CM差し替えは長期化の見方も すべての発端は「クローズドな会見」から

不祥事をめぐるフジテレビの一挙手一投足に注目が集まっている。それはCMを出稿している広告主企業も同じ。そのほとんどが同局へのCM放映を差し止め、ACジャパンによる公共広告ばかりが流れる異例の事態に陥っている。
 
これからどのような方向に向かうのか。大手メーカーの元社員で、広報部長と宣伝部長の双方を歴任した杉田三郎氏(仮名)に聞いた。

やらなければよかった会見

逆にやらなければよかったクローズドな社長会見後、日々動きがあり、フジ・メディア・ホールディングスの社長や元フジテレビ専務の関西テレビ放送社長、民放連会長でフジテレビの副会長など、いろいろな方がいろいろな立場で発言されています。

1月27日にフジテレビ社長が改めてオープンな形で会見を開くと発表されています。クローズドなイメージから急にいろいろな方が、「さすがにこれはまずい」と発言されるようになりました。本件については様々な方が社会的にも法的にも経営的にも発言をされていますので、私は広報部視点、宣伝部視点で思ったことを記します。

元広報部長の視点からみるといくつかの課題を感じました。

広報部は機能していたのか?

○広報部(含むIR)は常にメディアサイド、そしてその先にあるステークホルダー(視聴者なども)の立場での「説明責任」を経営に進言する必要があります。(秘書室を除き)他部門と比較し広報部は社長に進言しやすくなければいけません。フジテレビの場合はそういう風通しが悪かったのかもしれません。

○クローズドな会見後、様々な立場の方が発言されていますが、ここにも広報機能の課題を感じます。応えるべきは港浩一社長1人であり、対外的な言論統制を広報部が行えていない証拠です。そしてこれは推測ですが、普段のガバナンスでも「船頭多くして船山に登る」という状態をこの一大事に露呈しているように感じました。

○そもそも広報部が機能していたのかも疑問です。また法務部や監査役などの機能不全も残念ながら感じてしまいました。ただしそこは前述したとおり多くの船頭がバリアになっていたのかもしれません。今回の件はその経過、事実関連などを客観的第三者に調査を委ねるようですが、同時に社内のガバナンス、対外機能を改めて立て直す必要を感じました。

AC差し替えは必須の判断

次に元宣伝部長として。

○結論から言うと、CMの差し止め、AC差し替えは必須の判断だったと思います。75社以上ともいわれる会社が2、3日で結論を突きつけました。冠番組を中止するという判断も下ったようです。

すべては「クローズな会見」が決定打になったのですが、いま宣伝部が一番気にするのは「世論」です。そして「世論はSNSが大勢を占める」ということです。トヨタや生保など大手クライアントがCM停止を決定したとたん「A社はまだCMを続けるのか!」と即刻炎上します。自社の不祥事ではなくとも火の粉をかぶるのは明白で、各社宣伝部がすぐに結論に至ったのは必然的対応です。

4月以降のタイムセールスに多大な影響も

○そしてまもなく2月です。4月の番組改編に向けたセールスが始まっていると思いますが、現状ではスポットはもとよりタイムセールスにも多大な影響があると思います。もちろんタイムには限りがあるので、他局へシフトするのはそんなに容易ではないのですが、フジテレビのタイムを降りてWebなどへの出稿にシフトするクライアントがでてきてもおかしくありません。

○事態の急展開が考えずらい今、相応の期間スポット、タイムとも発注を控えるクライアントがほとんどになると思います。

今回の事案はいちタレントとフジテレビ社員数人(事実は不明ですが)に関わるトラブルが発端です。会社として隠ぺいした事実もプライバシーの保護など考えさせられることは多く、そんな容易な案件ではなかったとは思います。もちろん「体質」への疑問もありますが。

そしてなによりも大多数のまっとうな社員がいて、今たいへんな時期を迎えています。甘いと言われるかもしれませんが、27日の会見をきちんと行い、以降、日々説明責任を果たし、ガバナンスや社内体制の見直しを早急に行い公表し少しずつでも世の中の理解を得て一日も早く信用を取り戻すことに期待します。

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