コンセプトさえあれば、予算も委員会も怖くない——かっぴー氏が語る「当たり前のコトを全部やる」の真意

2026年6月に最終回を迎えたテレビアニメ『左ききのエレン』本作のアニメ化においてユニークだったのが、原作者・かっぴー氏自身が電通を幹事とする「製作委員会」に出資者として参画するという座組みだ。「目黒にある広告代理店」や出版社、アニメ事業会社を渡り歩き、製作委員会の内情を知るジャーナリスト・まつもとあつし氏の目にも、独自の試みのように映ったという。権利関係の複雑化やクリエイティブの衝突など、現場のリアルなリスクを知るからこそ引き出せた、かっぴー氏の「コンセプトへの執念」とは。予算や組織の壁を越えて「当たり前のコトを全部やる」に至った、広告代理店時代の原体験とヒットの裏側に迫る(以下寄稿)。

テレビアニメ『左ききのエレン』──広告代理店に勤めるデザイナーと天才的な画家の歩みを描いたこのアニメ化にあたって原作者自身が、電通を幹事とする製作委員会に出資者として加わっている。

かっぴー氏にその理由を聞くと、意外な言葉が返ってきた。そこに緻密な戦略はなかった、というのだ。あったのは一貫して「コンセプト」へのこだわりだった。コンセプトを手放さない限り、手段は何でもいい——その一貫した姿勢が、この異例の座組みを成立させた。

特別なことをしている感覚はなかった——原作者が委員会に出資した背景

テレビアニメ『左ききのエレン』の製作委員会には、原作者・かっぴー氏が代表を務める株式会社なつやすみが名を連ねている。電通を幹事に、ギャガ、テレビ東京、VAP、Production I.G、NADA JAPAN、丸井、が並ぶ座組みの中に、原作者自身が出資者として加わっているのだ。

アニメ業界では通常、製作委員会への参加は出版社や放送局、広告代理店といった企業が主体となる。原作者が個人の法人格で出資する形は珍しく、版元や幹事会社が難色を示すことも少なくない。それは権利関係の複雑化を避けたいという事情だけではない。原作者が委員会に入ることで、クリエイティブへの働きかけが強まることを懸念する声もある。商業的な判断とクリエイターの意向が衝突したとき、意思決定が滞るリスクを業界は経験的に知っているのだ。

かっぴー氏に出資の理由を問うと、少し間を置いてからこう答えた。

「特別なことだとは思っていなかったんです。ビジネスとして考えれば、自分の作品に投資するというのはそういうことだと思っていて」

自分が育てた作品の行方に責任を持つ。そのための手段として、出資という形を選んだにすぎない——かっぴー氏の口調は、終始穏やかで淡々としていた。

委員会には月に一度程度参加したが、基本的にかっぴー氏は意思決定に口を挟まなかった。それがかっぴー氏の基本的なスタンスだった。

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