コラム

澤本・権八のすぐに終わりますから。アドタイ出張所

選手への質問を考える時間は、わずか数秒!瞬発力が求められる、アナウンサーの過酷な現場とは?(ゲスト:宮司愛海アナウンサー)【後編】

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一番熱いのは、「どの質問をするか?」

中村:宮司アナは、どれぐらい競技や選手のバックグラウンドについて予習するんですか?

宮司:予習はしますね~。誰がどのタイミングで来るのか分からないんですよ。いつどの選手に話を聞けるのかが分からないので、どの競技でも困らないぐらいの知識をつけるというのはありますね。

中村:じゃあ、「どの質問をするか」というところが、一番熱い部分だと。

宮司:そうですね!

中村:実際、テレビ局側のチームみんなで考えるというのもあるんだろうけど、どんな内容をどのぐらい質問しようというのは決まっているもんなんですか?インタビューは、結構緊張するタイミングなんじゃないかな、と思うんです。

宮司:そうですね~。競技直後となると、より自分にかかる責任が大きくなりますね。基本的には、競技の担当ディレクターが骨子をつくってくれて、こういうことを聞いて、VTRでこんな話をしたいのでこの話を引き出してほしい、という戦略会議をするんです。

とはいえ、想定した答えが返ってくるとは限らない。こう来たらこう来るだろうな、というある程度の予想は持ちつつ、真逆が来た場合にはこういう方から攻めたほうがいいからこの情報はあったほうがいいな……。と、頭の中の設計図を基に、より立体的にする作業をインタビューまでの間にします。これは時間があれば、ですけどね。

澤本:へえ~。

宮司:時間がなくて、すぐに聞かなきゃいけない場合は、自分で考えます。試合内容にサクッと触れる質問と、選手の心情に迫るような質問と、次に試合があるのならそこへのコメントを……という、なんとなくのセオリーはあるんですけどね。そのセオリーに乗っかりながらも、その選手にしか言えないようなことを引き出すにはどうしたらいいだろう?って「うわ~!」っと短い時間の中で考えていますね。

澤本:きっとそうだよね。でも、そういうことで頭を使いまくる数週間って、オリンピック以外だと日本であるんですか?

宮司:ないですね。

中村:はははは!

宮司:いや、あの……!!

一同:はははははは!

宮司:それが3週間毎日やってくるという意味で(笑)頭は使っていますよ!(笑)

中村:ホント、この前の『潜水艦カッペリーニ号の冒険』の時のホイチョイの馬場さんと宮司さんの話は、全くよどみなく次の言葉を引き出していましたからね。こういうのはどうやって鍛錬しているのかな~って、ボケーッと聞いていたんですけど(笑)

宮司:いやぁ〜。でも、それが良いとも限らないと思うんですよね。

中村:それは、早く返すっていうことが?

宮司:はい。相手に合わせられるのが一番いいんですけど、どうしても「ちゃんとやらなきゃ」というのが先に立っちゃうタイプなので、そうなってしまいますね。

中村:いやいや、でも生放送をやっているとそうなりますよね。

関ジャニ・村上も心配…「毎日食べてもやせ続ける」現場?!

澤本:でも、あれだけ毎日頭を使い続けて1週間、2週間とやっていると、痩せませんか?

宮司:痩せました~!北京の期間で2キロぐらい。

澤本:痩せますよね、何かを考えていると。

宮司:そうなんですよ。東京オリンピックの時も、3キロぐらい痩せちゃいましたね。東京オリンピックは自分がスポーツ番組を担当するようになった時からずーっと目標にしてきたものなので、自分の中のハードルも上がりまくっちゃって……。

もちろん、そこのメインキャスターをつとめるっていうプレッシャーもありましたけど、「そこをずっと目標にやってきたんだ~!」ってグーッと入り込みすぎちゃってました。ちょっとストイックになりすぎちゃったところはありますね。

澤本:それだけ頭を使っていると痩せるんだろうな、と思って、ちょっと聞いてみました。

宮司:実際、痩せました。会う人ごとに「痩せたね~!」って言われて。東京オリンピック期間中は、一緒にキャスターを務めた関ジャニ∞の村上信五さんに「宮ちゃん、痩せてるから食べぇ~!」って(笑)。

澤本中村:ははははは。

宮司:毎日、美味しいスイーツの差し入れをしていただいていたんですが、「すいません~!」と。でも、食べても痩せちゃうんですよ。

澤本:大変だったんだな。

中村:いや〜、まさに正念場ですよね。広告業界のオリンピックには、「カンヌ国際映画祭」というのがあって。若いクリエイターが、まさにフジテレビの『料理の鉄人』(フジテレビ系列)みたいにその場でお題を出されて、「24時間で広告をつくれ」というのがあるんですよ。

宮司:はぁ~。

中村:WEB野郎中村は「デジタル部門」を若い時にやりました。やっぱり、その時は飯ものどを通らなかったですね。ある程度は寝ないともたないんだけど、もう目がギンギンになって眠れないし、ずーっとアイデアも決まらないし……。

結局、朝方になってチュンチュン、と。で、他の国の代表とかを見ると「コイツら、ぐっすり寝てやがんな〜」みたいな顔をしているんですよ。

宮司:追い詰められますね(笑)!焦る~。

中村:だから、そういう人生の中で何度もないような正念場となると、人ってやっぱり痩せるんだろうな、と思いましたけどね。

宮司:単なる食事とかカロリーの問題じゃないんですよね。なんか、魂の重量が減っているような感じがしますもんね。ひゅーって(笑)

中村:ちなみに「これはすごい上手かった」「ここは失敗した!」みたいなことってあるんですか?

宮司:いやいや、失敗は毎回ありますよ~。あの時、あれぐらい尺が浮いてたから、あの情報をもう一言入れられたよな、とか。なんであの時噛んじゃったんだろう?あ〜、いらないこと考えてたからだな~、とか。割と後ろ向きに反省してばっかりでしたね。毎回そうなんですけど……。毎日そうだし、そういう性格だし。でも、割と引きずらないですね。

澤本:あ、引きずらないんですか?

宮司:引きずらなくなりました。もう、ラチがあかないと思って。失敗なんて毎日するし、調子が悪い日は調子が悪いし……。でも、調子が悪い中で最低限のパフォーマンスを一定して出し続けるにはどうしたら良いのか?と。そのためには、自分の心の持ち方を自分でコントロールしないといけないって、スポーツを担当するようになってからは特に思うようになりましたね。

アナウンサーとアスリートは似ている?

澤本:そもそも、アナウンサーの人たちってアスリートっぽいよね。

中村:そうですよね。

宮司:私は特にそうかもしれないですね。私はスポーツ経験が全然なくて、何かひとつのことを突き詰めたことが今まであまりなかったんですよ。だけど、スポーツ担当になってアスリートの方々の話を聞くうちに、自分もちょっとそういう性格に寄ってきた部分がありますね。

何かを突き詰めて、「自分なりに成し遂げなきゃいけない」という焦りが、常にある。それで「どんどん自分を磨いていく」という、ちょっとアスリートっぽい感覚がこの4年で増した気がしますね。

中村:それは、知らないうちに影響を受けているのかな。それとも、意識的に「こんなに自分を追い詰めて、計算しながらやっている人たちがいるんだから、 私もやらなきゃ!」みたいになってきたの?

宮司:話を聞くにあたって、彼らと同じレベルには到底なれないけれど、せめて「誠実なんだな」と思ってもらえるようにしたいと思っています。先ほども言ったように、ひとつのことに打ち込んだ経験がなかったので、アスリートの方々に対してコンプレックスみたいなものがあったんですね。

わたしは人生の中で、ずーっと積み上げてきたものが何もないのかも、と。昔からすごく器用貧乏なところがあるタイプだったので、スポーツ担当になってからは「このままじゃいけない!」と思ったところもありましたね。

澤本:うんうん。あとは自分で走っていたじゃないですか?あれは、そうしたことの一環なのかな?と思ったんですよ。

宮司:あ!そうなんですよ。

中村:あぁ~、ハーフマラソンに挑戦されているんですよね?

宮司:はい。実はもう走り終えたんです。たしかに、走ることを自分に重ね合わせていたところはあります。実験的なこと自体はすごく好きなんですけど、走るのが本当に大嫌いなんですよ。でも、何かに向かってずーっと走り続けて達成する。そういう快感や達成感を味わってみたい!と、ずっと思っていたので。

マラソンというのは、そこが一番分かりやすいんですよね。スタートしたら、自分が頑張ればゴールにたどり着けるし、頑張れなければギブアップだし……。そこを重ね合わせてマラソンを走ってみたい、と思っていたのはありましたね。

澤本:やってみてどうでした?最初は全然走れなかったんでしょ?

宮司:全然走れませんでした。一回、「本当に走りたくないかも」みたいな時期が年末に来ちゃって(笑)一回走らなくなったら、久々に走るとやっぱり辛い。「サボるとダメだよな~。でも、練習しないと本番で苦しいのは自分だし」みたいな。

走りたくないけど走らなきゃいけないって、だんだん「なんで走っているんだろう?」みたいな気持ちになってきたんですけどね。でも、練習して実際にハーフマラソンを走ってみたら、意外にも「あれ?!」って感じだったんですよ。

中村:え?あっ、そうなの?!

宮司:もっと「うわぁ~!!」っていう感じになるのかな?と思っていたんですけど。まぁ、やっぱりハーフですし。

澤本:それは「私はまだまだ、こんなもんじゃない!」という?(笑)

中村:これは宣言なのかな?(笑)足がガクガクにはならなかったんですか?

宮司:意外に、ならなかったんですよ。翌日もそんなに筋肉痛はこなかったです。「え?これって、まだできたのかなあ」って思いました。でも、もう走りたくはないし、みたいな(笑)。自分で予想していたよりも、意外にアッサリとした心境で終わっちゃった。「何かひとつのことをガッツリやってみる」ということを通じて分かったのは、そういうのもすごく素晴らしいし、素敵なことだけれども、「あんまり自分には向いていないかも」と……。

澤本中村:あはははは!

中村:やりきって分かったことが「向いていないかも」?!(笑)

宮司:そうです!(笑)でも、やらないと分からなかったので。「あ、やっぱり私って、様々なことに興味があって、様々なことにちょっとずつ触れて、見えている世界が常に広いほうが日々楽しく生きられるのかも」と思ってしまったんですよ。会社員のアナウンサーをやっておきながらなのですが、あまり「ザ・アナウンサー」みたいな働き方をするよりは、もうちょっといろんなことに挑戦して、いっぱい失敗してみたいな、と思っています。そんな数年間にしたいですけどね。

澤本:うん。いっぱい失敗するのはいいことですよね。

中村:そうですね〜。

澤本:僕らの年になって失敗すると、ヤバいじゃない?

中村:うんうん。

次ページ 「泣き崩れた」ほどの失敗談とは?!へ続く

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