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日本の食文化が、ニューヨークに更なる新たな波を起こしている。寿司やラーメン、日本酒に続き、現在注目を集めそうなのが、意外にも「プリン」だ。有力紙『The New York Times』が「次に来る日本発のブーム」として取り上げたことで、この素朴な卵のデザートが都市の食文化に静かに浸透し始めている。
筆者がニューヨークの飲食シーンを観察する中で感じているのは、日本式カスタードプリン(Purin)が人気になった場合、それは一過性の流行ではなく、現代のニューヨーカーの食やライフスタイルに対する価値観の変化を反映した自然な現象として馴染むであろうということだ。『The New York Times』の特集「What Will Be the Next Big Thing From Japan?」では、複数のシェフやデザイナー、アーティストが今後注目すべきトレンドを語っており、レストラン「Takumen」のオーナー、Kiyo Shinoki氏はその中で「Purin」を挙げている。
アメリカで「プリン」の呼び名は「pudding」と繋がりやすいが、実際のpuddingはもっとクリーム状で、食感の異なるデザートである。日本のプリンに最も近いのは「フラン(flan)」であり、スーパーマーケットで売られている市販のフランは、日本でいう「プッチンプリン」のような存在だ。一方、レストランで提供されるフランは、日本のプリンにより近いが、大きな器で作られ、取り分けて提供されることが多く、日本のように一つ一つのプリン型に入れて個別に作られるスタイルとは異なる。
また、近年ではアメリカのスイーツもかつてのような「激甘」からは脱却しつつあるが、それでもなお、日本のプリンが持つ優しく繊細な味わいとは明確に違う。だからこそ、Shinoki氏は『The New York Times』の記事の中で、puddingやflanといった既存の言葉ではなく、「Purin」と独自の名称を用いることで、その違いとアイデンティティを明確に打ち出しているのである。
