テーブルレストランならではの価値を訴求
外食産業の競争が激しさを増す中、ファミリーレストラン「ガスト」は「家族」への価値提供を改めて強化する。すかいらーくホールディングス(HD)はガストの新戦略として、顧客が料理の仕上げをテーブルで行う「DIYメニュー」の販売を4月11日に開始する。自身で具材をパンに挟んで切り分けるサンドイッチなど、家族やグループが楽しめる料理を通じて、テーブルを囲んで食事をするファミレスならではの強みを生かす考えだ。
新商品は、ガストスペシャルアドバイザーに就任したタレントの「ヒロミ」氏が考案した「ヒロミオリジナルDIYメニュー」。「DIYミートパスタ&ミニチーズINハンバーグ」「DIYビーフ100%ハンバーグサンド」「DIYパンケーキプリンアラモード」の3商品をラインナップしており、それぞれ具材を麺やパンなどと組み合わせて独自のオリジナル料理にできる。顧客が料理を完成させるというアイデアはヒロミ氏の考案で、同社初の試みとなる。
コロナ禍が明けてから外食需要は回復傾向が続く。日本フードサービス協会が会員企業を対象に行った調査では、2023年のファミリーレストランは前年比117.5%、コロナ流行前の2019年比で98.9%となった。一方、競合のファーストフード(前年比110.4%)や喫茶(同120.6%)なども全体的に盛り上がっており、外食市場の競争は加速している。特にリーズナブルな価格が強みのファミレスは、物価高騰の影響でより安価なファーストフードやコンビニなども強力なライバルとなっている。
マーケティング本部マネージングディレクターの平野曉氏は「テーブルサービスレストランに来店してもらうためには、お客さまが喜ぶ付加価値が必要」と話す。新しい体験価値を模索する中で、同社はヒロミ氏とのコラボを企画。ヒロミ氏が提案した「DIYメニュー」について、平野氏は「企業側の既成概念にとらわれない、新しい発想」と評価した。
主に家族やグループの注文を想定。DIYメニューを家族全員で協力して仕上げるほか、子どもが一人で完成させる様子を親が見守るといった場面も想定しており、ファミレスを思い出作りの場としてアピールしたい考えだ。顧客ごとに独自性が生まれる利点もあり、SNSへの写真投稿による口コミ効果も期待。DIYメニューを使ったコンテストも企画している。
物価高で店やメニューを選ぶ基準も厳しくなる中、「金額に見合った価値がなければお客さまには選ばれないが、安ければいいというものでもない」と平野氏。競争を勝ち抜くためには「店舗ならでは体験価値」が重要とし、今後もヒロミ氏のアイデアを実現させていく考えだ。
4月8日には「ガストスペシャルアドバイザー就任発表会」を開催。DIYメニューについて谷真会長は「企業側の商品開発では全く出てこない発想だった」とコメント。ヒロミ氏は「DIYは多少失敗しても、それが味になる」とし、考案したメニューを家族で楽しんでほしい考えを示した。
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