メール受信設定のご確認をお願いいたします。

AdverTimes.からのメールを受信できていない場合は、
下記から受信設定の確認方法をご覧いただけます。

×
コラム

デジタルマーケター、校長になる!

花王で実践!「提案型営業の基本活動の3点セット」で高校図書館の陳列を改革

share

商品のゴールデンライン陳列を応用し、図書のレイアウトを見直す

今年4月に、花王から茨城県の民間高校に赴任した私の日々の奮闘を紹介する本連載。前回は、花王時代の売り場づくりの提案経験を活かし、高校内の図書館の集客アイデアを企画した話を紹介しました。

高校時代の私はほとんど図書館には足を運ばなかった生徒です。当時の私にとっての図書館は静かな場所で、テストのための勉強をするための教室ぐらいのイメージしかありませんでした。

そんな私が高校に赴任して、改めて図書館に足を運んでみると学生時代とは違った視点で図書館を見るようになりました。

そこで思ったのは、私が通う下妻一高は図書も豊富で、情報発信も積極的にしているということ。この魅力をもっと多くの生徒に知ってもらいたい。そこで取り組んだのが、前回紹介した、図書館集客企画でした。

今回は、具体的にどのように企画を進めていったのかを紹介したいと思います。

私は花王時代にストアアドバイザー(企画提案型営業)の経験を積みました。そこで下妻一高の図書館をドラッグストアの売り場に例えて売り場提案を企画してみました。まずは基本活動の徹底です。

基本活動とは、1、定番チェック、2、売り場レイアウト表作成 3、エンドプロモーション計画の作成という「提案型営業の3点セット」です。これは花王時代に徹底的に教え込まれました。

図書館における「定番」とは、いわゆる分類別に並んでいる本の陳列棚のこと。生徒が見て分かりやすい売り場になっているか?カテゴリーごとに分けて陳列してあるか?本がきれいに陳列してあるか?情報発信はしているか?などの定番チェックを図書館の先生と行いました。

こうしてチェックをしていくと、分類別に本は並んでいるのだけれど、探す時に分かりづらかったり、情報発信している内容が古かったりと改善の余地があることに気づきました。図書館の先生も「なるほど」と、メモを取りながら改善策を考えてくれます。

次に「売り場レイアウト表」を使った、「エンドプロモーション計画」を考えてみました。大事なのは図書館に来る生徒の導線を考えて本を陳列すること。かつ生徒たちの目の高さ=ゴールデンラインに本を陳列していきます。いわゆる商品のゴールデンライン陳列ですね。

写真 図書館に貼ったレイアウト表

 

また、探求の授業のサポートにつなげようと、私の経験を活かし、「マーケティング関連書籍」のコーナーも新たにつくりました。それに加えて、部活動に入学する時期に合わせた「部活動関連コーナー」を新しく作ってみたり、学校行事に合わせた「花王で言う、まさに旬の売り場提案」と題したコーナーが本校のフリースペースで展開されています。まさに図書館でのクロスマーチャンダイジング!!見事です。

写真 図書館の陳列風景

図書館にも「エンド棚」を設置し、POPも展開。

 

先日、この下妻一高をモデル校に県西地区の高校の図書館の先生が集まる会議で、今回の取り組みについて発表する機会をいただきました。花王のセールス担当時代も新製品のモデル事例をベストプラクティスとして取り上げて、全体に広げる活動を行います。まさに成功事例の水平展開です。会議当日に集まった人数は約30名前後。2時間を超える私のプレゼンに、先生方も非常に熱心に聞いてくださいました。ビジネス用語が多い説明だったので、一人ぐらい寝てしまう先生もいるかと思ったのですが、みなさんに興味深く聞いていただくことができました。

私も先生方が、できるだけ自分の学校図書館の経営に活かせるように、「マーケティング」や「マーチャンダイジング」を図書の先生方の実務に例えて説明しました。特にマーチャンダイジングの本の陳列位置の話や、カテゴリーごとに本を分けて生徒が本を選びやすく陳列するお話などは、先生方にも評判が良かったです。民間企業で培った経験がこのような形で活かせると、すごくやりがいがありますね。

このようにモデル校を作り、他の学校にも広げる活動ができてくると、茨城県の県西地区全体の底上げになります。モデル校になった下妻一高の図書の先生もさらにやる気に火がついて、いつも図書館に来てくれる生徒を“超ロイヤルユーザー”として定義づけ、この生徒からもっとよくするためにどうしたらいいか、意見を引き出しています。まさにこの生徒はイノベーターです。この生徒の意見を聞いてみると、図書館の奥に座れる小さなフリースペースがあるのですが、「時計が見づらい場所にあるので、次の授業時間までの時間が気になる」との意見をもらいました。

すぐさま、図書の先生は時計を購入して、その時計を壁に設置して課題を解決。すると時計設置後、生徒たちが何人かそこに座って、本を読んでいるではありませんか!まさにデプスインタビューからのN=1起点の図書館経営ですね。このように生徒の意見も参考にして、小スペースの工夫、POP工夫や、ゴールデンライン陳列、定番改善など、PDCA活動を実践しながら日々下妻一高の図書館はアップデートされています。

また陳列などを変更したときには、必ず前後比較の写真を撮影してくれて、私のアドバイスを聞きに来てくれるんです。私のスキルを活かそうと頼ってきてくれる先生がいると私もやりがいがありますし嬉しいですよね。このようにマーチャンダイジングのスキルを学校の図書館経営に活かし、今までなかなか改善ができなかったことに先生方がチャレンジするきっかけを作ることにつながり、図書館という素晴らしい学校の場所へ変革ができたら嬉しいです。

写真 施設 図書館の時計

“お客さま”の声を聞き、時計を新たに設置。

 

advertimes_endmark