広報、マーケティングなどコミュニケーションビジネスの世界には多様な「専門の仕事」があります。人事異動も多い日本企業の場合、専門職としてのキャリアを積もうとした場合、自分なりのキャリアプランも必要とされます。現在、企業のなかで広報職として活躍する人たちは、どのように自分のキャリアプランを考えていたのでしょうか。横のつながりも多い広報の世界。本コラムではリレー形式で、「広報の仕事とキャリア」をテーマにバトンをつないでいただきます。ソニーグループの石奈美子さんからの紹介で今回、登場するのは、リクルートホールディングスの高野梓さんです。
Q1:現在の仕事の内容とは?
リクルートグループは、創業以来、就職・結婚・進学・住宅・自動車・旅行・飲食・美容などの様々な領域において、一人ひとりのライフスタイルに応じたより最適な選択肢の提供を目的としたマッチングプラットフォームの提供を行ってきました。現在では、HRテクノロジー・マッチング&ソリューション・人材派遣の3事業を軸に、60を超える国・地域で事業を展開しています。
その中で私の現在の仕事は、主にグループ全体と一部事業の国内広報対応を担っています。具体的には、リクルートホールディングス広報としてグループ全体にかかる案件と、HRテクノロジー・マッチング&ソリューションの2事業にかかるコーポレートから事業の案件までの、国内における広報活動に取り組んでいます。
Q2:これまでの職歴は?
私は、分社化する前のリクルートに新卒で入社しました。その後、経理・財務・広報と、長くコーポレートスタッフとして従事してきました。
事業の最前線ではありませんでしたが、経理・財務というビジネスの仕組みや自社の特徴を全社視点で構造的に学べたことが、現在の広報の業務を担う上でも大きな財産になっていると感じています。
広報に着任してからは、様々な事業広報も担当しながら一貫してリクルートホールディングスの広報を担当しています。入社時には「グローバル」の「グ」の字もなかったような当社でしたが、2014年の上場以降、M&Aによる海外展開とテクノロジー活用を急速に進め、今では海外売上高比率がグループ全体の50%以上を占めるまでに至りましたが、その約10年間を広報として携わらせて頂きました。約10年と書くと自分でもびっくりしてしまいますが、ずっとジェットコースターに乗っているようなスピード感で、3回くらい転職したような体感です(笑)。
Q3:転職や社内異動などに際して、強く意識したこととは?
リクルートには社内募集制度もあり従業員は頻繁に活用しているのですが、私は一度も利用したことがなく、全て通常の人事異動で異動してきました。というのも、私の入社動機が、当社の企業理念のひとつである「個の尊重/Bet on Passion」という考え方と、企業経営というシステマチックに運営管理しなければならないはずのものが、どの様にバランスしているのかを見てみたい、という漠然としたものだったため、「絶対にこの職種や部署を経験したい!」という意思があまりありませんでした。あらゆる場面で個人の意思を問われる社内において、「意志がない」ことが長らくコンプレックスでもありました (笑)。
考え方が変わったのは、手前みそですが現会長の峰岸がとあるインタビューで話していた「意志がない人は、まず目の前の仕事にこれは誰にも負けないと思えるほど一生懸命に向き合いなさい。それが意志になる。」という言葉です。すっと腑に落ち、それ以降、何に向き合う時も意識することの一つになりました。そして少しずつですが、実感出来ている気がします。