ポートランドで進行中!20年がかりの環状型遊歩道「グリーンループ」とは?

日本のようにどこでも歩けるまちは珍しい!

ポートランドで育った息子たちにとって、日本に帰った時のドキドキする楽しいアクティビティのひとつは、子どもだけで徒歩で通学できることです。米国は車社会であり、州ごとの法律により、ある一定の年齢になるまで、子どもはひとりで歩くことができません。

区切りの年齢は10歳。ポートランドは場所によっては歩けるまちなので、11歳になった長男は、この歳になってはじめてのアメリカでの友だちとの登下校(そして買い食い)を楽しんでいます。

そんなポートランドでは、20年がかりで「グリーンループ」と呼ばれるプロジェクトが進行しています。

イメージ この川をぐるっと囲んでグリーンループは設計されている。

この川をぐるっと囲んでグリーンループは設計されている。

これは6マイル(約10キロ)の環状型の歩行者のための(と自転車の)専用道路をつくるプロジェクトです。ポートランドの主要なランドマークを通り、ポートランドの中心を流れる川の東西をぐるっと囲むように設計されています。

日本のようにどこでも歩けて、ウォーカブルなまちに住んでいると、20年もかけて、わざわざ歩くための道路をつくる意味はどこにあるのか?と思いますよね。このグリーンループは、ただの歩くストリートではなく、いま社会が内包している課題への提案も含んだプロジェクトとなっています。そこで、このグリーンループを紹介していきます。

そもそもなぜ今、歩くことが求められるのか。

冒頭でも紹介したとおり、鉄道と地下鉄網が張り巡らされ、公共交通機関を活用しながら徒歩でどこでもいける日本(とりわけ都市部)とは異なり、米国は車がないと買い物にも行きづらい、友だちとも会いづらいまちです。

その中でポートランドは、小さな商圏が発達し、公共交通網とバイクレーン(自転車道路)も整備されているため、米国の中でも珍しい徒歩でもある程度生活できる街として知られています。我が家も徒歩で小学校に通っていますし、レストランやカフェまで歩いて夕ごはんを食べに行くこともあります。

写真 徒歩で小学校に通うう

しかしながら全米を見渡せば、以下のように日本との相違点を見ることができます。

イメージ 表

筆者作成

わざわざ、ハイウェイではなく、バイクレーンや、公共交通機関の整備を政策として掲げる必要があるほどに、車中心社会のアメリカ。そのため、このグリーンループは20年がかりで整備する価値があると言える環境が、アメリカなのです。

日本でも地方都市などは、車がなければ生活しづらい商圏となっているところも多いと思います。そのため、このグリーンループは、もしかすると、高齢化していく日本の地域の都市づくりの参考になるかもしれないと考えます。

ポートランドのグリーンループ

このグリーンループは、2012年に提案された「2035年都市計画」の一部として存在します。2022年に最初の歩行者専用ブリッジが施工され、昨年2024年からは川を超えて繋がる公園と遊歩道を含む橋の大掛かりな工事がスタートしています。

グリーンループのイメージはこのような感じです。

イメージ いま開発が進み始めているのは北側の川を越えるエリア(図は筆者作成)。

いま開発が進み始めているのは北側の川を越えるエリア(図は筆者作成)。

真ん中に流れる川はウィラメットリバーです。ポートランドはこの川を挟んで、右(東側)にサウス・イーストと呼ばれる閑静な住宅街と小さな商店街が点在するエリアがあります。

一方左(西側)は、ダウンタウン、そしてAppleStore、Nikeなどのブランドショップが集まり、リッツカールトンなどのホテルも多くあるため、観光にまず訪れるエリアです。

今回のグリーンループは、川を囲むように、ぐるっと一周します。

南はTilikum Crossingと呼ばれる、全米ではじめて歩行者とバイク専用の橋としてつくられた橋(乗用車は通れません、公共交通機関であるバスとライトレールのみ通れます。そこから逆時計回りに紹介していくと、OMSIと呼ばれる、Oregon Museum of Science and Industry、つまり、科学と産業のミュージアム。子どもたちが大好きな場所です。そしてその建物の周辺は、今も遊歩道とバイクレーンが続き、そこから北上するルートはサイクリングをすると気持ちの良いエリアともなっています。

さらに住宅街を北上し、産業の展示会が行われるコンベンションセンター、そして、北サイドはいま建設中の公園を含むブリッジで、西側へと渡ります。そこから、パールディストリクトと呼ばれる、レストランやショップが立ち並ぶエリアを通り、最後は、ポートランドに来るならぜひ訪れてほしい、ファーマーズマーケットが開かれているポートランド州立大学へ、そして、最初の橋へと戻る、そんなルートです。

一周すればポートランドにある程度触れられる、そんな設計と言えるかもしれません(山や海はありませんが緑地はたくさんあります)。

公園やショップ、大学、ミュージアムと、立ち寄れば、人と人とが繋がれるようなスポットを設け、対話と融合をまちに起こすことを目指していると言います。イーストサイドはコーヒーロースターやブリュワリーも多いエリアを通るので、ポートランドらしさに触れることもできます。

次回は、この「グリーンループ」の可能性や他国の例についてお伝えしていきます。

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松原佳代(広報コンサルタント/みずたまラボラトリー 代表)
松原佳代(広報コンサルタント/みずたまラボラトリー 代表)

スタートアップの広報育成・支援を手がける「みずたまラボラトリー」代表。お茶の水女子大学卒業後、コンサルティング会社、出版社を経て、2005年に面白法人カヤックに入社。広報部長、事業部長を兼任したのち子会社カヤックLivingの代表取締役に就任。移住事業の立ち上げに参画。2019年、家族で米国ポートランドに移住。一方、2015年に自身の会社「みずたまラボラトリー」を設立し、広報戦略、事業開発、経営全般にわたる経験と実績を活かしスタートアップの広報育成と支援を展開。富山県出身。富山県の経営戦略会議ウェルビーイング戦略プロジェクトチーム委員も務める。

松原佳代(広報コンサルタント/みずたまラボラトリー 代表)

スタートアップの広報育成・支援を手がける「みずたまラボラトリー」代表。お茶の水女子大学卒業後、コンサルティング会社、出版社を経て、2005年に面白法人カヤックに入社。広報部長、事業部長を兼任したのち子会社カヤックLivingの代表取締役に就任。移住事業の立ち上げに参画。2019年、家族で米国ポートランドに移住。一方、2015年に自身の会社「みずたまラボラトリー」を設立し、広報戦略、事業開発、経営全般にわたる経験と実績を活かしスタートアップの広報育成と支援を展開。富山県出身。富山県の経営戦略会議ウェルビーイング戦略プロジェクトチーム委員も務める。

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