コピー逃亡記(2回目)(文・嶋野裕介)

東京コピーライターズクラブ(TCC)が主催する、コピーの最高峰を選ぶ広告賞「TCC賞」。その入賞作品と優秀作品を収録したのが『コピー年鑑』です。1963年に創刊され、すでに60冊以上刊行されています。
広告クリエイターを目指す人や駆け出しのコピーライターにとっては、コピー年鑑は憧れの存在であり、教材であり、自らを奮い立たせてくれる存在でもあります。TCC会員の皆さんは、コピー年鑑とどう向き合ってきたのか。どう活用しているのか。今回は、2020年度のTCC新人賞を受賞した嶋野裕介さんです。

私はいまTCC年鑑から逃げている。

最初に逃げたのは2014年頃。
全然獲れない新人賞に嫌気がさし、コツコツ続けていた写経を止めた。

もう一度年鑑と向き合い直したのは2019年から。CDとしてコピーライターのみなさんとちゃんと対話できるようになりたいと、また勉強を再開した。そしたら運良く新人賞も取れた。
でも、2022年から現在まで再びコピー年鑑から(コピーから)逃げている。

ACCは毎年、全部門を見ている。
SUPER BOWLのCMもすべてチェックしている。
Cannes Lionsのアワードムービーなら何時間でも観ていられる。
でもコピー年鑑からはどうしても逃げてしまう。
会社のロッカーには新品のまま眠るコピー年鑑が何冊もある。
コピーは大好きなのに。

「自分はコピーで成功するタイプじゃないし」
「カンヌの方が新しそうだし」
「ACCの方が今の仕事に活用しやすいし」
そんな言い訳をしながら、
でもまだどこかコピーを諦めきれないからこそ、ページをめくれずにいる。

このコラムを書くため、久々にコピー年鑑を手に取った。
重い。
物理的にも、精神的にも。

意を決して開く。
ぱらぱらとめくる。

「うわ、すごっ……」

今さらだが、やっぱりすごい。
商品や企業を愛らしく見せる言葉が、次から次へと並んでいる。
最終審査員のみなさんの審査評は、もはや哲学書のようだ。

「……閉じるか」

逃亡記録、継続中。

※自分への戒めとして、今日から毎日20分ずつ読むことを誓います。

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嶋野裕介(しまの・ゆうすけ)

電通 zero クリエーティブディレクター

マーケ、営業を経てクリエイティブへ。主な仕事に「サントリーマスターズドリーム『なぜ、そこまでやるのか。』」「BOSS×ゴジラシリーズ」「BOSS×ウマ娘(担当者K/タンタンタケユタカ)」「一緒にやろう2020」「#金曜日の新垣さん」「3cm market」「ぷよりんご」など。『なぜウチより、あの店が知られているのか?』を宣伝会議より出版。TCC会員。

東京コピーライターズクラブ(TCC)
東京コピーライターズクラブ(TCC)

東京を中心に日本全国で活躍するコピーライターやCMプランナーの団体。毎年、前年度に実際に使用された広告の中から、優秀作品を選出。その制作者を「TCC賞」受賞者として発表し、受賞作品のほか優秀作品を掲載した『コピー年鑑』を発行している。TCC新人賞審査に応募し、新人賞を受賞することで入会資格が得られる。2024年度の編集委員長は、尾形真理子氏。『コピー年鑑2024』の詳細はこちら

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東京を中心に日本全国で活躍するコピーライターやCMプランナーの団体。毎年、前年度に実際に使用された広告の中から、優秀作品を選出。その制作者を「TCC賞」受賞者として発表し、受賞作品のほか優秀作品を掲載した『コピー年鑑』を発行している。TCC新人賞審査に応募し、新人賞を受賞することで入会資格が得られる。2024年度の編集委員長は、尾形真理子氏。『コピー年鑑2024』の詳細はこちら

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