投資家に対して自社の事業の状況や財務情報、サステナビリティ情報などを提供するために企業が作成・開示する有価証券報告書。従来は株主総会の翌日などに開示されることが多かったが、今年は様子が異なる。3月期決算企業の半数以上が総会前開示を予定し(金融庁調べ)、実際に開示しているのだ。
金融担当大臣からの要請受け
背景には、金融担当大臣からの要請がある。2025年3月に全上場企業に対して発した、「株主総会前の適切な情報提供について(要請)」だ。
そこには「上場会社においては、投資家が株主総会の前に有価証券報告書を確認できるようできる限り配慮することが望ましい」としたうえで、「今年から、まずは有価証券報告書を株主総会の前日ないし数日前に提出することをご検討いただくようお願いいたします」と書かれている。これを受けて、多くの企業が総会前の開示に舵を切った。
1週間以上前倒しした事例も
金融庁が6月11日に開催した「有価証券報告書の定時株主総会前の開示に向けた環境整備に関する連絡協議会」の第3回会議では、3月期決算企業の開示予定時期が示されている。昨年は全体の1.8%にとどまっていたのに対し、今年は54.9%が総会前に有価証券報告書を開示する予定だという。
前倒し時期は、「総会の1日前」の企業が大半だが、中には1週間以上前に開示する企業もいる。
例えばトレイダーズホールディングスは、6月25日の総会開催に対して、9日早い6月16日に有価証券報告書を開示。昨年は総会開催日と同日(6月26日)に開示していたが、1週間以上早めた形だ。
また、ニチレイも昨年は総会と同日に開示(6月25日)だったところ、今年は6月25日の総会開催に対して6月17日に有報を開示した。
