あえて答えは提示しない——K-POPから学ぶコンテンツプロデュース ④MV考察

「韓国トレンド研究室」、第12回目です!「K-POPアイドルから学ぶコンテンツプロデュース」の最終回です。

①K-POPアイドルの仕組み」、「②コンセプト」、前回の「③期待値のつくり方」に続き、今回は「④MV考察」についてお話しします。

K-POPアイドルのMVは、隠されたメッセージや散りばめられた伏線など…考察するのが楽しいものになっています。

考察ができるコンテンツは、視聴者はただ観るだけではなく、考えながらそのヒントを見つけようとくまなく観るので、記憶に残りやすいです。また、伏線が回収されていく時の鳥肌が立つような感覚も記憶に残りやすいと思います。

コンテンツで溢れるこの時代に、「記憶に残り続ける」コンテンツをつくれるかどうかは重要な要素だと思うので、今回はK-POPのMVからその秘訣を学んでみようと思います!

1. 物語の「断片化」と、視聴者の「当事者化」

第1章では、K-POPの考察系MVの特徴のひとつ、「物語の断片化」についてお話しします。

K-POPのMVの特徴のひとつとして、ひとつの完成された物語を提示するのではなく、あえて断片的に情報が提供されることが挙げられます。映像の中に散りばめられたピースは、視聴者の好奇心を刺激し、視聴体験は「受動的な視聴」から「能動的な視聴」へと変化します。

具体例として、以下のような「違和感」の演出があります。

① 小道具が意味するメッセージ
例えばあるMVでは、「寄せ書きがされていたギプスが出てきたが、別シーンではその寄せ書きが消えている」という演出がありました。この場合、視聴者は「なぜ寄せ書きが消えたのか?」とその背景を読み解こうとします。

② 表情が語るメッセージ
とあるMVでは、 映像はポップなのにメンバー全員が無表情。かと思えば、急に楽しそうに笑い出す、といった演出がありました。この演出が、普通の「笑顔」を狂気的なものとして描き出し、視聴者の視線を釘付けにしています。

③ あえて矛盾を描く
例えば「さっき死んだはずなのに、なぜか生き返った」など、時系列が乱れていたり、矛盾が描かれたりすると、視聴者には「これは考察できるMVである」という風にセットアップされます。このように計算された“矛盾”をあえて描くことで、視聴者の脳は「考察脳」に切り替わります。

自らが考えて導き出した答え(=考察)には愛着が湧くため、コンテンツは単なる流行を超え、消費されずに、記憶に深く刻まれるのだと思います。

2. 複数作品で連動した「世界観」の構築

第2章では、複数作品でひとつのテーマを取り上げている例をご紹介します。

記憶に残るコンテンツにするためのもうひとつの秘訣として、「複数作品で連動したテーマを取り扱う」というものがあります。単発で完結する考察ではなく、長期的な「世界観」と壮大な「物語」を構築するということです。

① 繰り返されるモチーフ
例えば、あるグループのMVシリーズでは、「扉」がモチーフとして何度も登場します。

数年前のMVでは閉まっていた扉が、物語が進んだ後の新曲でついに開かれる、といった演出は「成長」のメタファーになっています。このMVでは、一貫した物語をつなぐモチーフとして扉が使われているのです。

② 数字の暗号
背景の時計が指す時刻や、車のナンバープレートに刻まれた数字。これらが、例えばデビュー日や過去の重要な事件のことを指していると気付いた瞬間、ファンは強烈なアハ体験を得られます。

このように、ひとつのMVで回収しきれない壮大な伏線回収が、グループへの関心度を高めたり、強く記憶に残ったりするのです。

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Z世代プランナーが研究・分析!「韓国トレンド研究室」
佐々木日菜(kakeru プランナー/イラストレーター)

大学時代、フリーのイラストレーターとして活動。過去に制作した展示は、「どっちかといえばこっち展」「いい人すぎるよ展」「やだなー展」「みんなどんな感じ?展」「いい人すぎるよ美術館&切ないすぎるよ博物館」「うれしいすぎるよ展&そういうことじゃないんだよ展」など。展示ではイラストも担当している。著書に「いい人すぎるよ図鑑」。

佐々木日菜(kakeru プランナー/イラストレーター)

大学時代、フリーのイラストレーターとして活動。過去に制作した展示は、「どっちかといえばこっち展」「いい人すぎるよ展」「やだなー展」「みんなどんな感じ?展」「いい人すぎるよ美術館&切ないすぎるよ博物館」「うれしいすぎるよ展&そういうことじゃないんだよ展」など。展示ではイラストも担当している。著書に「いい人すぎるよ図鑑」。

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