高卒社会人を経て、ミス慶應準グランプリになった土川さんに聞く、ミスコンとルッキズム

ミス慶應コンテスト2024準グランプリに輝いた土川満里奈さんは、ミス慶應出場者の中でも「異彩」の経歴の持ち主です。名古屋で生まれ育ち地元の進学校で高校時代を過ごすも、「なんとなく」進学することに疑問を感じ単身で上京して社会人に。働きながら慶應義塾大学を受験し合格すると、情報学を専攻する傍ら、自身を含め様々な背景や経験を持つ人達のストーリーを紹介するwebサイト「Life Compass」を立ち上げました。

土川さんはミスコンも終了し、大学を卒業後に再び社会人となった今でも、自身が取材した様々な人たちのドラマをSNSで精力的に発信し続けます。そんな土川さんに、ルッキズムとの批判も寄せられることもある大学ミスコンへの思いを聞きました。

※本記事は情報、メディア、コミュニケーション、ジャーナリズムについて学びたい人たちのために、おもに学部レベルの教育を2年間にわたって行う教育組織である、東京大学大学院情報学環教育部の有志と『宣伝会議』編集部が連携して実施する「宣伝会議学生記者」企画によって制作されたものです。企画・取材・執筆をすべて教育部の学生が自ら行っています。
※本記事の企画・取材・執筆は教育部修了生の平松優太・野崎佳奈子が担当しました。

SNSと縁遠かった大学生活とミスコン

━━慶應大学のミスコンに出場してみようと思ったきっかけを教えてください。

就活が決まりそうなタイミングで、偶然ミスコンの募集を知りました。もうすぐ就活も終わるし「何か新しいことをやりたい」と考え、面接先の会社を出るやいなや写真を撮り応募しました。

最近のミスコン応募者はSNSを駆使するのですが、私はSNSとかは嫌いなほうで…(笑)。旅に行ったときに景色を撮るくらいだったのですが、あえて自分がやったことのない環境に飛び込んでみたいと思い、インスタを活用することにしました。

━━慶應のミスコンといえば人によっては入学前から出場を考えていたり、就職のために出場したり。土川さんのように純粋な好奇心で飛び込むタイプは珍しいですよね。

そうですね。ただ、私は昔から好奇心で新しいことに飛び込むタイプだったと思います。例えば、高校卒業後に単身で上京しようと思ったときもそうでした。高校は名古屋の進学校だったので、「大学に行かずに東京で働きたい」と言ったら周囲や親がもちろん反対して。

幼い頃から東京というまちが好きで、小学生の頃は家族で旅行したりでしたが、中学生になったら、一人で夜行バスで遊びに行ったりして、少し変わった子供だったと思います。

様々な経験を持つ人たちを「昔の自分」に紹介する取組

━━すごい行動力ですね。上京した後には、どのような活動をしていたのですか。

上京してからは、社長秘書や不動産営業、カスタマーセンターとか色々な仕事を経験しました。同じ高卒だけど自分の力で這い上がろうとする同世代の野心溢れる人たちと知り合い、すごい尊敬しました。自分の知らない世界があるんだって。

━━高卒で上京し働かれる中で、今度は慶應義塾大学を受験するとなったときも、周囲に驚かれたのではないですか。

実は親に受験することを言ってなかったんです(笑)。実家に帰省しているときに「慶應大学を受けたんだ、明日が合格発表日なんだ」って話したくらいで…。翌日スマホで合否を見て「あ、受かった」って親に報告したら、さすがに固まってました。

━━意表を突かれる展開で面白いですね(笑)。そうした半生もあって様々な人達の生き様を発信するwebサイト「Life Compass」を運営されています。卒業後もこの取組を続けるモチベーションはなんでしょうか?

実は当時の自分のように進路に迷う高校生から感謝の気持ちがDMで届くことがあるんです。「親や先生の言うことよりも自分軸で将来を決めました」とか。

「こういう道もあるんだ」というのを当時の自分も知りたかったし、今は自分が発信することで誰かの助けになるかもしれないと思ってやっています。その気持ちが就職してからも変わりません。

ミスコンを経て再び社会人となった今

━━ミスコンの経験や「Life Compass」の運営は、再度社会人となった今の土川さんとどのように結び付いているのでしょうか。

実は私は国語が苦手なのですが、自分の言葉で発信することが自分の人生と向き合うよい機会になったなと。発信することを通じて、自分の人生って面白いな、色んなことを若いうちに経験できて、意味があったんだなって思えたんです。

━━国語が苦手にもかかわらず記事を書かれている。

なので、頑張って書いてるんです!! もともと受験の時も数学の方が好きで、パズルを解いて問題を解決するようなのが好きでした。それで大学でプログラミングとかもやっていました。

こういうところも含めて、ミスコンだけじゃなく色々経験してきて、辛いことも結構あったけど、やっぱり人と自分は違うんだなと。いま再び働いていますが、そこで辛いことがあったとしても、こんなに成長の機会を与えてくれてる環境にいることができ、恵まれているなと思えています。こういうことって幸せなことなんだということも、これからは伝えていきたいです。

━━最近ですとルッキズム批判やメディアとのかかわりなど、ミスコンのありかたが見直されています。土川さんとしてこうした動きに関して思うことはありますか。

そうですね。私の場合は表に出る仕事を本業にしたいと思って出場したわけではなく、ミスコンという注目度の高い場所を活かして自分のやりたい情報発信ができればと思っていたので、そのチャンスをもらったという感謝の気持ちはあります。

「ミスコン」と銘打っている以上、ルッキズムに関する批判があるのは当然だと思いますし、私自身も容姿だけで評価されるようなイベントには正直抵抗がありました。

ただ、実際に参加してみて思ったのは、「見た目」だけでなく、「どんな想いや背景を持っているのか」「何を発信していきたいか」など、その人自身の内面やストーリーが重視されるようになってきているということです。私は、むしろこうした議論があるからこそ、ミスコンに出ることを通じて、自分の考えや経験を言葉にして発信するきっかけにしたいと思いました。

ミスコンのかたちは、これからも変わっていくと思います。ただ、外見だけでなく「誰が、何を、どう伝えるか」という視点が加わっていけば、もっと意味のある場になっていくと感じています。

━━最後に、これからの慶應ミスコン出場者に伝えておきたいことがあれば是非お願いします。

ミス慶應ファイナリストという立場を活かして「Life Compass」の運営・発信をしたことで、より多くの人に届けることができたと感じています。いろいろな面で辛いこともありましたが、具体的に発信したいテーマや軸がしっかりある人にとっては、チャンスと挑戦の場としておすすめです。

【取材を終えて】
情報メディアとミスコンの関わりが揺らぎつつある今、あえて伝統的なミス慶應コンテストに身を投じた土川さんの口から紡がれる言葉には多くの示唆があるように思います。持ち前の人柄と稀有な生い立ちからも窺える行動力で、ミスコンをハックするかのようにして清新に駆け抜けた土川さんの更なる活躍に目が離せません。(ひらまつ・ゆうた)

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