロ」というブランドコンセプト。

 
さらに2021年には、日本のヘアケアメーカーのb-ex(ビーエックス)と資本業務提携。日本市場での販売のほか、サステナブルへの意識を高める啓蒙活動などを進めていく予定だ。

b-exの福井敏浩社長によると、O’rightとの出会いは2019年末ごろ。「新型コロナが広がる前に台湾の社屋や工場も視察し、グリーン革命に取り組む本気度に感銘を受けました。2015年から当社は佐藤可士和さんとブランディングを進めてきましたが、スティーブンさんのブランドに対する細部へのこだわりは可士和さんに通ずるものがある。当社は国内約5万軒の美容室などと取引があり、業界全体でグリーン革命へ本格的に取り組んでいけたらと考えています」。

スティーブン氏は自身がアレルギー体質で、若いころから環境保護の問題に取り組んでいた。1997年の京都議定書の内容に感銘を受け起業、2002年と早くから自然由来の素材を使った製品開発に取り組んできた。

「台湾でもアレルギーに悩む人は多い。化学原料が原因で、解決できる方法はないかと考えていたんです。そこで最初に着目したのは、美容室で働く人たち。四六時中、刺激の強いヘアケア製品に触れているので常に手が荒れている。そこで自然由来のO’right製品を使うと、肌荒れが改善していった。喜んだ美容師の皆さんから『ホームケア製品としても売るべき』という声が増え、一般にも流通するように。我々はプロモーションに費用をかけず、製品開発に資源を集中させました。その結果、美容室での接客の中で自然と開発のストーリーが広がっていきました」(スティーブン氏)。

その中で、O’rightの自然由来の製品によって守るべき対象として「海」「水」など自然環境全体にまで目を向けていく。それは「製品の原材料の選定、パッケージのデザインや使う素材の調達、循環型の製造・廃棄の工程など、サプライチェーンの全てに至るまで改革を起こすクリエイティブな活動であるべき」という考えに基づくものだ。


コーヒーの殻を使ったパッケージも

たとえばパッケージでは、ボトルなどに使用するプラスチック自体を完全にゼロにすることは難しい。そこで環境とデザインのバランスを考慮し、コーヒーの殻などの自然由来の素材や、リサイクルされた材料を使ったPCR(Post Consumer Recycle)プラスチックに切り替えた。

「コーヒーの殻を使ったパッケージは色も自然な茶色で、見た目でそれとわかる仕様です。ヘアケア製品のシリーズでは、天然のカフェインエキスを抽出して製品の中身の原料にもなっています」(スティーブン氏)。

(左から)コーヒーの殻をパッケージに使用した「カフェイン シャンプー」「同 ツリーインザボトル」。

製造工程では、2012年に桃園市内に製造工場を含む本社屋の「グリーンビル」を建設した。排水ゼロを実現する循環システムのほか、屋上には太陽光パネルと風力発電機などを設置。2025年までに100%再生可能エネルギーで全製品の製造が可能となるよう目標を設定した。

台湾・桃園市内にある本社屋「グリーンビル」。動植物と共存する環境で、屋上には風力発電機やソーラーパネルなども。

取引先である美容室への啓蒙活動はもちろん、従業員への教育や社内コミュニケーションも重視する。組織全体の環境意識を高める人材育成への投資が必要と考え、社内にはサステナブルな行動を促す伝道者となる「Sustainability professional」と呼ばれる社員がいる。

「企業経営において、社会的な活動に対する投資収益率(SROI/Social Return On Investment)が重要とされていますが、私たちが重視するのはカーボンオフセットへ向けた行動に対する投資収益率(CROI/Carbon Return On Investment)なのです」とスティーブン氏は説明する。

スティーブン氏は2021年11月にイギリスで開催された「COP26」の場でも、改めて「石油使用をゼロに、自然由来の素材を使おう」「完全な循環型経済に」と提言している。

「すべてのサプライヤーとともに、この2つの目標に向かって努力していけたら」とスティーブン氏。日本でも3月から、b-exが美容室・サロン向けにサステナビリティに対する意識向上のためのプロジェクトを開始するなど“グリーン革命”の波が台湾発で広がりつつある。