「年越しラーメン」の自主提案ポスターが品川駅を飾るまで

会社の壁を超え、コピーライターとデザイナーがコンビを組みクリエイティブに取り組む「アートとコピー」講座。その3期生として知り合ったコピーライターの大村尚也さんとデザイナーの堀聖悟さん。今回、受講後にお2人が作成し、JR品川駅を飾った老舗蕎麦屋の広告について紹介します。

写真 人物 堀聖悟(ほり・せいご)、大村尚也(おおむら・なおや)

右:堀聖悟(ほり・せいご)/デザイナー
岐阜県飛騨市出身。多摩美術大学統合デザイン学科卒業。アートとコピー3期 アート生。普段は、グラフィックデザイナーとして、広告制作会社勤務でお菓子のパッケージデザインや広告ポスターなどをデザイン。インプットは量、アウトプットは密度がモットー。
 
左:大村尚也(おおむら・なおや)/コピーライター
京都府京都市出身。関西大学総合人文学科卒業。アートとコピー3期 コピー生。教育業界に特化した広告代理店にてプランナー・コピーライターを兼務。好きなコピーライターは岩崎俊一さん、好きな食べ物は明太子スパゲッティ。

品川駅に掲出された「蕎麦」のポスター

イメージ 品川駅に掲出された「蕎麦」のポスター

11月末から12月の初めまで、JR品川駅に1枚のポスターが掲示されました。落語家が蕎麦らしきものを啜っているインパクト大なビジュアルに、「拉麺」の文字。飛騨にある老舗製麺所「麺の清水屋」のポスターです。実はこのポスター、コピーライターとデザイナーによる自主提案がきっかけとなり、形になったものです。自主提案のきっかけから、実際にどのような過程で進んだのか、クリエイティブが形になるまでを伺いました。

飛騨では「蕎麦=ラーメン」、それを聞いて面白いと思った

ポスターを作成したのは、コピーライターの大村尚也さんと、デザイナーの堀聖悟さん。2人はもともと、宣伝会議の講座「アートとコピー」で出会い、講座終了後も2人でコンペに挑戦していました。しかし、実際にはなかなか実績につながらず、とにかく実績を作りたいという思いで自主提案を企画したといいます。

「せっかく自主提案するなら、自分たちが好きなコンテンツを応援できるものがいい」と、お笑いやボードゲーム、食文化など興味をすり合わせているときに、ふとラーメンの話題に。「堀の出身地である飛騨高山では蕎麦といえばラーメンを指し、年越し蕎麦ではなく年越しラーメンを食べる文化があることを知って、すごく面白い!と感じ、年越しラーメンの広告を提案してみようということになりました」と語る大村さん。

自主提案先として選んだ麺の清水屋は、堀さんが幼い頃から親しんでいたお店でもありました。まずはビジュアルアイデアから検討。方向性は複数検討しましたが、せっかくなら「蕎麦」と「ラーメン」の認識のズレをいかしたものにしたいという観点から、「落語家がそばではなくラーメンを啜っている」というアイデアが生まれました。

コンセプトが固まったのち、堀さんがアイデアのデザイン、大村さんが企画書の制作と作業を分担。作業分担といっても、お互いのフィードバック自体は細かく行い、まさに二人三脚で進めていったといいます。

8月中旬に麺の清水屋を直接訪問し、提案する機会を得たお2人。提案後すぐに「ぜひやりましょう」と返事をいただいたそうです。その後、掲出場所や効果的な伝え方について、メールやオンラインで提案や相談を重ねながら進めていきました。

ビジュアルの違和感が目に留まるデザインに

新鮮な表現や切り口はインパクトが強くなるため、いままでにないラーメンの広告を作ることもテーマだったといいます。「広告に必ずしも新しさが必要だとまでは思いませんが、これまで課題や公募に取り組むなかで、ほかと同じじゃ注目されないということも痛烈に感じています。そのため、切り口や表現の中に『新しさ』を盛り込むことは常に意識しています」と答えるお2人。

今回でいえば、ラーメンと蕎麦の関係の面白い表現方法を議論する中で、ラーメンをあえて見せないのが面白いのではないかという結論に至ったといいます。一見、落語家が蕎麦を啜っているかのようだが、汗をかいているし、がっついているように見える……。ビジュアルの違和感で人の目を留め、コピーでメッセージを伝えるアイデアとなっています。これは何の広告だろうという「?」から、ラーメンの広告か「!」という、見た人の驚きや新鮮さが計算されています。この「?」から「!」を生み出す手法は、アートとコピーの講義の中で学んだものだといいます。

さらに、落語らしさを演出するため、文字は寄席文字風にデザイン。落語家が扇子を持つ仕草は、古典落語の「時そば」を参考にしています。実際の撮影でも、モデルやフォトグラファーと一緒に「蕎麦ではなくラーメンだとどうなるか」を議論しながら、細部までこだわったといいます。

イメージ 「麺の清水屋」のポスター

自主提案だからこそ、時間を割いても読みたくなる企画書を作る

提案の際に意識していたことを大村さんに聞いたところ、2つあると返ってきました。

1つ目は、提案段階で完成形に近いビジュアル・コピーを見せること。これは、実現の可能性を感じてもらうという面もあるが、提案にかける熱量を届けたいという目的もあるといいます。「どこの馬の骨とも知らない人たちからの広告提案なんて、自分がされたらびっくりしてしまうので、せめて熱量だけでも届けたかった」と振り返る大村さん。

また、アイデアを楽しく発表するだけじゃ人には伝わらない、と続けます。人に伝えるには、アイデアの完成度は当然として、検証・修正を繰り返し、自分たちが胸を張って提案できることが求められます。この考え方も、アートとコピーの講座で学んだことだといいます。「あいにく、自分たちには実績も経験値も不足しているので、せめてクリエイティブの検証だけはとことんやり尽くそうと考えていました」

2つ目は、読みたくなる企画書をつくること。企画書は、突飛なアイデアを見せつけるためのものではありません。思考回路を共有して互いの認識・ものさしをすり合わせ、最終的に互いの「やるべき」と「やりたい」を共有するものであり、その瞬間にたどり着くための地図であるという。「まるで自分の仕事術かのように答えてしまいましたが、アートとコピー講座で、講師の阿部広太郎さんから教えてもらったことをそのまま自分の教訓にしています(笑)。今回は自主提案なので、クライアント様からすれば、やはり自分たちは『どこの馬の骨とも知らない人』。普通は、企画書を読む時間がもったいないと考えると思います。だからこそ、『読みたい』『読んでよかった』と思える企画書になるよう、ページごとの情報整理にはすごく気を付けました」

イメージ 企画書例

イメージ 企画書例

完成したポスターは品川駅だけでなく、麺の清水屋が運営しているラーメン店「豆天狗」にも掲示することになり、それに合わせたボディコピーも作成。麺の清水屋の代表である清水將行さんは「年越しにラーメンを食べる文化を少しでも多くの方に広めていきたいと考えていました。今回のポスターのご提案は私との考えにマッチし、心踊るような感覚でした」とコメント。社員からの評判もよく、清水屋側から「このポスターをスーパーのPOPにも活用したい」と意見が上がり、イベントでの活用等にも展開していく予定です。

コピーライター養成講座×アートディレクター養成講座 「アートとコピー」 阿部広太郎クラス 第5期がいよいよ開講

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お2人が受講した、「アートとコピー」の第5期が2025年3月8日(土)から開講します。この講座は、コピーライターとデザイナーが毎回別のコンビを組み、課題に取り組む全8回のクラスです。ときには、制作したクリエイティブを全員で審査し、コンビ同士で競い合うこともあります。1人では越えられない壁を感じているデザイナー、アートディレクター、コピーライター、プランナーの方々におすすめの講座です。

<アートとコピー阿部広太郎クラス 講座概要>
◯開講日:2025年3月8日(土)19:00~21:00
◯講義回数:全8回。月1回の土曜開催
◯開催形式:教室とオンラインを各回自由選択できるハイブリッド開催
◯定員:40名(コピーライター枠20名、デザイナー・アートディレクター枠20名)
 ※人数次第で事前選考があります。エントリー締め切りは2025年2月13日(木)23:59までです。詳しくはサイトをご覧ください。
◯詳細・お申込はこちらから

1月18日(土)に、メイン講師の阿部広太郎さん、さらに第4期生が2名登壇する無料体験講座を開催します。
詳しくはこちら

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