顧客起点のブランド戦略強化
日産自動車は、新たな経営体制への移行に伴い、ブランドコミュニケーションを刷新した。顧客起点のコミュニケーションを強化することで、巻き返しを図る。ブランドアンバサダーには俳優の鈴木亮平を初起用し、新テレビCM「心にグッッッッッっとくるクルマ」篇を4月22日に公開した。
4月22日に実施した新ブランドコミュニケーション発表会
日産は、業績の悪化が課題となっている。2024年度上期の連結売上高は、前年同期比で791億円減少し、5兆9842億円となった。事業の安定化と適正化を目指し、グローバルでの生産能力を20%削減し、人員数も9000人削減した。また、内田誠社長兼CEO(当時)は同月より報酬の50%を返上した。
2024年末に本田技研工業(ホンダ)との経営統合を検討し、12月には経営統合に向けた検討に関する基本合意書を締結した。両社の完全親会社となる共同持株会社を設立し、両社をその完全子会社とする計画であった。
しかし、2025年2月に経営統合の見送りを発表。「電動化時代に向けて変化の激しさを増す市場環境においては、意思決定および経営施策の実行スピードを優先することが重要であり、その観点から経営統合を見送ることが適切である」と判断したという。
こうした中、日産は4月1日付で経営体制を刷新した。内田氏が退任し、社長兼CEOにイヴァン・エスピノーサ氏が就任。意思決定の迅速化と効率化を図るため、従来の執行役員は執行職(管理職層の最上位級)に移行し、ポジションも約2割削減する。組織のスリム化と、階層のないフラットな執行職体制への移行を進めることで、一人ひとりの責任範囲を拡大し、意思決定のスピード向上を目指す。各地域への権限移譲を進め、組織内の役割と責任の明確化も図る。