誰も聴いたことのない音が購買を動かす 「AI作曲」が変えるマーケティング戦略

生成AIの台頭により、業務の効率化が実現するとともに、メディアの在り方や、企業と人の接点の作り方をも変えるような大きなインパクトが予測されます。マーケターは、これらの技術をどのように受け入れ、業務に活かしていけばいいのでしょうか。今回は、音楽生成AIについて、富士通の山根宏彰氏が解説します。
 
※本記事は月刊『宣伝会議』5月号の連載「AI×マーケティングで未来を拓く」に掲載されています。
山根宏彰氏

富士通
研究本部 人工知能研究所 研究員

日常生活にも浸透するBtoC向けAI技術

生成AI(人工知能)は一般消費者の生活に深く溶け込み、BtoC分野でもさまざまなサービスが登場している。今回は、その中でも特に音声関連の音楽生成AIに着目し、消費者の日常での利用事例を紹介しながら、マーケティング観点での購買行動・ブランド認知への具体的影響を紹介、解説する。

音楽生成AIを活用すれば、誰もが音楽クリエイターに

近年、登場した音楽生成AIは、テキストやメロディの入力から楽曲を自動生成し、一般消費者でも手軽に音楽制作ができるようにしている。AIが音楽分野にエポックメイキングな影響を与えた事例についてだが、LSTM(長短期記憶)を用いた音楽生成の代表的な例として、ケンブリッジ大学のLiangらが開発したBachBott(2017 ISMIR)が挙げられる。

BachBotは深層LSTMを用いることでバッハのコラール(四声コーラス)のスタイルで楽曲を自動作曲するモデルである。このBachBotが生み出す楽曲はバッハの作風に非常に近く、人間による大規模な聴取テストでは、聴衆がBachBotのつくった曲とバッハ自身の曲を聞き分ける正答率がランダム推測と比べてわずか1%程度しか上回らないという結果が得られた。

その後、Google Brainの「Music Transformer」やOpenAIのMuseNet(2019)、同社のJukebox(2020)などの発展を経て、歌詞付きの歌唱まで含む楽曲を様々なジャンルやアーティスト風につくり出すことが可能になった。

さらに拡散モデル(Diffusion)なども音楽生成に応用され始めたことで、GoogleのMusicLM(2023)はテキスト記述から高い忠実度で音楽を生成できるモデルとして登場している。

こうした技術進化に伴い、新しい音楽生成サービスも登場している。その代表例ともいえるのが、「SunoAI」だ。テキストからフル楽曲を数秒で生成できるサービスであるSunoは2023年末のMicrosoftとの提携もあり知名度が上昇し、最も注目されるAI音楽ジェネレーターのひとつとなった。2024年には累計ユーザーが1000万人を突破し、プロの音楽家から初心者まで、幅広い層がオリジナル曲作りに活用している。無料プランでは1日10曲まで生成可能だが、初回利用者の約半数がその日の上限まで曲をつくるほど熱中していると報告されている。

実際に、YouTube上でもAI生成で作曲した楽曲が膨大にアップロードされるようになってきている。例えば、例えば、2024年秋にPlay Musica氏がアップロードしたAI作曲を謳う「AIが奏でる80s Style Jpop」のミュージックリストがある。筆者自身も収録曲「めぐる」を聴いてみたが、非常に完成度が高く、歌詞やBGMを含めて再現された昭和のポップスの切ないムードに浸ってしまった。興味のある読者の方はぜひ聴いてみていただきたい。

…この続きは4月1日発売の月刊『宣伝会議』5月号で読むことができます。

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