近年増えつつあるKernzaビール、アップルレザー…代替資源の可能性を探る

ポートランドには数えきれないほどのクラフトビールのブリュワリーが存在しています。ここ最近スーパーマーケットに行くと、大麦、小麦以外を原料としたビールをしばしば、見かけるようになりました。以前からある、米やとうもろこしに加えて、多年生穀物で干ばつに強いとされる、Kernza(カーンザ)など。

限られた資源をどう代替していくか?ということを、事例とともに考えてみたいと思います。

多年草であるKernzaのビールを広めたパタゴニア

イメージ 商品 Hop worksによるKernzaのビール

Hop worksによるKernzaのビール

最初にKernzaのビールを世の中に広めたのは、パタゴニアでした。2016年ごろの話です。その頃からパートナーとして名前があがっていたのが、ポートランドのサステナブル・ブリュワリーのホップワークス・アーバン・ブリュワリー。

全米で初めて、B Corp(社会や環境に配慮している企業のための民間認証制度)を取得したブリュワリーとして知られ、サーモンセーフの活動や、メニューの食品廃棄を減らすように構成するといったこだわりなどを公表しています。現在は、ホップワークス以外も10以上のパートナーブリュワリーが、パタゴニアとともにカーンザのビールを発表しています。

イメージ 最初にKernzaのビールを世の中に広めたパタゴニアとのPOP

お店にはこんなPOPも!

ビール自体は嗜好品であるため、「それなら飲まなければいい」という前提はさておき、大麦が近年、気候変動による干ばつや大雨の影響で収穫量が減っていることから、多年草であるこのカーンザをはじめとする、代替する資源に注目が集まっています。

サボテン、パイナップル、りんご…レザーの代替資源も登場

動物の皮を原料とするレザーに関しても、植物由来のものが増えつつあります。マッシュルーム、コルクなどよく知られているところから、最近ではサボテン、パイナップルなども登場しているとか。

そしてりんご。この季節、日本人には馴染みがありますよね。友人が先日から青森のりんごをレザーに活用したバッグの販売をはじめました。もともとは祖父母が有していた建物と土地を活用して民宿をはじめ、その青森の土地に育っていたりんごの搾りかす(芯も皮もすべて無駄なく)を活用して、このレザーづくりをはじめたそうです。

イメージ 青森県産りんごの搾りかすから生まれた新しいシート素材「Adam」

青森県産りんごの搾りかすから生まれた新しいシート素材「Adam」

動物由来のもの、石油由来のものを植物に置き換えるという事例はとても多いです。プラスチックに関してはポートランドのスーパーマーケットを眺めると、コーンスターチ、胡桃の殻、ココナッツなどでつくりかえられた商品をたくさん見かけることができます。ポートランドに移住して、え、こんなものまで代替できるんだと思ったものが、絆創膏をバンブーパルプで置き換えたプロダクトでした。

放置竹林を活かす、紙における代替資源としての竹

そして、ここからはちょっと手前味噌ではあるのですが、私が関わっている竹の話を紹介させてください。絆創膏を発端に、「竹」という素材に着目しはじめたのは、5年ほど前のことです。そもそも、竹は「木」ではなく、稲科の植物であり、雑草を想像してもらえるとわかりやすいのですが、水も肥料もなくとも(望まないくらいに)よく育ちます。

この竹、日本では馴染み深いですが、近年、竹林を管理・整備する皆さんが高齢化し、過疎化の影響もあるでしょうが、管理が行き届かない竹林が日本全国に存在しています。さらに伐採しても運搬する道がなく、そもそも重たく運ぶのは重労働であり、伐採後も竹林にそのままとなっている場合も多々あります。これらの竹林が土壌を侵食したり、太陽光を遮ったりすることで、森林の生態に影響を与えていると言われ、「放置竹林」の課題として、知られるようになっています。

ここ最近では、若手の活動家の皆さんがいくつかの地域で登場し、竹林伐採を行い、経済的な価値を生み出し継続的な管理伐採を目指す活動をはじめています。そんな皆さんとご縁ができる中で、何か日本国内の竹を活用して、つくれないかな?と模索しはじめたのは数年前。今回、長野と山梨の竹を美濃和紙のメーカーの協力で和紙にして、封筒をつくってみることにしました。

イメージ 商品 bamboo letter

よかったら、クラウドファンディング中なので覗いてみてください。
https://for-good.net/project/1001538

このアドタイの読者の皆さんは、きっと商品開発やそれをプロモーションする仕事に関わっている方が多いはずです。いままで当然のように使っていた素材、原料が、そもそもどうやって育っているのか?どこから来ているのか?を問い直してみてはいかがでしょうか。

いま紹介した原材料の多くはアジア由来のものも多く、日本国内にも、まだ使われていない、面白い資源がきっとたくさんあるはずです。代替資源に目を向けることは、イノベーションのチャンスでもあり、リジェネラティブなプロダクトにつながっていくはずだと思っています。

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松原佳代(広報コンサルタント/みずたまラボラトリー 代表)
松原佳代(広報コンサルタント/みずたまラボラトリー 代表)

スタートアップの広報育成・支援を手がける「みずたまラボラトリー」代表。お茶の水女子大学卒業後、コンサルティング会社、出版社を経て、2005年に面白法人カヤックに入社。広報部長、事業部長を兼任したのち子会社カヤックLivingの代表取締役に就任。移住事業の立ち上げに参画。2019年、家族で米国ポートランドに移住。一方、2015年に自身の会社「みずたまラボラトリー」を設立し、広報戦略、事業開発、経営全般にわたる経験と実績を活かしスタートアップの広報育成と支援を展開。富山県出身。富山県の経営戦略会議ウェルビーイング戦略プロジェクトチーム委員も務める。

松原佳代(広報コンサルタント/みずたまラボラトリー 代表)

スタートアップの広報育成・支援を手がける「みずたまラボラトリー」代表。お茶の水女子大学卒業後、コンサルティング会社、出版社を経て、2005年に面白法人カヤックに入社。広報部長、事業部長を兼任したのち子会社カヤックLivingの代表取締役に就任。移住事業の立ち上げに参画。2019年、家族で米国ポートランドに移住。一方、2015年に自身の会社「みずたまラボラトリー」を設立し、広報戦略、事業開発、経営全般にわたる経験と実績を活かしスタートアップの広報育成と支援を展開。富山県出身。富山県の経営戦略会議ウェルビーイング戦略プロジェクトチーム委員も務める。

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