10月1日、OpenAIが動画生成AI「Sora2」とSNS「Sora」を発表しました。かねて噂されてはいましたが、登場早々、著作権の問題をめぐって議論を呼んでいる状況は皆さんご存じかと思います。
それ以前にも9月末から大きなニュースが続いていましたが、相変わらず動きが速すぎます。この激動の全体像を理解するためにも、今回は9月末のAdobeやMicrosoft、Metaの発表を交えて考察します。
ついにPhotoshopに「Nano Banana」搭載!
前回はGoogleの画像生成AI「Nano Banana」をAdobeが採用したという戦略的転換を話題にしましたが、本丸とも言えるPhotoshop(Beta版)への搭載が2025年9月26日(日本時間)に発表されました。
📢 Photoshop Beta expands Generative Fill — more AI models, more possibilities! 💫
Try Google’s Gemini 2.5 Flash Image (Nano Banana) + Black Forest Labs’ FLUX.1 Kontext [pro] alongside Firefly, available now in the beta app.Show us your image creation in the comments!
Update… pic.twitter.com/eK1qq16t6D— Adobe Care (@AdobeCare) October 2, 2025
同時に、生成AIコミュニティで人気の高いBlack Forest Labs(以下BFL)の「FLUX.1 Kontext [pro]」も搭載されるなど、Adobeが生成AIの「基礎モデル」開発競争において、自社のみで全てを賄う戦略から一歩引き、高性能な外部の基礎モデルを積極的にインテグレーションする戦略へと舵を切った、との解釈に間違いはなかったようです。
筆者も画像生成、動画生成における監修や実案件での使用経験から、AIによる画像、動画の生成とPhotoshopやAfter Effectsとの行ったり来たりには面倒くささを感じていました。
直接Photoshopの中で完結するのであれば、それが現状の最適解であることは間違いなく、AI開発競争よりも、クリエイティブの現場における実用性を優先したAdobeの判断は、ユーザー目線として非常に合理的であると感じます。
実際のところPhotoshopの話だけではありません。今改めてAdobe Fireflyの対応モデルを確認してみたところ、GoogleとBFLだけでなく、OpenAI、Runway、Luma、Pica、Ideogramなどの各社モデルに対応しており、まるでモデルプロバイダと言える様相です。
これらのモデルを切り替えて使えることは、用途に応じて最適なモデルを選べるという点で、クリエイターの選択肢を大幅に拡大していると言えます。また、企業ユースにおいては、請求の一元管理というのは大きな利点となり得ます。
Microsoft 365 Copilotには新機能の「エージェントモード」
同じく2025年9月30日には、Microsoftが「Microsoft 365 Copilot」の新機能として「エージェントモード」を発表しました。
Vibe work is here with Agent Mode in M365 Copilot. Check out these examples of how Copilot can now orchestrate multi-step tasks.
— Satya Nadella (@satyanadella) September 29, 2025
これらの機能は、「バイブワーキング(Vibe Working)」と呼ばれる新しい働き方を実現することを目的としており、AIが自律的に複数ステップのタスクを実行し、高品質のドキュメントやスプレッドシート、プレゼンテーションを自動生成することを可能にします。
この「エージェントモード」は、Microsoftが出資するOpenAIだけでなく、競合と言えるAnthropicのAIモデルを選択可能としている点が注目されます。
元々自社モデルにそこまでのこだわりを見せていなかったMicrosoftですが、今回AnthropicのClaudeモデルを選択肢として加えたことは、今一番いいものを採用するという同社のビジネス的リアリズムを象徴しているように感じます。
巨大テック企業が自社開発のみに固執せず、他社の優れたAIモデルを積極的に取り込むという戦略は、AI開発のコスト、スピード、専門性の問題に対する現実的な解であると同時に、AI技術の成熟と普及を加速させる新たな段階を示しています。
これは、AIが「特別な技術」から「当たり前のツール」へと変遷する中で、いかに多様なニーズに応え、ユーザーに真の価値を提供できるかという、実用性へのシフトを象徴するものです。
私たちは最適なAIモデルの選択、倫理的課題への対応、そして人間ならではの創造性を最大限に引き出すための「問い」を設計する役割を担うことが求められています。
次回はこの「AIチキンレース」ともいえるこの状況について、Metaの動きなども交えながら考えていきます。
