事業成長の単なる追い風ではなく、エンジンそのものになれるPRを目指す(メルカリ 宮本祐一氏)

広報、マーケティングなどコミュニケーションビジネスの世界には多様な「専門の仕事」があります。人事異動も多い日本企業の場合、専門職としてのキャリアを積もうとした場合、自分なりのキャリアプランも必要とされます。現在、企業のなかで広報職として活躍する人たちは、どのように自分のキャリアプランを考えていたのでしょうか。横のつながりも多い広報の世界。本コラムではリレー形式で、「広報の仕事とキャリア」をテーマにバトンをつないでいただきます。リクルートホールディングスの高野梓さんからの紹介で、今回登場するのはメルカリの宮本祐一さんです。

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宮本 祐一 氏

メルカリ
グループ広報責任者

Q1: 現在の仕事の内容とは?

メルカリグループの広報責任者として、ExternalCommunication(CorporatePRとProductPR、パートナーとの取り組み推進など)、InternalCommunication(社内広報や採用広報)の領域を統括しています。

メルカリPRチームのミッションは、単なる短期的な情報発信に留まらず、各事業の取り組みを、中長期のコミュニケーション戦略の下、連続的に情報発信し、さまざまなステークホルダーとの「共鳴」を生み出すことです。

ExternalCommunicationでは、例えば、新規事業の立ち上げ時には、事業部と密に連携し、グループミッションである「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」の実現に新規事業がどう繋がるのかのStoryを構築、情報発信を行います。また、「GreenFriday」の取り組みのように外部パートナーを含めた施策を0➔1で企画し、イベントの企画・運営から情報発信まで推進するケースもあります。

InternalCommunicationでは、メルカンなどのオウンドメディアを運営しており、社内のさまざまなチームの活躍を社内外に発信することで、社員や外部の方々にメルカリのカルチャーを可視化、CorporatePRと共に株式会社メルカリのパーセプション形成に繋がる情報発信を行います。

Q2: これまでの職歴は?

大学卒業後、マネックス証券に入社し、カスタマーサポートやマーケティング部門で金融商品のCS対応、マーケティングを担当しました。その後、経営企画部や広報室で、証券事業のブランディングや全社横断プロジェクトの統括、事業戦略の策定・実行に携わりました。

2019年1月にメルペイに入社し、スマホ決済サービス「メルペイ」の立ち上げPRを担当。キャッシュレスが社会に浸透する中で、認知や理解を深めるためのコミュニケーション戦略の設計から実行までを担いました。その後、暗号資産を含むFintech領域全般のPRを経て、現在はメルカリグループ全体の広報責任者を務めています。

Q3: 転職や社内異動などに際して、強く意識したこととは?

転職時には、正直、あまり高尚なことは考えていませんでした。マーケティングなどを経験した上で、ブランディングに興味を持ち、PRという職種に触れ、その可能性を感じ、PRを極めてみたいと考えたのがきっかけです。

メルカリに入社後は、一貫して「PRが、事業成長の単なる追い風ではなく、エンジンそのものになれるか」という観点を意識しています。単なるメディア露出や話題づくりではなく、社会課題への向き合い方やプロダクトの思想を、社内外にどう伝えるか、それにより事業成長にどう貢献できるかを意識しています。

メルペイへの転職を決めた際も、「ゼロイチ」のフェーズで事業とPRを一緒に立ち上げる機会に魅力を感じました。また、PRの力で世の中の生活者の行動やパーセプションが変わる瞬間に立ち会えることに、大きなやりがいを感じています。

Q4: 国内において広報としてのキャリア形成で悩みとなることは何?

日本においては、PRがまだ「対外調整役」「単なる情報発信手段」と見なされがちで、経営における重要な機能(function)、つまり事業を成功に導くための戦略的な役割として認識されにくい場面もあると感じます。特に、よく相談をいただいたり耳にするのが、プロジェクトの終盤でPRが巻き込まれるケースが多く、上流からPR視点を入れるのが難しいという点。

PRがプロジェクトの初期段階から関与することで、社会やさまざまなステークホルダーと「共鳴」できるコミュニケーション戦略を設計でき、より社会に受け入れられやすくインパクトある形で情報発信ができると考えています。メルカリでも、PRが最初からプロジェクトに入り、事業部と一緒に問いを立て、メッセージの輪郭をつくっていくプロセスを大切にしています。

また、PRの貢献範囲が広がることで、PRスキルだけでは不足する場面が増えているのではないかと感じます。PRパーソンとしてキャリア形成していく場合でも、経営戦略への理解やマーケティングスキル、政策渉外の観点などコミュニケーション戦略を立てる上で関連する横の知識を広げることがより重要になっているのではないでしょうか。

Q5: 広報職の経験を活かして、今後チャレンジしたいことは?

今後は、PRをもっと経営に近い距離で活用できるよう、「中長期の経営戦略にalignしたコミュニケーション戦略の設計と実行」に力を入れていきたいと考えています。3ヶ月、6ヶ月、1年先を見据えて、社会の変化やステークホルダーの期待に先回りした発信を行うことが重要だと考えています。

また、ExternalCommunicationとInternalCommunicationのActionを組み合わせ、連動させることで、CorpratePRやProductPR単体では起こせないようなパーセプションチェンジを実現していきたいです。

PRの力で、メルカリグループが目指す世界観に共感して、応援してくれるファンをこれまで以上に創っていきたいと思います。

【次回の担当者は?】

次回は、電通デジタルのコーポレートコミュニケーション部で事業部長をされている長田真理子さんをご紹介いたします。

長田さんは、これまで国内外の大手企業の広報チームでのご経験もありながら、現職においてはコミュニケーション業務全体を統括しており、ひとえに「広報」と言ってもさまざまなシチュエーションでの経験をされています。

私自身、過去のご経験を聞くたびに多くの学びをいただいており、みなさんにも是非いろいろなご経験を共有いただけるのではないかなと思い、ご紹介いたしました。

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