「社会への順応は後でできる」 『左ききのエレン』原作者が母校で語った、学生時代に育てるべきエゴ

武蔵野美術大学は6月11日、鷹の台キャンパス(東京・小平)で課外講座「“あの日の自分”へ、いま伝えたいこと―『左ききのエレン』原作者・かっぴー凱旋―」を開催した。漫画「左ききのエレン」の原作者で、同大学視覚伝達デザイン学科出身のかっぴー氏を迎え、テレビアニメ第1話の上映会とスペシャルトークショーを実施。電通のアートディレクター・花木大樹氏、CMプランナー/コピーライターの澤田桃子氏も登壇し、広告、漫画、アニメ、デザインを志す学生に向けて、創作とキャリアについて語った。

写真 武蔵野美術大学での課外講座の様子

原作者・主人公の母校・ムサビへ凱旋

「左ききのエレン」は、何者かになることを夢見るデザイナーの朝倉光一と、圧倒的な才能を持つアーティストの山岸エレンを軸に、クリエイターたちの葛藤や成長を描く作品。ドラマ化や舞台化もされ、現在はテレビアニメとして展開されている。主人公・光一が武蔵野美術大学出身という設定もあり、今回のイベントは、原作者が母校に戻る“凱旋”の場となった。

冒頭、かっぴー氏は久々に訪れた母校について「トイレに入った瞬間に、あ、ムサビだと思った」と笑いを誘った。学生時代は学生団体の活動に力を入れ、キャンパスに常にいるタイプではなかったという。一方で、視覚伝達デザイン学科の「レシピ」という課題を振り返り、「めちゃくちゃ面白い課題だった」としながらも、「考えすぎて、すごく大きな作品を作って滑った」と話した。

広告業界の第一線で活躍するクリエイターの仕事とは

広告業界を舞台にした同作にちなみ、トークでは登壇者それぞれの広告の仕事にも話が及んだ。花木氏は、金沢美術工芸大学視覚デザイン専攻を卒業後、2018年に電通へ入社。消費財の広告に加え、漫画やアニメ、アーティストなど、コンテンツ自体のプロモーションにも関わる機会が多いという。

花木氏は、漫画の新刊発売プロモーションを例に、広告そのものが一つのストーリーとして広がっていく面白さを語った。作品の登場人物をもとに、広告の中でオリジナルの物語を作り、それがファンの二次創作や拡散につながった経験があるという。「1カ所に出しただけで、ファンの方が広めてくださった。広告自体がひとり歩きしていく感覚が面白かった」と振り返った。

写真 武蔵野美術大学での課外講座の様子

澤田氏は青山学院大学法学部を卒業後、2018年に電通へ入社。CMプランニング、コピーライティング、統合プロモーションを業務領域とし、化粧品とIPのコラボやエンタメ企業のキャラクター開発などを手がけてきた。自身がアイドルや漫画、アニメ、ゲームなどのコンテンツ好きであることもあり、ファン心理に寄り添った企画を得意としている。

澤田氏は、近年の広告の仕事について「CMだけ、コピーだけという仕事は減ってきている」と話す。映画のような企画をつくったり、キャラクターやタレントプロデュースに関わったりと、広告の枠を超える仕事が増えているという。「人が動くのが直に見える仕事が面白い。SNSで反応が返ってくることは、表現をつくる仕事として大きなモチベーションになる」と語った。

写真 武蔵野美術大学での課外講座の様子

かっぴー氏も、広告会社時代の経験を明かした。当時は百貨店やスーパー、量販店などの流通領域を担当し、チラシやカタログのチェック、催事の制作物などに関わっていたという。その後、デジタル領域で低予算のYouTube動画をつくる仕事に携わり、「予算はないけどバズらせてくれ、というアイデア一本勝負の案件が一番楽しかった」と振り返った。奈良で鹿を撮影した動画が広がった経験もあり、限られた条件の中で数多くのアイデアを出す訓練が、後の漫画制作にもつながったと見られる。

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