従業員エンゲージメントが低い企業の共通点。改善の鍵を握る部署とは?

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人的資本経営時代の社内広報実践講座

「働き方改革」や「人的資本経営」という言葉が浸透して久しいですが、日本企業の現場では、従業員の“熱意”が着実に失われています。「社員がやる気になってくれない」「若手が定着しない」といった課題は、多くの企業が悩むところではないでしょうか。

人的資本の情報開示が進み、離職率や研修制度、従業員のスキルといった要素が「企業価値の一部」として評価される時代において、エンゲージメントの重要性はますます高まっています。

本記事では、数多くの企業を支援する組織コンサルティングファームであるコーン・フェリー・ジャパンの柴田彰氏が、人的資本経営時代に求められる「従業員エンゲージメントとは何か」「なぜいま注目されているのか」に焦点を当て、その基礎的な考え方をご紹介します。

熱意を持って働く人はわずか27%

コーン・フェリー社のグローバル調査によると、日本企業において自発的に貢献しようとする社員は全体の27%です。反対に、熱意を持てていない社員は48%にも上り、これは先進国の中でも際立って低い水準となっています。

さらにこの数値は年々悪化しており、過去6年間で「熱意ある社員」は6%減少、「熱意を持てない社員」は12%増加したというデータも出ています。

背景には、日本型雇用制度の変化、若手の価値観の多様化、業務量と評価の乖離など、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。しかし本質的には、組織と社員との信頼関係や相互理解が揺らいでいるという点に帰着するのではないでしょうか。

エンゲージメントの低さは、採用競争力や早期離職率の上昇、育成コストの増大といった課題に直結します。社員が組織に対して信頼と共感を持っていなければ、知見やノウハウの蓄積も進みません。

「従業員満足」と「エンゲージメント」の違い

従業員エンゲージメントとは、「自分が所属する組織と、自分の仕事に熱意を持って、自発的に貢献しようとする従業員の意欲」のことです。しばしば混同されがちですが、従業員エンゲージメントは「働きやすさ」や「職場満足」とは異なる指標です。

● 従業員満足(ES):職場環境や待遇に対する“受け身の満足”
● 従業員エンゲージメント:組織に対して“自発的に貢献したい”という能動的な意志

つまり、満足しているからといって、必ずしも積極的に行動するとは限りません。企業が重視すべきなのは“エンゲージメント”の方です。この違いを理解することが、組織が本質的な改善に取り組む第一歩となります。

また、エンゲージメントが高い職場では、社員同士の信頼関係が強く、心理的安全性も高まりやすいと言われています。

従業員エンゲージメントが低い企業に共通する“3つの課題”

エンゲージメントが低い企業には以下の3つの共通点があります。

1. 会社の存在意義が社員に伝わっていない
「私たちは、誰の、何の役に立っているのか?」という問いに社員が答えられない場合、エンゲージメントは生まれにくいものです。

2. 戦略が曖昧で、業務が増加・複雑化
やるべきことの優先順位が明確でないため、仕事が積み上がり、社員が“忙しいのに成果が見えない”状態になっています。

3. 中間管理職のマネジメント不足
社員の期待と会社の要請をつなぐべき中間管理職が、その役割を十分に果たせていない場合、若手を中心に“報われない”という感覚が広がります。

これらの因子を分解し、やるべきこととやらないことを見極め、効率よく改善していくことが従業員エンゲージメントを向上させることにつながります。

従業員エンゲージメントは業績と直結しない?

柴田氏は「エンゲージメントが高ければ、必ず業績が上がるというわけではない」とも語ります。ただし、近年の調査ではエンゲージメントの高い企業が持続的な成長を遂げている傾向も見られています。

業績向上には以下の3要素が必要です。

1. 会社の戦略
2. 従業員のエンゲージメント
3. 従業員を活かせる組織環境

この3つが揃ってはじめて、企業は成果を最大化できます。近年は戦略だけでは差別化が難しくなっており、社員のエンゲージメントが企業成長の決定打になる場面も増えているのです。

広報部門が担う「エンゲージメント向上」の役割

従来、広報部門は“社外への情報発信”を主な業務としてきました。しかし、人的資本の開示やサステナビリティ経営が重視される今、社内に向けた戦略浸透・価値共有の担い手として期待が高まっています。

たとえば、「組織としての目指す姿」や「なぜいま変わろうとしているのか」といったメッセージを、経営から現場へ、適切な言葉で伝える存在として期待されているのです。

特に、変革のフェーズにおいては「何をするか」だけでなく「なぜするのか」を丁寧に伝えることが求められます。従業員にとって“納得感”のあるコミュニケーションができるかどうかや、社員の努力や成果を認める文化づくりが、従業員エンゲージメントを左右します。

宣伝会議の「人的資本経営時代の社内広報実践講座」では、12のドライバー(要因)を使ったフレームワークで、エンゲージメントの状態や原因を明確にする手法をご紹介しています。より実務に直結した内容を学びたい方は、ぜひ講座をチェックしてみてください。

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柴田 彰 氏

コーン・フェリー・ジャパン
コンサルティング部門リーダー
シニア・クライアント・パートナー

慶應義塾大学文学部卒。PwCコンサルティング(現IBM)、フライシュマンヒラードを経て現職。コーン・フェリー・ジャパンのコンサルティング部門責任者。最近では、社員エンゲージメント、ジョブ型人事、経営者サクセッション、役員改革などのテーマを数多く取り扱う。著書に「エンゲージメント経営」「人材トランスフォーメーション」、共著に「VUCA 変化の時代を生き抜く7つの条件」「職務基準の人事制度」、寄稿に「広報会議」「企業会計」「労働新聞」ほか。

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