1万6000人超が来場、若年層も詰めかけた「虎ノ門広告祭」 企画から実現までを菅野薫氏にすべて聞いた

東京・虎ノ門ヒルズで8日間にわたって開かれた広告クリエイティブの祭典「虎ノ門広告祭」に延べ1万6825人が来場した。この大型イベントをゼロから実現にこぎつけたのが、クリエイティブディレクターの菅野薫さん。企画の理由や実現に向けた苦労、手応えと今後について聞いた。

広告について話せる場をつくりたかった

━━「虎ノ門広告祭」企画の経緯について教えてください。

菅野:日本で多くの人が集まって、いろんな視点や角度から広告のクリエイティブの話ができる場があるといいなとずっと思っていました。広範囲のマーケティングを扱うカンファレンスや、アドテクノロジーに関するセミナーなどはあるけど、クリエイティビティをテーマとしてど真ん中で扱うものはない。海外には普通にあるクリエイティブの集まりが日本にあっても良いのではないかと思ったんです。業界内では、広告のクリエイティブに関して悲観的な言説も多くある感じもあって、クリエイティブだけ議論されずに元気ない感じになっちゃうのはもったいないなと感じていました。

写真 8日間にわたって開かれた「虎ノ門広告祭」

写真 8日間にわたって開かれた「虎ノ門広告祭」

8日間にわたって開かれた「虎ノ門広告祭」

例えば、カンヌライオンズに行くと、朝から晩まで会場でも会場外でも出会いと交流と議論がそこら中でなされています。権威がある賞が選ばれる特別な場ですし、旅先ならではの高揚感もありますが、世界における広告周辺のクリエイティビティにおける最新のテーゼに刺激を受けながら「あの受賞作はどう思う?」とか、「最近どんな広告つくってる?」とか。結局、みんな広告の話をするのが好きなんだなと実感します。

僕自身もカンヌで受賞させていただいたこともありますし、審査員もさせていただいたり、セミナーに登壇させていただいたり、なんだかんだ10年くらい行かせてもらいました。そういう場で、所属している会社を超えてもともと面識のなかった人も会えて、一緒にごはんを食べたりしながら話することはとても魅力的だと感じていました。

自分になかった視点を得る。視座を高く持つ。純粋にもっと良い仕事ができるようになって、クライアントとともに社会に意味のある仕事を出していけるようになりたいというモチベーションを得る。そういうことが獲得できる場をもっと身近で、近い言語や文化圏の中でも欲しい。海外だと日本の特有の文化や商慣習に関する部分は理解されづらいので、単純に比較しづらい部分もありますし。

この業界は、世の中に対して、もっともっと良い仕事がしたくていろいろ考えたり悩んだり、前向きな人がたくさんいる素晴らしい業界だなと思っています。悲観する暇があったら、前向きに今の時代らしいクリエイティブを探ることに時間を割きたいと思いました。

でも、世の中は逆の方向に流れて、コロナを機にリモートワークが進んで、特定の用事がないのに人と会って話をする機会が減りました。仕事をするチームのメンバーには頻繁に会うけど、それ以外の人に偶発的に会う機会が少ない。大きな会社だと、同じ会社に所属していても会ったことのない人が結構いるとの声もよく聞きます。そうすると同じように悩んでいる仲間の存在がみえなくなってしまう。

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