5月18日に、金沢市・石川県卯辰山相撲場で第109回高校相撲金沢大会(北國新聞社など主催)が開催された。全国65校が参加した本大会には、約1万人(主催者発表)もの人が集まった。
その日の朝、地元の北國新聞には、こんな広告が掲載された。
紙面いっぱいに広がる手、そして「不安?ないわけないだろ」というコピーが、新聞を見た人に強いインパクトを残す。
「2024年は、年始の震災を受けて『ススモウ』をキーコピーに復興のシンボルとして青い足をデザインしたのですが、今年は進んだ先で、壁にぶつかる選手たちをテーマにしてみました」と、アートディレクター 河野智氏。
毎年恒例となっている本大会のビジュアル、今年は「葛藤がありながらも、カラダひとつでぶつかっていく覚悟をした選手」を表現したという。
「能登半島が震災に見舞われた昨年。通常開催を決めた大会コミュニケーションのコンセプトを、日常を取り戻すための第一歩と位置づけ、新聞広告や会場のポスター展開をつくりました。そして、震災から2年目の今年。一歩ずつ前に進む中で、さまざまな壁にぶつかりながら、それでも前進するすべての人を、大会を通して肯定することができないかということを考えました」(クリエイティブ・ディレクター 姉川伊織氏)
新聞の他に制作されている3タイプのポスターのコピーは「不安?ないわけないだろ」の他に、「迷い?あるに決まってんだろ」「緊張?しないわけないだろ」。いずれのコピーもネガティブな感情で表現されている。
「壁にぶつかっているということこそが、必死で踏み出してきた選手たちの強さの証だから。なるべくまっすぐな言葉で彼らの迷いや不安を肯定しようと考えました。力強くぶつかるビジュアルに、あえてネガティブな感情を認めるキャッチコピーを載せ、『ぶつかってるのは、進んでるから。』というタグラインでまとめました」(コピーライター 佐藤一貴氏)
この迫力あるビジュアル、実はこんな風につくられたそうだ。
「壁にぶつかる選手、けれど壁に押し負けるのではなく、壁をぶち壊そうとする選手を撮りたい。そう考えながら、彼らには透明な素材にぶつかっていただき撮影を行いました。その上から彼らのぶつかる力や方向性を強調するテクスチャを重ねています。コピーは彼らの迷いを感じるか細さと、不安をかなぐり捨て前へ進む強さとを感じさせるようなイメージで殴り書いています」(河野氏)
2017年から毎年趣向を凝らしたビジュアルで続く新聞広告とポスターのシリーズは、海外のクリエイティブアワードでの評価が高い。今年は、「ススモウ」というコピーの広告が、NY ADC賞でゴールド、The One Show 2025ではデザイン部門の部門賞を受賞している。

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スタッフリスト
企画制作
電通
CD+C
姉川伊織
AD
河野智
C
佐藤一貴
CPr
阿部浩二
メディアPr
橋 祐樹
BP | 木造悠吾 |
撮影 | 髙梨遼平 |
レタッチ | 新井レン |
フォトPr | 里見勇人 |
PM | 飯沼慶治郎 |
プリンティングディレクター | 山下俊一 |