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事業者側のネガティブを取り除くだけでなくユーザーにポジティブな広告を再検討する

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月刊『宣伝会議』2022年7月号(6月1日発売)では「デジタル広告品質とコンテキストターゲティング」と題し特集を組みました。
ここでは、本誌に掲載した記事の一部を公開します。

アドウェイズ 代表取締役社長
UNICORN 代表取締役
山田 翔 氏

2007年アドウェイズ入社後、スマートフォン向け広告サービス「AppDriver」などの新規事業を立ち上げる。2013年に子会社であるBulbit(現UNICORN)を設立、全自動マーケティングプラットフォーム「UNICORN」を立ち上げる。2021年7月より、現職。

 

Q.「デジタル広告の品質」にかかわる領域で、もっとも注目している課題とは?

A.「ユーザーにとって価値ある広告とは?」という原点に、広告プレイヤーは立ち戻るべき。

日本インタラクティブ広告協会(JIAA)が発表した「2019年インターネット広告に関するユーザー意識調査」によると、ユーザーの半数以上が「広告表示のされ方に対して嫌悪感を抱いている」と回答をしています。つまり現状、デジタル広告は「嫌われ者」であると定義できるでしょう。このような状況に対し各社が「デジタル広告の品質」を向上させるべく、さまざまな取り組みを行っています。

しかし私は、それ以前の課題である「ユーザーにとって価値ある広告とはどんな存在であるべきか」という点を、業界全体で見直していくべきではないかと考えています。

現状多くの広告プレイヤーは、デジタル広告の品質の中でも「表示の品質」を向上させることにこだわっているように思います。例えば、ビューアビリティの低い枠の買い付けをしないようにしたり、Botからのアクセスを排除したり、不適切な配信面や過度な訴求のクリエイティブを見直したりと、事業者側にとって「ネガティブ」だと思われる点を、取り除く動きが強い傾向です。

しかし、そのアクションを押し進めるだけでは、本来重要な「広告効果の質」を高めていくことは実現できないのではないかと考えます。仮に、クリーンな媒体に対して高いビューアブルレートの広告枠を用意し、健全なクリエイティブを用いて広告を配信できたとしても、ユーザーが興味を持って反応をしてくれる広告を実現できないのであれば、結果的に広告としては嫌われ者のままになってしまいます。そのため、どうすれば広告を見たユーザーがコンテンツに興味を持ち、具体的な行動を起こしてくれるか。広告プレイヤーはその本質的な課題に向き合う必要があるのではないでしょうか。

また、デジタル広告は数字で結果を評価することができるため、レポート数値の最適化ばかりに意識が向きがちです。データの信憑性が担保されていないケースも往々にしてあり、実態に伴ったデータの参照方法や評価の仕方についても、まだまだ改善の余地があると考えられます。この点においても、業界全体で議論を繰り返し、認識を深める必要があるでしょう。

Q.デジタル広告品質の問題解決に向けて、取り組みたいことは?

A.ユーザー視点で本質的な広告効果の質を考え、業界のスタンダードをつくりたい。

広告表示品質の向上に関しては、ここ数年で業界内外を問わず認識が大きく広がり、ブランドセーフティの確保や無効トラフィックの排除に関しても、多くの対策が進んでいると感じています。一方、上記の問いで答えたように、「本質的な広告効果の質の向上」に関しては、改善の余地が大いにあると考えています。本当にユーザーが興味を持ち、広告に対しアクションを起こしたのか。私たち広告プレイヤーはきちんとそのメカニズムを理解し、配信の最適化に向けてフィードバックをするなど、本質的な改善をしていかなければなりません。

そして、ユーザーのポジティブなアクションを増やしていけるような効果の計測方法や評価の仕方を見出し、広告表示の先にある、より本質的な広告効果の向上を意識した上で、業界全体であるべきスタンダードをつくっていくべきだと考えています。