「企業カルチャー」とは何か、組織においてなぜ重要なのか、どのように作られていくものなのか。本記事では5月28日に開催された「インターナルコミュニケーション・デイ2025 Summer」(主催・ヤプリ)で注目を集めたセミナーをレポート。『カルチャーモデル』の著者であるAlmoha共同創業者COO・唐澤俊輔氏が、「風通しの良い組織・カルチャーを作るインターナルコミュニケーション」について解説した。
「インターナルコミュニケーション・デイ2025 Summer~風通しの良い組織・カルチャーを作り、『自分事化』を促すコミュニケーション戦略~」での講演の様子。同イベントでは、ヤプリと宣伝会議が共同で発足した「インターナルコミュニケーション研究会」での成果を発表したほか、基調講演として、組織変革のコンサルティングや・人事システム開発事業を行うAlmoha共同創業者COOの唐澤俊輔氏が登壇した。
意図しないカルチャーが生まれていないか
企業カルチャーはなぜ大事なのか。唐澤氏は、カルチャーを大切にする企業は「自律的に動ける強い組織」を作っていると話す。ルールを細かく決めるのではなく、ミッション・バリューなど、組織で重視する価値観を定義し、それを従業員が解釈、議論して成長していく組織だ。そうした経営スタンスをとる企業の一例として、スティーブ・ジョブズ退任後もカルチャーの浸透によって業績を上げ続けるAppleや、企業カルチャーを明文化し社外に公開しているNetflixを挙げた。
一方で、想定外のカルチャーができあがってしまうこともある。「業績未達が叱責され、進言しづらい」といった風土が不正につながるケースもある。これらを踏まえ、唐澤氏は、「組織の中で共有したいカルチャーを可視化すること」の重要性を指摘。どのようなカルチャーを持つ企業なのかを、社内外に発信することで、組織に対する期待値のギャップが減り、離職も抑えやすいという。
では企業カルチャーとは、どのように生み出されていくものなのか。「経営者の発言や現場の会話といった日々の行動・言動の積み重ねが、結果としてカルチャーになる。そこに、組織の指針となるビジョン・バリューなどがあると、言動がそろいやすくなる」と唐澤氏。ビジネスモデル同様に「カルチャーモデル」を策定することを同氏は提唱する。インターナルコミュニケーションの実践においても、目指す組織像とフィットしてこそ、成果が生み出しやすくなる。
唐澤氏は、日本マクドナルドの社長室長・マーケティング部長、メルカリの執行役員、SHOWROOMのCOOを経て、デジタル庁のChief Corporate Officerを務めた。
自律型組織を作るデジタル庁での挑戦
組織のカルチャーを設計し育んでいくにあたっては、ビジョンや行動指針を掲げることで終わらせず、日々の行動に落とし込めるよう浸透させていく、コミュニケーション施策を実践していくことになる。その実践例として唐澤氏は、自身が携わったデジタル庁発足時の組織づくりについて紹介した。
デジタル庁では、官民の人材が「リボルビングドア(回転扉)」のように行き来する仕組みを導入し、民間から人材を積極的に登用している。「例えばスピーディという言葉一つとっても、官公庁の職員と民間出身者の捉え方は異なる。そのギャップをどう乗り越えるかに注力してきた」と振り返る。
唐澤氏が取り組んだのは、全員がリーダーシップを持ち、挑戦して学びながら成長していくカルチャーの醸成だった。まずは組織の拠り所となるミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を策定。その過程においては職員によるワークショップを実施している。「できあがった言葉を覚えてもらうより、ワークショップなどを通じて関与を増やすと、‟自分たちのものだ”という意識を持ちやすく浸透も早い」と唐澤氏。職員の目に触れやすいところにMVVを掲示し、新しく入職する人にも策定時の思いやプロセスが分かるようnoteで情報を公開した。
所属や役職が様々な有志メンバーを「アンバサダー」として集め、草の根でバリュー浸透を推進する体制にしたほか、バリューに沿った行動をする人材を表彰する「MVVアワード」、全職員がフラットに議論できる「オールハンズミーティング」、現状を把握し改善するための「サーベイ」なども実施してきた。
カルチャー浸透がもたらすもの
こうしたカルチャー浸透を行うことで、組織はどのように変わっていくことができるのか。唐澤氏は次のように整理した。
①組織に明確な価値観があることによって、意思決定で迷わず、実行のスピードが高まる。
②ルールで縛るのではなく、価値観を解釈することが求められるので、自ら考え行動できる強い組織ができる。
③異なる背景を持つ人材が共通の価値基準を持つことで、化学反応によるイノベーションにつながる。
「みなさんが、企業カルチャーを育むインターナルコミュニケーションを実施する際、『なぜ、そうした施策が必要なのか?』と周囲から問われたら、この3つを参考にしてほしい」と唐澤氏。最適な組織のかたちは企業ごとに異なるが、従業員の自律的な行動を促していきたい場合には、「企業カルチャー」を可視化し社内に浸透していく取り組みが、組織づくりの土台となる。

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