「南ちゃん」でおなじみ、宮崎の日本最南端スキー場復活で5年ぶりCM制作

イメージ 広告CMシリーズの主役「南ちゃん」とともに、町長やスタッフ、地元の人たちも多数出演

宮崎県にある日本最南端のスキー場、五ヶ瀬(ごかせ)ハイランドスキー場が2024年12月、3年ぶりに営業を再開した。

2022年9月の台風の影響によるもので、このタイミングに合わせてCM制作も2019年以来5年ぶりに復活。2010年代に少々際どい表現で話題を集めたCMシリーズの主役「南ちゃん」とともに、町長やスタッフ、地元の人たちも多数出演した。

CM本編は14話で約10分の構成。南ちゃんが「こう?こう?」と呼びかけながらスノーボードのフォームを見せるおなじみのシーンを町民たちとともに演じた。

地方CMならではの表現が注目を集めてきた「南ちゃん」シリーズ。この5年の社会の変化を踏まえ、いかに制作を進めたのか。

日本最南端だから「南ちゃん」

※※※※※

五ヶ瀬ハイランドスキー場は宮崎県の北部、大分・熊本に隣接する西臼杵郡五ヶ瀬町に1990年にオープンした。1998年から第三セクターが運営しており、福岡・熊本・宮崎・鹿児島を中心に度々テレビCMを出稿してきた。

広く話題を集める契機となったのは2013年。女性の胸元を大胆に映したCMを公開したことがきっかけだ。

当時から担当する電通九州の左俊幸さんによれば、複数の提案からこの企画に決めたのは当時の五ヶ瀬町長。少々大胆な表現で注目を集めなければならないほど、スキー場への来場者の少なさが深刻な課題となっていたためだ。九州のスキーヤーは広島に足を運ぶことが多く、左さんもCMを担当するまでその存在を知らなかった。

ただしこのCMは深夜帯限定のオンエアとなったため、翌2014年から表現を一新。ここから6年にわたり、日本最南端のスキー場にちなみ生まれた「南ちゃん」が主役のテレビCMシリーズが始まる。

南ちゃんとその恋人「テッちゃん」との掛け合い(2014)、恋人の二股問題(2015)、南ちゃんがスキー場で働き始め結婚(2016)、スキー場で働くスタッフの出演(2017)、客数減のため南ちゃんが都会に営業へ(2018)、南ちゃんの「引退宣言」(2019)などと展開しシリーズは終了。その後、2022年の台風被害でスキー場自体が営業中止に。

「だからこそ今シーズンの営業再開は大きなニュース。南ちゃんが復活するしかない、と夏ごろから企画が動き出しました」(左さん)。

一方で、この5年でメディア環境や表現面の制約も変化している。以前はテレビでCMを流していたが、今回はデジタルの配信のみに。14話のそれぞれの尺も自由に設定していった。

イメージ 広告CMシリーズの主役「南ちゃん」とともに、町長やスタッフ、地元の人たちも多数出演
イメージ 広告CMシリーズの主役「南ちゃん」とともに、町長やスタッフ、地元の人たちも多数出演
イメージ 広告CMシリーズの主役「南ちゃん」とともに、町長やスタッフ、地元の人たちも多数出演

シリーズ通して携わってきた左さんや制作スタッフは続投し、2020年に電通九州に中途入社した野中優介さん、2024年に新卒入社した須川朝絵さんも新たに加わった。

「過去のCMを知っている人、初めてCMを見る人の両方にリーチしなければいけないという難しさがあり、チームで議論を重ねました。中には実現に至らなかった演出もあります(笑)」と野中さん。

須川さんは宮崎県出身で、思い入れもひとしおだ。「地元では子どもから大人まで知らない人はいないCM。世の中の変化に合わせ、新たにインバウンドの切り口なども提案しました」(須川さん)。

「『美人の湯』ルッキズム的にいいの?」

イメージ 広告 11月からSNSで公開した、歴代CMの南ちゃんを集めた「帰ってくる前の南ちゃん」。
イメージ 広告 11月からSNSで公開した、歴代CMの南ちゃんを集めた「帰ってくる前の南ちゃん」。

11月からSNSで公開した、歴代CMの南ちゃんを集めた「帰ってくる前の南ちゃん」。

12月20日のスキー場オープンに先駆け、11月から過去のCM内容を用いたグラフィックをSNSで配信し期待を高めた。

12月に入ると、過去のCMと地元の人たちの声を交えた予告篇をSNSで公開。

12月からは「五ヶ瀬町の皆さんから」を予告篇として公開。

イメージ 広告CMシリーズの主役「南ちゃん」とともに、町長やスタッフ、地元の人たちも多数出演

イメージ 広告CMシリーズの主役「南ちゃん」とともに、町長やスタッフ、地元の人たちも多数出演

イメージ 広告CMシリーズの主役「南ちゃん」とともに、町長やスタッフ、地元の人たちも多数出演

スキー場のオープン日にもCM本編の撮影を実施し、急ピッチの編集を経て12月24日に全14話のCM本編をYouTubeに公開した。

注目は、本編に盛り込まれた「コンプライアンスが厳しいこのご時世で南ちゃんにこんなことさせられません!」「今の時代に『美人の湯』なんてネーミング、ルッキズム的にいいの?」といった直球のセリフだ。

「確かにかつてのような内容は難しい部分もありますが、思い切った表現ができるのが地方CMの面白さ。自ら先回りして問題を捉えてストーリーに組み込むことで、バランスをとっています」(左さん)。

イメージ 広告CMシリーズの主役「南ちゃん」とともに、町長やスタッフ、地元の人たちも多数出演
イメージ 広告CMシリーズの主役「南ちゃん」とともに、町長やスタッフ、地元の人たちも多数出演

CMには以前はインストラクターだったスタッフが副支配人となって登場、南ちゃんから恒例のビンタをされる展開も。

スキー場の営業は3月上旬まで。隣接する熊本に台湾の半導体メーカーの工場ができるなど周辺の人流が変わる中、新たにスキー場を知った人にも足を運んでもらいたいと期待を寄せる。

「制作者としてはもっと笑ってほしかったのですが(笑)、想像以上に『泣けた』『感動した』という声が多く届いていて驚いています」(左さん)。

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スタッフリスト

企画制作 電通九州、ランニング
CD+企画+C 左俊幸
企画+AD 野中優介
企画+C 須川朝絵
D(GR) 太田友之
Pr 新川昌明
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PM 山縣七海、溝部友也
PM+歌+NA 手島麻陽
演出 白澤龍一
撮影 田畑伸悟、安木寬剛(チーフ)、吉井素晴(2nd)
照明 山口拓郎、嶋村一秋(チーフ)
編集 米村知晃(オフライン+オンライン)
MA 岩下拓磨
録音 中島聖人
HM 朝海徳子
CAS 平出真一郎
CAS+ロケCRD+出演 長田慎司
AE 谷口優太、高村晃司
NA 森本七恵
出演 藤田可菜、五ヶ瀬町の皆さん



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