2024年2月に発売された「オーマイプレミアム もちっとおいしいスパゲッティ」は、わずか1年で累計5000万食を突破し、乾燥パスタ市場で大きな注目を集めている。従来、価格が重視されがちな乾燥パスタ市場で、ニップンは“麺そのもののおいしさ”にフォーカス。のべ6万人以上の消費者調査や200種以上の試作を重ね、「もちっと」食感を実現した。開発から販促まで「消費者起点」を貫いたヒットの背景に迫る。
*1 1.5mmと1.8mmの2品計。*2 1.5mmは過去10年間の乾燥スパゲッティ新商品の中で販売金額No.1(発売後6カ月)2013年10月~2024年9月に、全国KSP-POS(食品SM)にて初登場後6カ月の金額を基に自社集計。
年間目標を3カ月前倒しで達成 乾燥パスタ界に新生
━━「オーマイプレミアム」は冷凍パスタのイメージがありますが、乾麺パスタの「もちっとおいしいスパゲッティ」も販売しています。
石倉:「オーマイプレミアム もちっとおいしいスパゲッティ」は、2024年2月に発売した乾燥パスタです。「オーマイプレミアム」ブランドは2003年に冷凍パスタブランドとして展開を開始しました。大きな具材たっぷりの本格的なおいしさが好評いただき、現在冷凍パスタブランドNo.1*³となっています。
一方、乾燥パスタについては、これまで「オーマイ」ブランドを主軸に展開していましたが、ブランドとしてNo.1ではなく、シェアには課題がある状態でした。ニップンとして、乾燥パスタでも、消費者により選んでいただくブランドを目指すため、今回は冷凍パスタで「おいしさ」で選ばれている「オーマイプレミアム」から、乾燥パスタを発売しました。
社内的にマーケティングを強化しようという動きがあったことも、開発・発売を後押ししましたね。2022年10月から、マーケティング推進室を新設し、「消費者起点」での商品開発を推進してきました。その中で、「もちっとおいしいスパゲッティ」の発売前の2023年秋には、「オーマイプレミアム」をより消費者に支持されるブランドにすべく、“「いつも」を「すごい!」にするパスタ。”をブランドメッセージに刷新し、新たなブランド戦略を実行してきました。
*3 インテージSCI(15~79歳)冷凍パスタ市場 2019年4月~2024年10月 ブランド別累計購買金額ベース
(左から)
ニップン
食品事業本部 加工食品部
販売促進チームマネジャー
三澤英絵氏
2002年入社。業務用商品の研究開発、家庭用商品の企画開発など開発業務を経て、2011年に調査・データ分析業務に異動、全社的なセールスサポートを行う。2024年より現職にて、家庭用グロサリー商品の販促業務を担当。
ニップン
マーケティング推進部
ブランド開発チームマネジャー 兼
広告・PRチームマネジャー
石倉あすみ氏
2007年入社。家庭用商品の開発を14年間実施し、2021年に自社EC事業を実施する営業企画室へ異動。その後、2022年10月に新設されたマーケティング推進室に異動し、現職。オーマイプレミアムブランドのブランド開発・広告・PR業務を担当。
━━その「もちっとおいしいスパゲッティ」が発売以来、好調だと聞いています。
石倉:2024年2月に発売してから、累計で5000万食を突破しました(2025年1月現在)。年間販売目標も3カ月前倒して11月に達成するなど、発売以降、右肩上がりで推移しています。
三澤:また、直近10年間に発売された700種類以上の乾燥スパゲッティ新商品の中で、発売後6カ月の売上が最も高い商品となったことも良い成果だと思っていますね*⁴。乾燥パスタ業界は定番商品が強い傾向にありますが、その強い定番品に迫る勢いで販売を伸ばせていることは、大きな成果だと考えています。
*4 1.5mmは過去10年間の乾燥スパゲッティ新商品の中で販売金額No.1(発売後6カ月)、2013年10月~2024年9月に、全国KSP-POS(食品SM)にて初登場後6カ月の金額を基に自社集計。
「もちっとおいしいスパゲッティ」のテレビCM。「もちっとした食感」を訴求するシズル感にこだわっている。
開発から価格設定まで一貫してこだわった“消費者起点”
━━なぜ、「もちっとおいしいスパゲッティ」はここまで好調なのでしょう。要因として考えていることはありますか。
石倉:好調の要因にも開発背景が関係すると考えています。先ほど述べたとおり、乾燥パスタ業界はブランドスイッチが発生しづらく、ゆで時間や麺の太さで選ばれることが多いカテゴリです。「おいしさはどれも変わらない」と思われていることも消費者調査からわかりました。
三澤:乾燥パスタはソースと一緒に食べられるので、パスタのおいしさはソースで決まると思われていることがほとんどだったのです。
石倉:「もちっとおいしいスパゲッティ」においてはこれまで以上に「消費者起点」を意識して開発を進めることにこだわりました。2022年10月にはマーケティング専門の部署を初めて設置。それによって、消費者起点により磨きをかけていく方針で動いているのが今の当社です。
三澤:「消費者起点」を反映した商品開発で、具体的に実施したのは徹底した消費者調査です。「日本人が好きなパスタのおいしさ」を検証しましたね。のべ6万人以上に調査を行って、「おいしさ」を追求しました。そこで導き出されたのが、「もちっと」食感です。
石倉:試作品の数は200通りにのぼりました。原材料は水とデュラム小麦のセモリナ(国内製造)、小麦粉の3つだけなのですが、配合によって食感・味わいなどがそれぞれ変わってくるのです。お客さまが求める理想のおいしさにたどり着くために、何度も試作を重ねました。
━━乾燥パスタは、価格で選ばれる方も多いという話がありました。しかし「もちっとおいしいスパゲッティ」は他商品と比較すると高い印象です。価格はどう設定したのでしょうか。
石倉:たしかに大容量かつ低価格の商品と比較すると、やや高い売価だと感じられるかもしれません。しかし、この価格設定にも「消費者起点」を徹底的に取り入れています。というのも、試食調査の際には、「この味であれば、この価格で納得して買えるか」ということもヒアリング項目に入れていました。価格に納得してもらえるまで、おいしさにこだわっていました。
バイヤーに伝わった“ニップンの本気度”
━━直近10年間で、発売6カ月の売上が最も高いパスタになったとお聞きしました*4。初速が好調だったということは、新規獲得のプロモーションも注力したのではないかと推測します。
石倉:「もちっとおいしいスパゲッティ」では、まずはテレビCMで認知獲得を図りながら、デジタル広告でも狙った生活者に広告をあてるという二軸で展開しました。テレビCMでは、―――
本記事の全文は、月刊『販促会議』4月号本誌 、もしくはデジタル版(ご購読が必要です)にてお読みいただけます。
