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ファンマーケティングの基礎は登山コミュニティを通じた「共助」の仕組み

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生活者の意識・行動の変化が激しい時代。生活者の支持を得るブランドになるためには市場の動向に合わせてスピーディーな意思決定も必要です。こうした市場で顧客を増やし成長を遂げるスタートアップ企業では、どのようなマーケティング戦略が企画され、また実行されているのでしょうか。新興企業の戦略から新しいマーケティングの方法論を導き出します。

※本記事は6月30日発売の月刊『宣伝会議』8月号の転載記事です。

写真 人物 小野寺 洋氏

ヤマップ
執行役員
マーケティング戦略本部長
小野寺 洋氏

ヤマップ会社概要
設立年:2013年
従業員数:97名(うちマーケティング戦略本部/PR戦略部は6名)
事業概要:登山地図GPSアプリ「YAMAP(ヤマップ)」の開発・運営、登山・アウトドア用品のセレクトオンラインストア「YAMAP STORE」の運営など

山岳遭難者は年間3000名 GPSアプリで遭難被害を防ぐ

スマホの電波が届かない山中でもGPSを使って自分の現在地がわかる登山地図アプリ「YAMAP」を提供しているヤマップ。2013年のサービス開始後、登山好きの間で利用者を伸ばしていき、ダウンロード数は370万を突破(2023年5月時点)。国内の登山地図アプリでトップシェアの利用者を誇る。

YAMAPは登山中にたどってきた道のりがGPSで記録される。もし道に迷った際は、その記録をもとに来た道を引き返せば安全に帰ることができるため、道迷いや遭難を防ぐツールとして役立っている。同社執行役員・マーケティング戦略本部長の小野寺洋氏は「国内では毎年約3000名が山岳遭難していて、遭難理由の約4割が道迷いです。我々はYAMAPによって道迷いをゼロにしたいと思っています」と語る。

YAMAPは、ユーザー同士で情報を交換し合うコミュニティ機能も併せ持つ。登山中に撮影した風景の写真はアルバム化され、活動日記として公開。他人の日記を見て山に行きたくなるという流れが生まれるのだ。「プラットフォームを用意するだけで、コンテンツはユーザーがつくってくれる。つまり、登山コミュニティを通した循環コンテンツ生産の仕組みを構築しています。よく“登山地図アプリの会社”といわれますが、実はSNSプラットフォームの会社なのです」(小野寺氏)。

YAMAPの大きな特徴のひとつがフィールドメモ機能だ。「通行止め」「迷いやすい」など地図に載っていない現地の危険箇所を発見したら写真やコメントでシェア。すると、別の登山者から「役に立った」とフィードバックが来る。「承認欲求を満たし、誰かに感謝される循環をつくれば、登山コミュニティを通した『共助』の仕組みが成り立ちます。これがファンマーケティングの基礎となっています」(小野寺氏)。

圧倒的シェアを持つYAMAPだからこそ、ユーザーの行動データ(ビッグデータ)を活用して社会課題解決につなげることもできる。その一例が、2021年から毎年実施している「日本一道迷いしやすい登山道」の発表だ。YAMAPユーザーが歩いた軌跡データから道迷いリスクの高い5地点を特定し、登山道を管理する自治体などと共有。道標の設置や安全対策を呼びかけている。

2021年版で選定した大界木山(神奈川県/山梨県)の浦安峠では、軌跡データや前述のフィールドメモの投稿から、道迷いを誘発しているポイントを特定。テレビのニュース番組にも取り上げられ、管理者が道標を設置することとなった。

「道標設置後の軌跡データを見ると道迷いがゼロになっています。YAMAPがテレビ局や行政を動かし、たった1本の道標の設置で道迷いが防げることを実証・可視化できた事例です」(小野寺氏)。

 

ファンマーケティングの肝となる「人に教えたくなる」仕組みづくり

YAMAPの肝であるファンマーケティング施策として、他の人にYAMAPを推薦したくなる仕組みづくりに力を入れている。その代表例が、オフラインで実施するユーザーミーティングイベントだ。

一般的なユーザー会は、自社商品・サービスの活用事例をユーザー間で共有し、新しい活用方法を見出すことを目的にすることが多い。一方ヤマップでは「イベント後、何人にYAMAPをおすすめしてくれたか(人数)」をKPIに設定。そのための“ネタ”を持ち帰ってもらえる内容にしている。

実データ グラフィック
ファンイベント実施後には、参加者1人あたり平均3人以上にYAMAPを勧めている。

……この続きは6月30日発売の月刊『宣伝会議』8月号で読むことができます。

 

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『宣伝会議』8月号(6月30日発売)

画像 表紙 『宣伝会議』2023年8月号


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