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The One Show 2023部門賞を紹介【後編】Appleから3作品が受賞

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5月19日、アメリカ・ニューヨークで、今年第50回を迎えた「The One Show 2023」の受賞作品が発表された。本年度は69の国と地域から、2万166作品がエントリー。そこから210のゴールドペンシル、200のシルバーペンシル、238のブロンズペンシル、1172のメリットが選出された。今回の対象となるのは、2021月1日から2023年3月3日までにメディアで公開された作品だ。


【参考】The One Show 2023発表、最高賞はApple「The Greatest」に
【参考】The One Show 2023部門賞を紹介【前篇】2部門受賞は「Morning After Island」と「Muskrat Magazine」

 

ここでは、最高賞に次ぐ部門賞にあたる「Best of Discipline」の受賞作20作品のうち、後編として10作品を紹介する。
 

●Best of Discipline(部門賞)

【前篇】はこちら
 

・Integrated部門

Squarespace「The Singularity」
Agency:Squarespace+Q Department+Smuggler+Final Cut

“Webサイトを制作するためのWebサイト”「Squarespace」。その特徴を、自らを複製する存在として擬人化し、俳優 アダム・ドライバーが演じるムービーを作成。スーパーボウルで30秒のスポットを放映したのち、90秒のWeb動画としても公開した。映画のようなポスターやアニメーションも公開したほか、複数のアダム・ドライバーが会話をするビハインドザシーン調の動画も公開。「Squarespace」のサイト上にもアダム・ドライバーを登場させ、Webサイトデザインのテンプレートを用意するなど、広告から購買の場まで、一貫してキャンペーンを展開した。

 

・Interactive & Mobile Craft部門

Black & Abroad「The Black Elevation Map」
Agency:Performance Art Toronto

カナダで黒人向け旅行サイトを展開するBlack & Abroadは、一見事実に即したものに見える「地図」にも制作者の認識が反映されていて偏りがある点に着目。ブラックカルチャーにまつわるさまざまなデータに基づき、地形を黒人の視点から再解釈する「The Black Elevation Map」を公開した。データの密度が高ければ高いほど、マップ上の標高は高くなる。人口分布、黒人が経営するビジネスや文化施設がどこに存在するのか/しないのか、どの程度豊富なのかといったデータを可視化し、黒人を中心とした新たな旅行体験を提案した。

 

・Interactive, Online & Mobile部門

Polycam、Unesco、Blue Shield「Backup Ukraine」
Agency:VIRTUE+Blue Shield+Polycam+Unesco Denmark

ユネスコと、3Dのスタートアップ Polycamは、ロシアによる軍事侵攻により失われる可能性のあるウクライナの文化遺産を、爆弾の届かないクラウド上にデジタルバックアップしていく仕組みを構築。全ての市民にスマホひとつで高解像度の3Dモデルを作成できる権限を与え、そのデータを設計図として永久に保存することにした。万一実際の遺産が破壊されてしまっても、そのデータをもとに再建することが可能だ。ウクライナでのキャプチャ数は3万5000件以上に。ユネスコはウクライナの近隣諸国でも、手遅れになる前に遺産のスキャンを開始するよう公共放送で呼びかけた。

 

・IP & Product Design部門

Iberdrola「Turnstile Turbines」
Agency:Weber Shandwick+McCann+Mediabrand

未曾有のエネルギー危機を迎えるヨーロッパにて、風力発電のリーディングカンパニーであるIberdrola(イベルドローラ)は、地下鉄の改札口を風力発電機(Turnstile Turbines、ターンスタイルタービン)に置き換える挑戦をスタート。エンジニアスクールのメンバーと同社のエンジニアが組み、人が通過するたびに発電ができるプロダクトのプロトタイプを制作した。その後それはパリ中心部のミロメニル駅に設置され、1日あたり2200ワットの電力を生み出すように。年間3万トン以上のCO2を削減できる。今後はスペイン・マドリードの地下鉄にも設置される予定だ。
 

・Moving Image Craft & Production部門

Apple「Share the Joy」
Agency:TBWA\Media Arts+Apple+OMD+Blacksmith

アルゼンチン・ブエノスアイレスを舞台にした、ホリデーシーズンのAirPods ProのWebムービー。AirPods Proの共有機能で音楽を同時に聞く2人のダンサーが、踊りながら街を巡り、出会うもの全てを魔法のように雪に変えていく。

 

・Music & Sound Craft部門

Apple Music「Rihanna – Stay」
Agency:Apple

23年2月に開催された「Apple Music Super Bowl」にて、初めてハーフタイムショウに出演したリアーナ。今回から新たにスーパーボウルのパートナーとなったApple Musicは、リアーナの象徴的なパフォーマンスを祝うために、彼女のヒット曲からインスピレーションを得てムービーシリーズを制作。その1曲目に選ばれたのは『Stay』。ナショナル・フットボール・リーグに属する32のチームを代表する32人の熱狂的なサポーターが、それぞれのチームらしい装いで『Stay』を熱唱した。エンディングではそれぞれの熱のこもった歌声をコーラスとして重ね合わせ、心を揺さぶるようなつくりになっている。

 

・Out of Home部門

Apple「Public Displays of Encouragement」
Agency:TBWA\Media Arts Lab+Apple+OMD

エミー賞を受賞したコメディドラマ『テッド・ラッソ』とストリーミングサービス「Apple TV+」の認知度と話題性を高めるため、TBWA\Media Arts Labは、ワールドカップに出場する男子サッカーのアメリカ代表チームを応援するキャンペーンを実施。ヘッドコーチを含む27人の代表メンバーに、テッド・ラッソ本人から、というていで、各選手の出身地や出身高校などにOOHとして掲出した。公式発表と共に、地元メディアではその地域に掲出された内容を、全国メディアではキャンペーン全体が取り上げられ、PR効果は抜群だったという。

 

・Pharma部門

Horizon Therapeutics「Eyedar」
Agency:Area 23, an IPG Health Company+Dalmatian Cow+Blind Pig

聴覚を利用して周囲の状況を把握する「エコロケーション」は、視覚障害者にとって可能性を秘めた技術だが、学ぶのが難しく、視覚障害者の約1%しかこの技術を習得できていない。そこでグローバルなバイオテクノロジー企業 Horizon Therapeuticsはその習得のためのハードルを下げる「Eyedar」を制作。iPhoneに搭載した、レーザー光を照射してその反射光の情報をもとに対象物までの距離や対象物の形などを計測する技術「LiDAR」を活用し、その3Dマップを音で出力することで、周囲の様子をサウンドスケープ化する。視覚障害者もこのアプリを通じて練習を積むことで、周囲の様子を把握できるようになる。さらにアプリ自体も視覚的なインターフェースを一切排除しており、ナレーションとジェスチャーで簡単に使用できる仕組みだ。

 

・Print & Promotional部門

An Nahar Newspaper「The Elections Edition」
Agency:Impact BBDO+Impact BBDO+DejaVu

1990年代から支配してきた現政府のせいで国が崩壊し、人々が貧困やインフレに苦しんでいるレバノン。多くの人は次の選挙に期待を寄せていたが、権力を維持したい政府は投票用紙を印刷するためのインクと紙が不足していることを理由に、選挙を延期しようとした。こうした妨害を防ぐために、新聞「An Nahar」は1日分の日刊紙の発行をやめ、紙とインクを政府に寄付することに。当日新聞販売店には、空っぽの棚に「本日の新聞に使用したインクと紙は、2022年選挙の投票用紙の印刷に回されました」というメッセージが。記載した二次元コードから新聞のオンライン版に誘導し、印刷されなかった問題の原因を説明。政府の言い訳を排除すると共に、レバノンのすべての有権者に投票用紙が行き渡った。

 

・Social Media部門

BMW「BMW: Nothing But Sheer Joy」
Agency:TBWA\Juice Beijing+TBWA\Bolt Shanghai+Filmate Productions+and Real Good Studio

BMWが中国で実施した、旧正月の時期のキャンペーン。旧正月の3日前に中毒性のあるローンチムービーを公開することから始まり、中国版の「TikTok」でインフルエンサーを起用したダンスチャレンジなどが実施された。前日には、30種のデジタル版の「アン・パオ」(お祝いごとの際にお金を包む赤い袋)とステッカーを用意し、話題を創出した。