アメリカでは季節の節目にはしばしば「ブロックパーティー」が開かれます。たとえば、春のイースター。そして夏休み最後の週末。公共の道路を、住民以外の車は進入できないように通行止めをして、その区画(2ブロックぐらい)の住民が飲み物や食べ物をポットラック形式で持ち寄り集うイベントが、ブロックパーティーと呼ばれるものです。
私の住むブロックでは、年に1〜2回「ミュージックパーティー」という名のブロックパーティーが開催されます。先日ちょうど、そのパーティーが開かれたこともあり、今回のテーマはブロックパーティーと地域共助、そして地域コミュニティのレジリエンスについてです。
裏のおじさん主催のミュージックパーティー
我が家の裏庭に隣接する家のおじさんが音楽好きで、ギターにピアノに歌にと、よく裏から音楽が聞こえてきます。70年代のロックが我が家の子どもたちにとっても耳馴染みになるぐらいの頻度で、仲間とセッションをしています。その仲間たち、そして近隣のお友だちバンド、5〜6バンドが順に屋外でライブをしてみんなにお披露目するのが、毎年開かれるこのミュージックパーティーです。
我が家の右隣の家の庭が道路に面しており、DIYでこしらえられたような(隣のおじさんはDIYが趣味)石段の舞台があります。そこがステージとなり、当日はドラムセットに音響設備も登場。どこからこのミュージシャンたちはやってきたのか?と思うぐらいになかなかしっかりとしたライブが毎回開かれます。
ポートランドの交差点は通行止めに。
道路は10〜20メートルぐらい、2区画ほど朝から閉鎖されます(早めの夕方からスタート)。もちろん、うちは目の前が会場になるのですが、どうしても車を出さなければならない時もあるので、そんな時は道路封鎖を示す看板を自分で移動させて出ていきます。
机がいくつか設置され、ポットラックで家からお料理やケーキや飲み物を持参してみんなが好きに食べられるようにします。あとは、家から自由に椅子や飲み物、子どもたちは道路へのらくがき用のチョークなどを持ってきて、夕刻のミュージックパーティーを楽しみます。
このミュージックパーティーは近所の皆さんと話をするとてもよい機会になります。右左、裏、そして向いとその左右ぐらいは(一軒家でアメリカなので一区画が大きいです)日常でよく顔を合わせたり、話したりもしますが、その奥、もう少し離れてくると、家族構成やその家族の詳細はわからなかったりします。
全部で20ぐらいのブロックにある家の人たち(そして時たまその友人知人)が、ふらっと出てきて、楽しむので、そこで初めて顔がわかるということもあります。アメリカは日本のように、近所に引っ越しの挨拶はしないので、新しく引っ越してきた人とは初めての挨拶ということも起こり得ます。
道路を勝手に閉鎖するのは、OKなのか?!
一方で、「道路を勝手に閉鎖するのは、OKなのか?!」というのは気になりますよね。私もアメリカに来たばかりの頃、日常的に地域の人が閉鎖する道路に、いいのかな?と思っていました。お隣のおじさんが閉鎖しながら冗談まじりに「警察には内緒ね!」と言っていたこともあり、これは非公式なのか、グレーなのか?と思っていたところ、なんと、ポートランド市にブロックパーティーの申請をするページがありました!
丁寧に、道路の閉鎖の仕方の説明まで。昼バージョンと夜バージョンまで示してくれています。
ポートランド市のブロックパーティーパーミットのサイトより。
このブロックパーティーパーミットはポートランドに限った話ではなく、アメリカの複数の都市で導入されているようです。他の市の警察へのインタビューを読んだのですが「犯罪の軽減につながっている」というコメントが掲載されていました。
ブロックパーティーは日本でいうところの地域の町内会の祭り
このブロックパーティーは、日本では地域の町内会で行われているお祭りに少し似ています。町内会は、自治体とは別の自主的組織といえども、自治体と密に連携している組織でもあるので、その点では、本当に有志の集まりで行うブロックパーティーとは相違しますが、やっていること、その目的や、そこから生じる利点は近しいものがあるのではないかと思い、簡単にまとめてみました。
筆者作成。
祭りの場合には、その伝統や文化のようなものが中心にあることもありますが、ブロックパーティーはそれぞれの文化や伝統を持ち寄るというところには大きな違いがあるかもしれません。
我が家はポットラックには、豆腐やいなり寿司、おにぎりのような日本文化のものをよく持っていきます。開催頻度も、町内会の場合には、町内役員などもいて、回覧板もあり、季節ごとに、習慣化しているものも多いかもしれませんが、ポットラックパーティーは、完全なる不定期。主催者の気分次第です。
共通点としては、地域の人と利害関係なく、繋がってコミュニケーションする場となっていることですね。
地域のレジリエンスを育むために住民ができること
今回、ブロックパーティーを紹介しようと思った背景には、日本の地域コミュニティにおいて過疎化や高齢化、都市部であれば核家族化、共働きの増加などで、町内会が機能しづらくなっている地域が増えているのではないかと考えたことがあります。町内会の大きな役割に、地域の共助の基盤をつくることがあり、その役割は現代においてとても大切です。
いま、各地域は気候変動の影響もあり災害に見舞われることが確実に増えています。何かあった時、災害時に、地域でお互いに共助する関係があるか否か、それは地域コミュニティのレジリエンス(ストレスや変化に耐え、回復し、成長していく能力)でもあり、これから確実に必要になってくることです。
ポートランドのブロックパーティーのように、行政じゃなくとも、地域住民が、そしてコミュニティ、地域企業が自主的に「繋がる場づくり」をしていっても良いのかなと考えています。そんな地域に住みたい人も増えていくのではないでしょうか。ブロックパーティーは、告知とちょっとした設営と企画ができれば実施できそうな容易さがあるので「ブロックパーティーのススメ」ということで今回は紹介してみました。
なお、ポートランドには地域住民が集まってくる仕掛けとして、もう数十年続く、シティリペアという活動もあります。こちらは、発端は、1996年まで遡るので30年ほど続く、運営団体もある活動です。住宅街の交差点にアートを描き、ベンチや本棚、掲示板などを設置。通行の場を「交流の場」に変える取り組みを中心に、住民主導で地域コミュニティの繋がりを再構築するためのワークショップや機会を提供しています。
地域にまつわる活動をしている皆さんへ。このブロックパーティーの取り組みが、地域の共助と、そして地域コミュニティのレジリエンスを育んでいくヒントになれば幸いです。
