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これから挑戦すべき、テレビCMとデジタルメディアの評価方法とは

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マーケティングと一言で言ってもさまざまな施策がある。デジタルメディアを中心とした“獲得型”施策や、テレビ CMを使った大規模な認知施策。全てを横断した正しい施策評価ができているか、不安に感じることはないだろうか。テレビCMやデジタル広告施策の効果は可視化できて当たり前の時代。今日の、そして未来の顧客を獲得するため、挑戦すべき取り組みを紹介する(本稿は2022年3月開催のカンファレンス『アドタイデイズ2022春』のアイレップの講演を基に再構成したものです)。

アイレップ ストラテジックプランニングDiv.マネージャー 青山友樹氏

2014年アイレップに入社。ストラテジックプランニング Div. マネージャーとして、クライアント企業の戦略立案、デジマスを横断したコミュニケーションやメディアプランニングと、その手法の開発を担当。広告運用業務からキャリアをスタートし、国内大手クライアント企業を担当。ダイレクト案件やブランド案件のプランニングや効果検証をおこなう。2020年4月より現職。

 

アイレップ ストラテジックプランニングDiv. ストラテジックプランナー 浅田実季氏

2017年アイレップに入社。メディア担当として媒体社へ常駐した経験もあり、Webメディアのプロダクト理解に長けている。2018年より広告運用コンサルとして大手予約サイトの獲得メディアを運用。2020年から博報堂DYメディアパートナーズへの出向を経て、ストラテジックプランナーとしてデジタル×マスの統合プランニングおよびメディアプランニング領域に従事。

 

“認知=テレビCM”、“獲得=検索広告”とは限らない

 

「認知ならテレビCM、申し込みなどの獲得目的なら検索連動型広告、こうした分類は誤り」――アイレップの浅田実季氏はこう話す。たとえば、こんな反例がある。「確定申告」だ。1年間に得た所得にかかる所得税などの税金の総額を計算し、納税するために申告する制度だ。

グーグルが提供している検索量の動向を簡易的にみるツールで「確定申告」を調べると、ほぼ必ず12月末から検索が増え始め、2月末〜3月初めにかけてピークに達する。浅田氏によると「1〜2カ月前から準備のために調べ始めて、締め切り目前で各社の申告用ツールを利用する人が多い」。

「このトレンドの周期に合わせて、申告用ツールのテレビCMを流したところ、検索連動型広告にテレビCMにかかる予算を上乗せした場合に得られるであろう成果の6.5倍の獲得ができたケースがある。つまり、獲得に向くと思われている検索広告よりも、テレビCMのほうが大きな獲得効果があったということ」(浅田氏)

 
反対に、アイレップがこれまでに実施してきた事例のなかには、認知向上施策で、テレビCM単体、バナー広告単体とバナー広告およびYouTube広告の認知効果が同等だったこともあった。予算を考慮に入れれば、広告効果としては後者の組み合わせのほうが効率がよい。

 
「ポイントとしては、認知や獲得といった『目的』と『メディア』をある種セットにしてプランニングしてしまうことも少なくないが、実際には、商品購入などゴールに至るまでのユーザー動線やタイミングを把握して、最適なメディアを選んでいくことが重要」(浅田氏)

「マーケティング活動の効果は、大きくふたつに分かれる」と指摘するのは、同じくアイレップの青山友樹氏だ。「ひとつは、『未来の顧客を作ること』。もうひとつは『今日の顧客を作ること』。それぞれの効果を正しく測定して、最大化することが重要」と話す。

たとえば、耐久消費財のような検討期間が比較的長いもの、あるいは、引っ越しや保険への加入といった、就職や結婚、出産などのライフイベントが引き金になるものなどは、テレビCMなどの広告によって消費行動がすぐに発生するものではない。むしろ、必要になった人が、そのタイミングでWeb検索などをするので、見かけ上、検索連動型広告の、いわば“獲得効率”が良くなるため、「テレビCMは獲得には効かない」「検索広告は獲得に効く」といったイメージができあがる。

このとき、商品・サービス名を知っていて、指名検索をしているのか、あるいは想起するブランドがないので、カテゴリー検索など、より抽象的な情報探索なのか、でも効果は異なる。

「どれくらい認知度があると顧客化・売上といった最終的な目標に貢献するのか、というのは後に譲るが、基本的なこととしては、自社の商品やサービスを購入、利用するに至るまでのユーザーの動線を把握することが大前提。認知度を高めるための広告を打っていても、それを受け止めるための検索エンジン最適化(SEO)や、検索広告といった施策がないこともある。逆に言えば、動線がわかっていれば、テレビCMも獲得に使える、ということ」(浅田氏)

 

 

 

【今日の顧客を作る】純増効果×成果ベースの無駄ないプランニング×複数施策の同一指標評価でPDCAのスピードを加速

アイレップで実施している効果検証のひとつが、「純増効果」を見るというものだ。広告施策自体がどれだけ成果に寄与したのか、過去実績データをもとに予測した疑似的な成果と比較したり、施策内容をエリアごとに変えたりして、実施の有無と成果を比較する。つまり、広告施策がなければ増加しなかった売上を可視化するということだ。

 
「たとえば関東エリアではテレビCMのみ、関西エリアではテレビCMにWeb広告を加えて実施というように、それぞれどれぐらいの純増効果があったかを見る。それをコストで割ればコストあたりの純増獲得効率(純増CPA)がわかり、媒体を横断した比較が可能になる」(浅田氏)

 
また、アイレップ独自の分析ツールである「x2(DOUBLE SCORE)」では、望む成果から逆算してテレビCMの出稿量を割り出したり、閾値となる接触頻度(フリーケンシー)を判断したりして、無駄なく広告出稿ができるという。設定したゴールに最適な番組なども抽出することも可能だ。

「リアルタイムで分析するのはもちろん、複数の施策を同一の指標で評価することがPDCAのスピードを早めるためのカギ」(浅田氏)

 

 

 
アイレップの独自指標には「View Through Navigational Query(ビュースルーナビゲーショナルクエリ)」というものもある。オンライン広告などを見たものの、そのタイミングでは広告のクリックなどの行動に出ず、一定時間後に、別の経路でWebサイトを訪問するといった「ビュースルーコンバージョン」の指名検索版。広告を見た人が一定時間後にそのブランド名で指名検索し、そこから検索広告経由でサイト流入した数を見るというものだ。広告で見聞きしたことの間接的効果を推計できる。

 
「短期的には、直接・間接効果含め、広告投資があって生まれたコンバージョンを見て、施策全体の評価をすることが、適切なマーケティング投資には欠かせない」(浅田氏)

【未来の顧客を作る】認知・好意度はどれくらい購買に貢献するのか

では、中長期的にはどうするか。アイレップの構想は、認知度や意識調査などのパネルデータと、購買やWebサイト訪問といった実際の行動データ(アクチュアルデータ)とのかけ合わせだ。

 
「たとえば、ブランドを純粋想起できる人のほうが、純粋想起のない人に比べて、Webサイトを訪れる人数が、1.93倍多いというデータがある。これを援用すると、認知している人、好意度が高い人のうち、どれくらいが購入に至っているか、あるいは再購入に至っているか、購入あたりの単価はいくらなのかを見ることで、売上の予測が立てられると考えている。そこから逆算して中長期的に重要な態度変容要素を把握することで、将来の売り上げなどを念頭におきながら、好意度を高めるためのクリエイティブやマーケティング施策の立案につなげていくことが、当社の挑戦」(浅田氏)

施策前後でどの程度ユーザーが動いたかを可視化できるだけでなく、顧客フェーズ別に売り上げへの転換率、売上単価を掛け合わせることで、例えば「好意をもってくれた増分人数×購入頻度×単価=将来の見込み売上」といった具合で売上予測も算出可能。そこを根拠にすることで、売上など「実」の部分も見据えながら、「好意」を持ってもらうためのクリエイティブ・コミュニケーション開発などに取り組むことができる。※上図は、西口一希氏の著書『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(翔泳社)の「9セグマップ」をもとに作成

今日と未来の顧客を作る――冒頭でこう述べた青山氏は、「まずその第一歩として正しい効果計測をしていくことが不可欠だ。正しい効果計測が達成できたその上にこそ、より良いクリエイティブの制作やメディアプランニングの研究が成立する」と指摘する。

正しい効果測定こそが、〈今日の顧客と未来の顧客〉の双方を生み出すための正しい道なのだ。

 
 



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