新潟のワイナリー発、原田マハに続き吉本ばななの書き下ろし小説を限定販売

新潟市でワイナリーを運営するカーブドッチ。作家がカーブドッチに滞在してこの地を舞台にした物語を執筆するプロジェクト「ライターズ・イン・レジデンス」の第二弾が4月に発売された。今回執筆を担当したのは吉本ばななさん。施設内限定で販売される異色の書き下ろし小説の装丁はどのように生まれたのか。
(本記事は『ブレーン』2026年8月号からの転載記事です)

新潟市でワイナリーを運営するカーブドッチは4月、吉本ばななさんの書き下ろし小説『砂山』の出版・販売を開始した。通常の出版流通ではなく、同社の施設内限定で土産物として販売している。外箱付きで、本体は文庫本サイズだが厚紙綴じのハードカバー。全63ページで、価格は1760円(税込)。

同社はコロナ禍を機に書店事業を開始した折に、選書を担当したブックディレクターの幅允孝さんとプロジェクト「ライターズ・イン・レジデンス」を立ち上げた。作家がカーブドッチに滞在してこの地を舞台にした物語を執筆する企画で、「空間が作品を生み、作品が空間の価値を育てる」という創業者・掛川千恵子さんの構想から生まれている。

「ライターズ・イン・レジデンス」では、各作品の物語の世界観に合わせてデザインや仕様を変更している。2023年に第一弾として原田マハさんの短編集『旅をあきらめるにはまだ早い友への手紙』を発売した際には、『手紙』がテーマであったことから薄茶色の封筒を模したデザインとした。今回出版された書籍はこれに続く第二弾にあたる。

第一弾に続いて、デザインを担当したのは本庄浩剛さんだ。今作は両親との死別という共通点を持つ2人の青年が主人公で、砂地のワイナリーが舞台。これはカーブドッチが砂地でぶどうを育てていることに由来する。吉本さんが2025年4月と12月に2日間ずつ滞在して執筆した。装丁で表現したのは、登場人物が抱えているもやもやとした心情だ。

写真 本 表

写真 本 裏側

「登場する青年2人の感情は、(彫刻家の)ジャン・アルプの作品のような形をしているのでは?という幅さんの着想をもとに、不定形でもこもこした『穴』を外箱の両面に空け、本体に描かれた風景がその穴を満たすという仕組みを考えました」と本庄さんは説明する。外箱には十分な厚みと質感を感じられる生成りの厚紙を、書籍本体には上製本を採用することで正統派の印象を持たせている。

写真 本 開き

本体の表紙には薄桃色と、タイトルの『砂山』に合わせ砂のような黄色を選んだ。2色の境目の線は、ワイナリーから見える角田山の形を模している。「カーブドッチでの限定販売という特性上、本の購入者は必然的に主人公と同じ風景を眺めることになります。その連続性を感覚的に感じ取れるようなデザインを目指しました」。

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