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ブランドらしさと自身の感覚を結ぶ表現を見出す/波間知良子(サン・アド/TCC賞2023最高新人賞)

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2023年度のTCC新人賞が発表された。本年度は多数の応募者から、最高新人賞1人、新人賞17人が選ばれた。最高新人賞を受賞したのは、青森県のブランド米「青天の霹靂」の広告を手がけた波間知良子さんだ。

米袋をファッションアイテムに

波間知良子氏

波間知良子(なみま・ちよこ)

サン・アド コピーライター。埼玉県出身。大学卒業後、日本デザインセンター原デザイン研究所で無印良品などのコピーを担当。朝日広告賞グランプリを受賞して賞金をもらい、世界一周旅行へ。1年10カ月ほど海外を旅して帰国後、サン・アド入社。

私がコピーライターという仕事を知ったのは、高校生の頃でした。言葉だけで何かを変えられるってすごいなと感じて、当時の担任の先生に「こういう仕事がしたい」と話したのを覚えています。大学に進学してもその想いは変わらず、宣伝会議のコピーライター養成講座を受講するなどコピーの勉強をし、新卒で日本デザインセンターにコピーライターとして入社しました。

日本デザインセンターでは当時、若手社員は公募広告賞に応募するという文化がありました。学生の頃から旅行が好きでさまざまな国を訪れていたのですが、その時に「写真を撮影している人の写真」を撮りためていて。2009 年度の朝日広告賞で、その写真を活用してキヤノンマーケティングジャパンの課題に応募し、グランプリを受賞しました。

この作品は、私自身が感じた「人が何かに夢中になっている様ってチャーミングでかわいいな」という感覚を、そのまま広告にしたような内容です。この「自分の感覚」を評価してもらえた経験はとても大きかったですね。サン・アドに入社後は、2015 年にデビューした青森県のブランド米「青天の霹靂」やサントリーの「ザ・プレミアム・モルツ」などを担当しています。

青天の霹靂の仕事の方針は、「普通のことはしない」ということ。ブランド米としては後発な中で認知を拡大するため、あえてお米のCM にはあまりないようなコミュニケーションを実施し続けています。たとえば味の訴求ひとつとっても、日本のお米のおいしさの基準となっている「もちもちして甘い」という味わいとは異なり、「さっぱりしたお米」というポジションを確立するため“さっぱり”を軸とした訴求を徹底しました。

そして2021 年、青森出身のシソンヌ・じろうさんを起用したことが、今回受賞したWeb ムービーの企画に繋がっていきます。

実データ グラフィック 受賞作ポスター
受賞作の青森県・青天の霹靂「お米を買って帰ろう。あ、袋はいいです。そのままで」。

このムービーでのクライアントの要望は、「若年層の認知度を上げたい」というものでした。そこで「お米を買う」という生活感あふれる行動を、もっと格好いいものにできないかと考えました。若い消費者の声を聞くと、お米もパッケージで選ぶ「ジャケ買い」のような購買行動をしていることもわかりました。そこに、じろうさんの被写体としての魅力をかけ合わせ、「米袋をファッションアイテムとして見せよう」という発想に至ったんです。青天の霹靂の米袋のデザインは評判が良く、それなら成立すると思いました。

イメージしたのは雑誌『POPEYE』の特集のような世界観。フランス人がバゲットを買って、そのまま持って帰るような感覚です。そこで生まれたのが、今回の「お米を買って帰ろう。あ、袋はいいです。そのままで」というコピーでした。

自分の中にある「面白いかも」という思い込みのような感覚を頼りにストーリーを一から描いたので、当初は面白くなるか、伝わるかが不安でした。ですがユーザーの反応を見ると、思いのほかしっかりと広告として伝わっているようでした。「今度『袋はいいです。そのままで』って言います」と言っていただけたり、「フランス人がバゲットを買って帰るみたい」と、私のイメージをそのまま言葉にしてくれたりする人も。人によっては聖地巡礼のようにロケ現場を訪れて、じろうさん演じるキャラの真似をするなど、いろいろな楽しみ方をしてくれているのも嬉しかったです。最終的には「POPEYE Web」とのコラボ記事が実現して、当初のイメージが本当に形になりました。

振り返ってみると、朝日広告賞も今回の賞も、自分の中の「かわいい」「面白い」といった感覚を大事にしながら生み出したもの。今後もそういう自分が持つ世界観とブランドの課題を結び付けながら、新たな表現を見つけていきたいですね。

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