※本記事は月刊『宣伝会議』2月号の連載「米国広告マーケティング事情」に掲載されています。
投資家心理を動かすポイントはAIを活用した顧客価値の創出
マーケターにとって、生成AIの活用は、単なるクリエイティブ制作やコスト削減にとどまらない。顧客との対話設計からブランド体験の最適化、さらには収益モデル全体の変革にまで関わる広範な価値創出手段として、生成AIは企業戦略の中核へと躍り出ている。注目すべきは、それが企業の株式市場評価にも影響を及ぼし始めている点だ。
なぜテクノロジーによるブランド体験の最適化、それによってもたらされるブランド価値の向上が株価上昇にまでつながるのか。これは一過性のブームに過ぎないのか、それとも社会・産業・技術発展の必然的な帰結として新たな資本市場原理へと定着するのか。本稿では、マーケティング実務に資する視点から「生成AIと株価」の関係を再検討し、戦略立案時に考慮すべき方向性や留意点を示していく。
すでに海外・国内で、生成AIが実ビジネス成果を通じて株価評価を改善した具体例が生まれている。例えば、米国のC3.aiは、生成AIを活用したエンタープライズ向けAIソリューションで需要予測や工程最適化などの機能を拡充し、クライアント企業の収益力強化を支援。結果、2024年には収益が前年同期比30%増を達成し、株価は一時10%以上上昇した。
日本国内では、数あるベンチャー企業をおしのけて、株価が高値を更新している企業がある。日立は、顧客の持つデータの蓄積を業務に活かすためのLumadaという枠組みを提唱しており、投資家に評価を受けた結果、今日の株高につながっているといえる。
またServiceNowは、AIを活用した業務自動化・最適化ソリューションを通じて、短期ROI強化と顧客ロイヤルティ向上を同時に実現。過去最高水準の株価を記録した。
こうしたAIを活用した顧客価値の創出は事業成長の可能性を強く感じさせ、株価評価に反映されるようになってきている。これは生成AIが単なるコスト削減ツールではなく、投資家心理を動かす成長の原動力になることを示唆する。
C3.ai、日立とServiceNowに共通している点には、「体験の粒度」を高め、顧客接点での価値を再定義することによりブランドの価値を底上げし、それが中長期的な成長期待として株式市場で評価されていることが挙げられる(※1)。
※1 弊社もFujitsu Kozuchiという、手軽に顧客が最新のAI技術にトライできるフレームワークを提供している。興味のある方は参照されたい。

…この続きは12月27日発売の月刊『宣伝会議』2月号で読むことができます。