『箱の中の羊』が教える、想像力の余白とブランドとの関係

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東 紗友美氏

クリエーティブディレクター/コピーライター。

映画ソムリエ。元広告代理店勤務。雑誌やウェブでの映画連載をはじめ、映画番組のナビゲーター、舞台挨拶や映画監督との対談イベントなどで映画イベントのMCとしても活躍中。劇場用パンフレットでは作品評も多数寄稿。また、映画ロケ地や映画にまつわるスポットを紹介する連載も執筆中。

■『箱の中の羊』あらすじ
是枝裕和監督の最新オリジナル脚本作。幼い息子を亡くした建築家の音々(綾瀬はるか)と工務店社長の健介(千鳥・大悟)は、息子の姿形を再現した生成AI搭載のヒューマノイドを家族に迎える。我が子として愛そうとする妻と、戸惑いながらも受け入れようとする夫。だがAIとして成長する彼との生活の中で、夫婦は息子の死への想いを露わにしていく。人間とテクノロジーの葛藤を描く、少し先の未来の家族の物語。
Ⓒ2026フジテレビジョン・ギャガ・東宝・AOI Pro.

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本記事は、月刊『販促会議』連載「シネマティック・マーケティング」7月号の転載です。

私たちは自社の商品やサービスを展開する際、常に「正解」と「効率」を求めている。顧客の悩みを見つけ出し、データやAIを駆使して、最速でそれを「解決」する。しかし、すべてを型にはめ、最短距離で答えを出そうとするあまり、私たちは顧客との関係性において大切な “主観” や “想像力” を置き去りにしていないだろうか。

映画『箱の中の羊』(5月29日公開)は、そんな「AIの進化による正解」と「人間の感情」の境界線を描き出す、極めて示唆に富んだ作品だ。

本作は、『万引き家族』などで世界中を魅了してきた是枝裕和監督の最新オリジナル脚本作。主演に綾瀬はるかと千鳥の大悟を迎え、本年度のカンヌ国際映画祭にも出品された屈指の話題作である。

舞台は少し先の未来。幼い息子を亡くした夫婦が、息子の姿形と記憶をAIで再現した「ヒューマノイド」を家族として迎え入れるところから物語は始まる。

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テクノロジーと人間の内面の衝突

是枝監督は本作の企画の出発点について、現実世界で「死者を蘇らせるAIビジネス」が実際に広がりつつあることに触れ、こう語っている。

「テクノロジーの進化と人間の内面的なものが衝突することに興味を持ちました。想像以上のスピードでテクノロジーが進化しているので、思ったよりも早くそういう事態が到来するなと感じました」(是枝氏)。

 これは決して映画の中だけのSFではない。私たちの販促やマーケティングの現場でも今まさに、AIによるテクノロジーと、顧客の情緒(人間の内面)の衝突が起き始めているのではないだろうか。

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