サブスク時代の新・営業論。「SaaS営業力」に必要な3つの視点

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近年、企業に急速に普及し注目を集めているSaaS(Software as a Service)。クラウドを介した提供形態は、導入の容易さ、コスト効率、拡張性といったメリットをもたらし、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を強力に後押ししています。

市場の変化は、営業の役割にも変革を与えています。従来のようにプロダクトの個々の機能による差別化や価格訴求だけでは、継続的な収益を生み出すことが難しくなっています。そのような中、企業に求められているのは「売る」ための営業力ではなく、「顧客企業の課題を解決し、継続して選ばれ続ける」ための営業力=「SaaS営業力」です。

本記事では、従来の営業力とSaaS営業力の違いや、SaaS営業力をどのように身につけるかを、Amazon Japanのマーケティング統括本部長などを歴任し、現在はSaaSをはじめとする多くの業界で企業の成長戦略を支援するコンサルタント、紣川謙(かせがわ けん)氏が解説します。

日本市場に広がる「SaaS成長の余白」

市場の規模と成長余地という観点から、SaaSには大きな事業機会があります。データによれば、日本のSaaS市場は2023年時点で約1.4兆円。これは世界市場の約5%に過ぎませんが、年平均成長率は18%と高い水準を維持しています。また、SaaSのソフトウェア市場における浸透率は日本が米国より8ポイント低く、今後の成長余地の大きさが示されています。

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SaaSは、提供する価値の対象範囲によって、大きく2つに分類されます。

● ホリゾンタルSaaS
業界を問わず、特定の業務課題(会計、人事、マーケティングなど)を解決します。例として、米国ではAdobe、Salesforce、日本ではSansan、ラクス、サイボウズなどが挙げられます。市場規模が大きく、知名度が高いサービスが多い反面、競争も激しい領域です。

● バーティカルSaaS
特定の業界(建設、医療、飲食、小売など)に特化した課題解決を行います。Shopify(EC業界向け)などが有名です。業界特化型のため、ホリゾンタルSaaSほど知られていないユニークなサービスも多く存在します。日本企業にとっては、独自の強みを発揮しやすく、今後の成長が特に期待される分野です。

ホリゾンタルSaaSには、サイボウズのように、パッケージソフト販売からクラウド事業へ舵を切り、現在では売上の約9割をSaaSが占めるまでに成長した例もあります。

近年、特に注目されるのが、医療・建設・製造など、これまでデジタル化が進みにくかった業界におけるバーティカルSaaSの台頭です。実際に、老舗旅館のオペレーション改革を起点とした「陣屋コネクト」や、建設・プラント業界へ展開する「スパイダープラス」など、日本特有の業界課題を解決するSaaSへの期待が高まっています。

SaaSを提供し成功している企業は、SaaSがもたらす自社・顧客双方のメリットを活用し、顧客とWin/Winの関係を築いているのが特徴です。営業を単なる売上獲得の手段とするのではなく、顧客の課題を理解し、解決する機会と捉えることも重要です。顧客の課題を他社には無い独自の方法で解決することで、事業の可能性が広がります。営業効率・利益率が高い企業は例外なく、ユニークな解決策を提供しています。

「売る」から「使い続けてもらう」へ

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SaaSは継続課金型のビジネスモデルであるため、導入後いかに解約されずに使い続けてもらうかが重要です。むしろ、顧客がサービスを導入してからが本当のスタートとも言えます。顧客がサービスを使いこなし、その価値を実感し続けることで、初めてビジネスとして成立するのです。継続利用を実現する仕組みが無いと、「新規顧客を獲得しても総顧客数が伸びない」「アップセルに結びつかない」といった課題に直面してしまいます。

SaaS営業成功のトライアングル「提供価値」「顧客体験」「カスタマーサクセス」

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このように、SaaSビジネスにおける営業力は、従来の営業力とは求められるものが異なります。成功要素として、主に以下の3つのポイントが挙げられます。

1.提供価値
導入の決め手として、最も多くの企業が上げるのが機能と価格です。どちらも提供価値を構成する大切な要素ですが、機能は価値を実現する手段に過ぎません。提供価値を明確に伝えるため、顧客が抱える根本的な課題は何か、提供するSaaSを導入することで「何ができるようになるのか」を顧客視点で語ることが重要です。

2.顧客体験(CX)
導入前の検討段階から、導入後の活用、そして継続利用に至るまで、一貫して期待を上回る顧客体験を提供することが大切です。特に、シンプルで直感的な操作性や専門知識を必要としない使いやすさは、顧客満足度や継続利用に直結する重要な要素です。

3.カスタマーサクセス
顧客の成功を能動的に支援する「カスタマーサクセス」は、SaaSビジネスにおいて極めて重要な概念です。営業担当者も、導入後の顧客の成功を実現するため、カスタマーサクセスチームと密に連携しながら、オンボーディング支援や活用提案を行う必要があります。SaaSを解約した理由として39%の企業が「カスタマーサクセスの対応に満足できなかった」ことを挙げています。

SaaS営業力を鍛える、SaaS成功のための「12の問い」

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これらの成功要因を踏まえ、自社の営業活動を客観的に評価し、改善点を見つけ出すために、以下の「問い」について考えてみることが極めて有効です。

1. 顧客の問題を徹底的に深掘りし、根本的な原因に解決策を提示できているか
2. ユニークな価値を提供しているか
3. 顧客が感動する価値を得られるか
4. SaaSならではの素晴らしい体験を提供できるか
5. 顧客のリスクを減らし、意思決定をシンプルにしているか
6. 顧客体験を研ぎ澄まし、「真実の瞬間」をとらえることができるか
7. 顧客の成功を定義し、アクショナブルな指標で評価できているか
8. 個々のニーズをとらえ、顧客を動かす方法はあるか
9. 顧客軸でデータを活用できているか?
10. サービス設計の段階から顧客の成功を想像できているか
11. トップマネジメントを巻き込んだ推進体制はあるか
12. 顧客も社員もワクワクするようなビジョンや理念はあるか

上記の1~6は提供価値・顧客体験の向上に、7~12はカスタマーサクセスの実現につながる問いです。これらの問い一つ一つ向き合い、自社の現状を分析し、具体的なアクションに繋げていくことで、SaaS営業力の強化に繋がります。

LTVを最大化させるために

SaaSビジネスの収益モデルにおいては、LTV(顧客生涯価値)の最大化がカギを握ります。LTV最大化に直結するのが顧客退会率(チャーンレート)の低減であり、それを実現するのがカスタマーサクセスの重要な役割のひとつです。月間収益5万円、限界利益率40%のSaaSを前提としたシミュレーションによれば、年間退会率が40%から10%に改善されることで、平均継続期間は2.5年から10年に、顧客生涯価値は60万円から240万円へと、それぞれ4倍に増加します。このシミュレーションは、新規顧客獲得に加えて既存顧客の維持・育成がいかに重要かを示しています。

効果的なカスタマーサクセスを実践するためには、勘や経験だけに頼るのではなく、データに基づいたアプローチが不可欠です。「顧客の成功」を具体的に定義し、それを測るための適切なKPI(特に先行指標となるヘルススコア)を設定しましょう。ヘルススコアの設計においては、「アウトプット指標との相関・因果関係」「顧客視点」「アクショナブル・コントローラブル」「即時性」といった条件を満たすことが理想です。指標を単に追うだけでなく、指標から「何が起きているのか」を読み取り、迅速に解決策を実行することがカギです。

成功しているSaaS提供会社の事例も、顧客の問題・ニーズを解決し、顧客の成功を実現することの大切さを示しています。営業担当者は、提案段階からカスタマーサクセスの活動と連携することが欠かせません。

これらを踏まえた、具体的なフレームワークやナーチャリングの手法、商談ポイント等は下記の講座で紹介しております。SaaS営業力を鍛えたい方は、ぜひチェックしてみてください。

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紣川 謙(かせがわ けん)氏

デジタル戦略・マーケティングコンサルタント
株式会社Customer Perspective代表取締役
事業構想大学院大学 事業構想研究所 客員教授
武蔵野大学データサイエンス学部客員教授

スタートアップから東証プライム上場企業まで様々な企業をアドバイザーとして支援。SaaS/サブスクリプション事業の支援多数。エンジェル投資家としてSaaSを提供する複数のスタートアップ企業に投資。前職ではアマゾンジャパンの経営メンバー、バイスプレジデントとしてコンシューマー・マーケティング統括本部長、プライム統括事業本部長を歴任。


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