フィーは、人が“考える”ことに対する対価
広告主から広告会社に支払われる広告の取引金額の中で広告会社の取り分は、コミッション(手数料)制とフィー(作業報酬)制のいずれかで算出される。日本の広告会社の多くは海外と違い、メディアプランニングとバイイング、クリエイティブのプランニング・制作をすべて請け負うことから、長らくグロス金額を基本にした報酬システム、あるいはコミッション制が採用されていた。
コミッション制は、実費(媒体費や制作費など)に対して10%、15%といった料率を「管理費」や「手数料」という名目で上乗せする制度。よって、予算規模が大きければ大きいほど広告会社の粗利も拡大する。たとえば、1 億円のメディア予算に対する手数料が10% の場合、広告会社の粗利は1000 万円となるが、10 億円の予算では1 億円になる。予算規模が異なる理由の多くは、扱う媒体が異なることによる。
近年、日本でもクリエイティブエージェンシーを中心に、専門領域に特化した制作会社などでフィー制を採用するところが出てきている。
フィー制は、クライアントが広告会社に依頼したプロジェクトや専門的な業務に対してかかった費用を基本としたもの。そのプロジェクトに関わった人件費(1時間あたりの料金×かかった工数とその時間)に社内間接経費(オーバーヘッド)、そして利益を加えて算出される。「これだけの責任や経験のある人が、これだけの作業時間をかけているので、この金額になる」という積み上げ式の計算方法だ。そのため、海外のエージェンシーの場合、基本的にスタッフ一人ひとりに、経験年数や職能に応じた単価が付いている。それはクリエイティブのみならず、エージェンシーのトップ、営業、また関連するバックオフィスのスタッフなどにも定められており、その人たちが稼働した時間が算出される。各人に単価がついているということは、エージェンシーにおいては、それぞれのポジションにおける役割が明確になっているということでもある。「戦略、リサーチ、クリエイティブ…、僕らが広告主に納品するものは、すべて人が考えて、人の手を動かしているもの。フィーは、人が“考える”ことに対する対価ととらえると、わかりやすいと思います」と、外資系エージェンシーのマネージングディレクターは話す。
フィー制は、広告にかかる投資に基づいて請求金額を算出するため、広告会社には予算規模に関係なく最低限確保すべき粗利が保障されるメリットがある。また、広告主にとってはコストが明確になり、透明性のある支払いとなる。また、自分たちの仕事にどういうレベルのどういうスタッフが関わっているのか、スタッフプランをきちんと把握できる。
続きは『広告制作料金基準表 アド・メニュー’22-’23』にて。
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