二次流通市場をけん引するメルカリは、ドコモとの提携をマーケティング施策にどう生かしてきたのか。メルカリ 執行役員 COO Japan Regionの長利一心氏とJP Online Marketing Specialist/Managerの清水博昭氏、そしてNTTドコモ カスタマーサクセス部 アライアンス戦略担当部長の真柴智宏氏に聞いた。
あらゆる面でドコモがベストパートナーだった
長利:メルカリがドコモさんと業務提携を結んだ主な目的は、両社が持つIDの連携による顧客基盤の拡大や、フリマアプリ「メルカリ」とポイントプログラムの連携、スマホ決済サービスの連携などです。提携を発表した2020年当時は多くの決済サービスが登場し、すでに淘汰が始まりつつある状況で、他社とのパートナーシップの必要性を感じていました。同時にポイントプログラムとの連携も検討していたため、パートナーとしてご一緒させていただくことになりました。
メルカリ 執行役員COO Japan Region 兼 VP of Trust & Safety 兼 VP of Customer Service 長利一心 氏
真柴:ドコモとしては、オンラインの各種サービスを展開する競合企業がフリーマーケットやオークションといった二次流通のビジネスに進出しているなかで、二次流通のマーケットリーダーであるメルカリ様と組むことによって、ナンバーワンのプラットフォームがつくれると考えました。スマホ決済サービスについてもメルペイと連携することで、中小規模のdポイント加盟店の開拓を強化していきたいという想いがありました。
ID連携を含む業務提携で、新たなデータマーケティングの基盤構築を図る
リーチできなかった人々と接点が持てる
清水:実際に連携がスタートして、ドコモさんの「dポイント」「d払い」が使えるdアカウント経済圏の大きさを実感しました。メルカリIDとdアカウントを連携したお客さまには、そのリワード(報酬)として通常は300ポイントを進呈しているところを、一時的に500ポイントとしたことがあったのですが、それによって連携するお客さまが増加したのです。現在、両アカウントを連携しているIDは1000万を超えています。
メルカリIDとdアカウントの連携がお客さまにもたらす最大のメリットは、メルカリのマーケットで購買する際に、dポイントの獲得や利用ができるようになること。データからは、連携初月に購買の平均単価が上がりやすいという傾向が見えており、dポイントが獲得できる、利用できるといったことが直接的に購買につながっていると感じています。ただ、その後も継続していただくメリットをどのように見せていくかということは、これから取り組むべき課題と考えています。
メルカリManager JP Online Marketing Specialist 清水博昭 氏
真柴:すでに1000万人を超えるID連携者を両社でトラックできるようになっているので、その方々に新しいバリューをいかに提供し続けるかは重要なテーマです。それと同時に、この基盤を新たな連携事業者に に活用してもらうといった選択肢も考えられます。次の展開について議論していくフェーズに入ってきたのかも知れません。
長利:継続という点では、dアカウントを通じてシニアの方々の流入があるので、そうした方にメルカリを使い続けていただくこともテーマのひとつです。
我々がアプリでリーチできなかったシニア層と接点が持てるというのは、非常に魅力的なこと。そうした方々の継続利用のために、ドコモショップの店舗を借りてお客様にメルカリの使い方をレクチャーするメルカリ教室を開催し、そこでひとつのコミュティを形成していただくといったように、新しいアプローチでお客様を育てていくことも合わせ技で必要なのだろうと考えています。
真柴:以前、ドコモショップの店頭で行っているシニア向けのスマホ教室をメルカリ教室として実施いただきました。お客様にメルカリのアプリのダウンロードとID連携を促すという取り組みを行い、多くの方にダウンロードいただきました。
NTTドコモ コンシューマーサービスカンパニー カスタマーサクセス部 アライアンス戦略担当部長 真柴智宏 氏
「引っ越し」などのライフステージ変化の予兆把握は大きな機会に
長利:もうひとつご提案をもとに実践したことに、お客様のアプリのインストール状況を参考にしたターゲティングがあります。
たとえば、メルカリのアプリは入れていないけれど、他社のフリマアプリは使っている方であれば、少なくともオンライン上のフリマで物を買う、出品するといった基本のハードルはすでに越えているわけです。それは当社にとってチャンスです。逆に、他社も含めてフリマアプリが一切入っていないという方であれば、それを前提としたアプローチを考えることができる。そうしたことも含めて、直接的なターゲティングにとても有用でした。
ID連携を促すさまざまなキャンペーンを実施
清水:最近は、メルカリのお客さまのモーメントを押さえて、出品や購買をプッシュするといったことにも取り組んでいきたいと考えています。たとえば、最近住宅系のアプリをダウンロードしていること、位置情報から電気屋さんに頻繁に出入りしているなどの傾向から不要品の発生しそうな予兆を読み取り、そのタイミングで接点を取るなどの機会創出を行っていきたいと考えています。
真柴:ドコモデータを活用した予兆把握は、私たちも大きなポテンシャルを感じている領域です。大手家電量販店のケースですが、ドコモの保有するデータを分析して「近いうちに引っ越しをする」ユーザーの特徴を抽出。オンライン・オフラインの両側面からユーザーの過去の行動と現在の行動を比較し、位置情報データを活用した滞留点推計を行い、過去一定期間で実際に引っ越したユーザーの事前行動を抽出しセグメント化しました。その上で引っ越しする可能性の高いユーザー向けに店舗来訪のクーポンと広告を配信したのです。
すると、クリック率が媒体平均の3倍、一般層と比較しても2倍弱のクリック率を記録しました。キャンペーン特典利用者の8割弱が実店舗で購入し、リアル店舗への誘導を実現できました。
ライフステージ変化などの予兆を把握することが新たなビジネスチャンスを捉える
長利:引っ越しなどのモーメント捕捉は私たちも非常に重視しています。不要なものを整理するタイミングですが、もしかしたら他の人にとって役立つものがあるかもしれません。まだ十分使えるものを捨てるのはもったいないですし、環境負荷を高めることにもつながります。メルカリにとっては「出品」を提案する良いタイミングです。これにより、リユースを促進し、資源の有効活用につながります。
ドコモが持っている行動パターンのデータから、その人のライフイベントを予測することができるので、タイミングを捉えて出品していただくよう促していくことができれば、お互いにとってメリットが生まれると考えています。
真柴:ユーザーにとっての出品がメルカリにとっての「仕入れ」であり、「品揃え」につながるわけですね。いかに出品を促すかは重要なことと思います。
長利:出品を促進できるベストタイミングである引っ越しのような行動をとらえる事は重要ですが、こうした行動を予兆することは僕らではできないので、今後もドコモデータによる予兆への活用に期待しています 。
真柴:ドコモのデータを活用すれば、スマホやゲームソフト、洋服、ゴルフクラブなど、二次流通のマーケットで多く流通するものを手放すタイミングが見えてきます。そうしたお客様のモーメントを我々が捕らえて、一緒にマーケットをつくっていけたらと思います。
長利:今は機械学習やAIも非常に進化しているので、さまざまなデータを取り込んで施策のトライ&エラーを繰り返し、成功事例やノウハウを積み上げていく必要があります。そのためには正確かつ大量のデータやそれを活用するプロダクトが必要で、ドコモとの連携が活きてくると大きな期待を寄せています。
マーケティングチーム以外にも、メルカリの研究開発チームとアナリティクスチームが、ドコモのデータ活用専門のチームと、データや技術を共有し合いながら新たな活用機会を模索しています。またドコモ内のプロダクトとも連携し、こうした取り組みからも新たな発見が生まれるかもしれません。
真柴:当社は、お客様の同意を得た上で、安心・安全なデータ活用環境を提供しています。このデータを活用し、さまざまな企業様を支援していきたいと考えています。今回お話ししたように、最適なタイミングでのコミュニケーション機会を提供することで、お客様にとっての最適な顧客体験(例:お気に入りのお店やサービスから自分に合ったお得な情報が届く)を実現し、お客様と企業の最適な関係をサポートし、より良い顧客体験を提供していきたいと考えております。
メルカリ×ドコモ 連携のポイント
・両社のIDを連携しているユーザーは1000万を突破。新たな顧客基盤の創出とともに今後の展開の可能性が広がっている
・今後もさらなるメルカリユーザーの獲得を見据え、ID連携に留まらない、ドコモデータの活用を模索
・ドコモの持つ約1億もの顧客基盤を活用し、生活者のライフステージ・スタイルの変わり目を高い精度で予測してコミュニケーションをすることができる
・ドコモショップなどを介してメルカリ教室などのリアルな顧客接点を持つことができる
・ドコモデータは、ライフステージの変化をとらえる新たなユーザー可視化の可能性を広げる鍵となる
・ドコモの持つ顧客基盤が、さまざまな事業者をつなぐ「ハブ」へと成長しつつある。そうしたネットワークを生かすさまざまなマーケティングソリューションを保持しており、今後の発展が期待される
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