補助事業に従事していない従業員の作業時間を計上
ジェイアール東日本企画(jeki)による中央省庁等の委託事業および補助事業に関する人件費の不正請求が発覚した。実際の作業時間に基づいて人件費を請求すべきところ、作業の実態の有無にかかわらず過大に請求していた。これを受け、経営責任として5月30日付で赤石良治社長が辞任し、前社長の原口宰相談役や取締役の石田昌也氏が報酬返上を行った。社長代行は常務取締役の弓矢政法が就任。後任は6月23日開催予定の取締役会などで選任予定。
謝罪する赤石良治ら経営陣
資源エネルギー庁から受託し実施した令和4年度および令和5年度の「災害時に備えた社会的重要インフラへの自衛的な燃料備蓄の推進事業費補助金事業(防災インフラ補助事業)」に関して、防災インフラ補助事業に従事していない従業員があたかも従事していたかのように作業時間を計上。2024年7月以降の会計検査院の検査において判明した。同事業は、ソーシャルビジネス・地方創生本部(SBD本部)が中心となって展開している。
同社は中央省庁等に向けの事業を2012年から実施しており、当時は「セールスプロモーション開発事業局」が所管していた。当時の営業本部担当者やセールスプロモーション開発事業局長らが、契約した人件費の上限にできるだけ近づけるための資料を作成し、実際の作業の有無や内容にかかわらず人件費請求に必要な「従事日誌」をまとめて作成する運用を行っていた。2019年には「想定人件費一覧表」として資料が整備され、それに基づく運用は2024年の不正発覚まで続いていた。
2020年1月、SBD本部傘下のソーシャルビジネスプロデュース局(SBD局)を対象とした内部監査が実施された。この監査で、SBD局には約150本の従業員の印鑑が保管されており、特定の担当者が従業員本人の無断で押印していたことが判明した。SBD局以外の部門に所属する従業員の中には、従事日誌の存在を知らなかった者もいたことが指摘された。
これらの問題を受けて工数オプションシステムやプロジェクト指定といった対策が導入されたが、「契約した人件費の上限額に近づける」という基本方針は変更されなかった。その結果、むしろ組織的な運用として定着していた。
同社はこれらの問題発覚後、外部法律専門家で構成される外部調査委員会を2024年12月4日に設置。調査の結果、防災インフラ補助事業以外の中央省庁等向け委託事業や補助事業についても、実態と異なる不適切な作業時間の計上があり、人件費を過大請求していたことが判明した。
不正について、当時の代表取締役社長を含む経営層は不適切な人件費請求を認識していなかったとしている。しかし、外部調査委員会は、経営陣は報告を受けていたことから、従事日誌に記載された作業時間と実際の作業時間が異なる可能性に問題意識を持つべきであったと指摘した。
辞任した赤石社長は「弊社の不適切な行為により、大変多くのステークホルダーの皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたことを、深く心よりお詫び申し上げます」と述べた。
「防災インフラ補助事業」は、大規模災害発生に備え、自家用発電設備等を稼働させるための燃料を「自衛的備蓄」として確保することを促進する事業。本補助金は、特に大規模複合災害の発生可能性が高い地域など、自治体における防災拠点施設等に石油製品等を安定供給できる体制構築のため、自家用発電設備等の設置およびそれに伴う施設整備に要する経費を補助するもの。
