カルチャーが街を育てる 渋谷から始まる、ストリートスポーツと共創型まちづくりの実装モデル

都市開発が進むなかで、かつて若者たちが自然に集まり、自らの感性を育んできた「プレイグラウンド」が姿を消しつつある——。

とりわけ渋谷は、再開発によって物理的な“場”だけでなく、そこにあったカルチャーとコミュニティの気配までが薄れているという意見もある。

現在の渋谷駅周辺は、インバウンドの観光客が溢れかえるなか、どこまで地域で育まれたカルチャーとの共存ができるだろうか? 街の魅力を考えるとき、ローカルカルチャーが存在しない街は、やがてその個性を失い、衰退してしまうのではないか?

そんな危機感を覚えている。

このような状況で、「都市に、ストリートカルチャーやスポーツが息づく場を取り戻したい」との思いからスタートしたのが、ストリートスポーツ振興プロジェクト「NEXT GENERATIONS」だ。

2018年にスタートし、U-15プレイヤーの大会や体験会、マナー啓発を通じて、公共空間にカルチャーとスポーツが根を張るための社会実験や議論を継続してきた。8年目となる2025年、まさに新しい動きをスタートしたこともあり、今回のトピックとさせてもらいたい。

SIWから始まった“産官学民”の対話と構想

本プロジェクトの転機となったのが、2023年と2024年に開催された「SOCIAL INNOVATION WEEK(SIW)」での連続セッションである。

渋谷区が掲げる基本構想「思わず身体を動かしたくなる街へ。」というビジョンのもと、渋谷公園通りエリアを舞台に、スポーツ・文化・都市開発が交差するまちづくりのあり方を産官学民で議論。BBOY Shigekix氏やダンサーのMiyu氏、渋谷区スポーツ協会、渋谷公園通り協議会、東急不動産、渋谷未来デザインといった多様なプレイヤーが一堂に会した。

SIWセッションの様子。

この場で浮かび上がったのは、「居場所」と「継続性」の重要性である。イベントの熱気が一過性で終わるのではなく、日常の中で育つカルチャーをどう地域に定着させるか。その問いへの答えとして導かれたのが、プレイヤーがジャンル関係なく集まれる場所と地域型部活動の構想である。

「渋谷ユナイテッド ストリートスポーツクラブ」が生み出す“まちが育てる部活動”

2025年、代々木公園・神南1丁目の商業施設(BE STAGE)にオープンした「Spot. Yoyogi Park」を拠点に、「渋谷ユナイテッド ストリートスポーツクラブ」が始動。これは、学校の部活動の地域移行を背景に、渋谷区と渋谷区スポーツ協会が進めてきた「渋谷ユナイテッドクラブ」の新たな展開である。

写真 「BE STAGE」

代々木公園・神南1丁目にある商業施設「BE STAGE」。

写真 「Spot. Yoyogi Park」。

「BE STAGE」内にオープンした「Spot. Yoyogi Park」。

このたび、新たなクラブとして「渋谷ユナイテッド ストリートスポーツクラブ」が設立され、地域を基盤としたスポーツ環境を創出する部活動改革プロジェクトがさらに前進。ストリートスポーツを通じて、渋谷区が掲げる個性と多様性を尊重した、次世代が輝く場が誕生している。

従来の学校内の部活動という枠を超え、地域・企業・行政が協働して、持続可能なスポーツ育成の仕組みを生み出す試みだ。

スタートする競技種目はブレイキン、スケートボード、フリースタイルフットボール、ダブルダッチなど。まさに渋谷を象徴する“ストリートカルチャー”がそのまま育成対象である。ここでは、スポーツの技術だけでなく、表現、自己肯定感、多様性への理解を重視した指導が行われている。

「渋谷ユナイテッド ストリートスポーツクラブ」の活動紹介。

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長田新子(渋谷未来デザイン 理事・事務局長/NEW KIDS 代表)
長田新子(渋谷未来デザイン 理事・事務局長/NEW KIDS 代表)

AT&T、ノキアにて通信・企業システムの営業、マーケティング及び広報責任者を経て2007年にレッドブル・ジャパンに入社。コミュニケーション統括責任者及びマーケティング本部長(CMO)として10年半、エナジードリンクのカテゴリー確立及びブランド・製品を市場に浸透させるべく従事し2017年に退社。2018年から渋谷区が主体になり設立された渋谷未来デザイン理事・事務局長として、都市の多様な可能性をデザインするプロジェクト活動を推進。コロナ禍で渋⾕区公認「バーチャル渋⾕」を⽴ち上げ、「バーチャルハロウィン企画」は第7回JACEイベントアワード最優秀賞「経済産業⼤⾂賞」(2020年度)を受賞。2023年に日本アドバタイザーズ協会デジタルマーケティング研究機構の第11回Webグランプリ にて「Web人賞」、都市のXRスポーツイベント「AIR RACE X」はSPORTS INNOVATION STUDIOコンテストにて「パイオニア賞」受賞。2018年には、NEW KIDSを立ち上げ、ブランド、コミュニティ・アスリート・イベント関連のアドバイザーや講演活動等を行いながら、行政活動支援、業界発展からスタートアップ支援まで幅広く行なっている。

長田新子(渋谷未来デザイン 理事・事務局長/NEW KIDS 代表)

AT&T、ノキアにて通信・企業システムの営業、マーケティング及び広報責任者を経て2007年にレッドブル・ジャパンに入社。コミュニケーション統括責任者及びマーケティング本部長(CMO)として10年半、エナジードリンクのカテゴリー確立及びブランド・製品を市場に浸透させるべく従事し2017年に退社。2018年から渋谷区が主体になり設立された渋谷未来デザイン理事・事務局長として、都市の多様な可能性をデザインするプロジェクト活動を推進。コロナ禍で渋⾕区公認「バーチャル渋⾕」を⽴ち上げ、「バーチャルハロウィン企画」は第7回JACEイベントアワード最優秀賞「経済産業⼤⾂賞」(2020年度)を受賞。2023年に日本アドバタイザーズ協会デジタルマーケティング研究機構の第11回Webグランプリ にて「Web人賞」、都市のXRスポーツイベント「AIR RACE X」はSPORTS INNOVATION STUDIOコンテストにて「パイオニア賞」受賞。2018年には、NEW KIDSを立ち上げ、ブランド、コミュニティ・アスリート・イベント関連のアドバイザーや講演活動等を行いながら、行政活動支援、業界発展からスタートアップ支援まで幅広く行なっている。

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