博報堂のシンクタンクである博報堂生活綜研・上海は1月16日、中国伝媒大学広告学院と中国生活者の「生活者“動”察」に関する共同研究を実施した。
経済不安を背景に、中国は現在コスパ重視の消費行動をとる「消費ダウングレード」の傾向にある。しかし一方で、消費を通じて自己肯定感を高めたいという欲求が顕在化した新たな消費パターン「自築消費」に注目できると発表。これは、消費を通じて自分らしさを確認、再構築し、自己肯定感を高めていく消費行動を指すものとしている。
「生活者“動”察」における主な研究結果は、以下のとおり。
節約が原因で「生活の質が落ちると不安」4割超え
調査では、昨今の消費ダウングレードのムードが自身の消費行動にも影響を及ぼしていると回答した人は4割超。また、節約したり、安価な商品を選択し続けたりすることで、生活の質が落ちるのではないかといった不安を感じている人も4割を上回った。
低価格商品を購入し続けることに対する不安について、「不安がある」と回答した人は4割以上。不安の内訳は、「生活水準が低下しそう」「自分に自信がなくなりそう」といったものだった。
「自分や誰かのため」の消費に意欲
消費ダウングレードのムードが高まったことで不安を覚える生活者が増える中、「時々は自分本来の経済力に見合ったやや高価なものを買う」「自分のセンスを再確認できることに支出したい」という動きが、“ギフト消費”として表れていることがわかった。コスパ重視の中でも、ギフトや誰かを支えるための消費へは意欲的だと分析できる。
また、買い物に失敗しないように、店舗の信頼性や、AIや性格診断の結果をもとに商品を選択する人など、情報収集や判断を自分以外に委ねるという行動も出てきていることがわかった。
研究の結果について博報堂生活綜研・上海は「研究結果は、生活者が自分らしさの再確認や誰かの役に立つ自分の発見を求め、消費を通じて自己価値を築いていることを意味している。節約志向やコスパ重視といった社会的なトレンドだけではなく、“自築消費”にも注目することが、今後のマーケティングの鍵になる」とコメントした。
